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ボツリヌストキシン(ボトックス)っていったい何?しわを防ぐ仕組みって?

2018.05.07

ボツリヌストキシン(ボトックス)っていったい何?しわを防ぐ仕組みって?


顔の「しわ」や「えら」といった悩みを解消する美容整形の施術に「ボツリヌストキシン(ボトックス)注入」というものがあります。同じく美容整形に用いられる「シリコン」や「ヒアルロン酸」などと違い、どのようなものなのかイメージしづらいかもしれませんね。今回は「ボツリヌストキシン」について解説します。

記事監修



堀内和一朗 先生


皮膚科医、抗加齢専門医、国際レーザー専門医、精神科医。

東京医科歯科大学医学部卒業。小張総合病院皮膚科医長、総合クリニックドクターランド船橋皮膚科部長を経て、現在は関東の精神科病院勤務。人間総合科学大学非常勤講師。

医師+(いしぷらす)所属。

■ボツリヌストキシン(ボトックス)とは?

一般的には「ボトックス」「ボトックス注入」「ボツリヌストキシン注入」などと呼ばれる施術です。「ボトックス」「ボトックスビスタ」はアメリカ『アラガン社』が商標権を持つ商品名で、これらは「ボツリヌストキシン製剤」の一種になります。ボツリヌストキシン製剤は、食中毒の原因菌のひとつ「ボツリヌス菌」から抽出した成分から生成された薬品です。主に美容領域では、「ボトックスビスタ」が用いられます。


ボツリヌストキシン製剤には、筋肉の働きを抑える効果があります。これを眉間や目尻など、しわが気になる部分に注射(以下「ボトックス注射」とします)すると、その部分の筋肉には力が入りにくくなり、しわができにくくなるというわけです。


顔にできるしわは「表情筋」という筋肉に力が入ることでできます。この状態が癖になると、深いしわとなって刻まれてしまうのです。ボトックス注射は、このような状態を防ぎ、将来的にしわができるのを抑えます。

■「ボトックス注射」が使われる部位

美容整形では、以下のような部位・症状の施術に「ボトックス注射」を使います。


●顔のしわ

眉間、額、目尻、鼻根部、唇、顎などのしわの改善にボトックス注射を使用します。


●ガミースマイル

「ガミースマイル」とは、笑うと歯茎が出てしまう状態のことです。ガミースマイルの原因の一つは、笑ったときに上唇が上がり過ぎてしまうことです。このような場合、ボトックス注射で上唇の動きを抑制すればガミースマイルにならずに済みます。


●えら

「えら」が張る原因は主にふたつあります。ひとつは「咬筋(こうきん)」という筋肉が発達している場合で、このタイプのえらはボトックス注射での改善が期待できます。


もうひとつは骨格によるもので、この場合はボトックス注射をしてもあまり効果が得られません。改善するにはえらの骨を削る手術が必要になります。

■美容以外で使われるボトックス注射

ボトックス注射の本来の効果は「筋肉の働きを抑える」ことで、美容目的での使用が全てではありません。ボツリヌストキシン製剤は以下のような症状の改善にも使われています。


●多汗症

脇、手、足、額などにたくさん汗をかく人がいらっしゃいます。このような多汗症の治療にもボトックス注射が有効です。ボトックス注射には、筋肉の働きだけではなく、汗腺の働きを抑える効果もあります。成分がアポクリン汗腺にも働きかけ、気になる臭いを抑えることもできます。


●肩こり

肩こりの解消には入浴やマッサージなども効果的ですが、美容整形などでボトックス注射による治療をすることもあります。肩こりの原因は、肩の筋肉が緊張して固まってしまうこと。筋肉の緊張を解き余計な力が入るのを抑えることで、肩こりを解消します。


●花粉症

意外かもしれませんが、ボツリヌストキシン製剤は花粉症の治療にも使われています。ボツリヌストキシン製剤によって鼻粘膜の神経の働きを弱めると、鼻水の分泌も抑えられます。ただし、花粉症の治療の場合には注射ではなく鼻腔(びくう)にたらす点鼻薬を使うのが一般的です。


●顎関節症・歯ぎしり

顎関節症や歯ぎしりの場合、咬筋にボトックス注射をします。咬筋の働きを抑制することでこれらの症状が改善します。


●痙縮(けいしゅく)

脳卒中などの後遺症として起きる運動障害のひとつ「痙縮」の治療として、ボトックス注射が使われることがあります。これは筋肉が緊張して手足が動きにくくなったり、勝手に動いたりしてしまう症状です。



ボトックス注射は、その原理を利用して、一見美容とは関係なさそうな症状の治療にも使われています。ボツリヌス菌は毒性が強く恐ろしい細菌ですが、それを治療に活用する人間の知恵には驚きですね。


(藤野晶@dcp)