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水の飲みすぎは危険?「水中毒」っていったい何?

2018.05.10

水の飲みすぎは危険?「水中毒」っていったい何?


2007年に、アメリカで女性が水の飲み過ぎで死亡する事故が起こりました。このとき、女性は約8リットルもの水を飲んでいたそうですが、こうした水の飲み過ぎによって体に異常を来すことを「水中毒(心因性多飲症、水分過剰状態)」といいます。では、なぜ特に有害な物質が入っていないはずの水で中毒になってしまうのか、ご存じでしょうか?

記事監修


前山美千代 先生


専門は一般内科、漢方医学科。大阪医科大学医学部医学科卒業、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科在籍、みらい病院(一般内科・漢方医学科)勤務。認定内科医・日本抗加齢医学会専門医・日本医師会認定産業医として、気軽に実践できて、健康と美容に役立つ情報を発信しています。

女医+(じょいぷらす)所属。


▼みらい病院

http://eijukai.jp/

■水の飲みすぎで体調を崩すのはなぜ?

水を飲み過ぎると体調に異常を来すのは「体液が薄まり過ぎるから」です。


人間の体は約60%が血液やリンパ液といった体液で構成されています。たとえば体重が50kgの人なら、約30kgが体液ということになります。体液には、私たちの体を正常に動かすために必要な成分が含まれており、なかでも重要なのがナトリウム(塩)です。


ナトリウムは体液の量や水分の浸透圧を調整するほか、神経細胞が信号を送る際にも必要なものです。しかし体内のナトリウムが不足すると、体液が正常に循環しなくなったり、筋肉がけいれんして体が動かせなくなったりします。


重度の症状になると、意識障害や呼吸困難といった、命に関わるようなことにもつながります。こうしたナトリウム濃度の低下によって起こる症状のことを「低ナトリウム血症」といいます。


普通に生活している限りでは、ナトリウムが不足することはほとんどありません。しかし水をあまりにも大量に摂取すると、体が入ってくる水を尿として処理できなくなり、次第に体液中のナトリウムが薄まります。そうすると、低ナトリウム血症を発症し、最悪死に至る恐れがあるのです。

■水はどのくらい飲むと危険なの?

血液中のナトリウム濃度は、1リットル当たり135~148mEq※が基準値といわれています。これより高ければ高ナトリウム、低ければ低ナトリウムとなります。


血中ナトリウム濃度が基準値以上・以下になると、次のような症状が起こります。

  • 軽症(120mEq/L以上)

    …無気力、軽い疲労感、食欲不振や頭痛

  • 重症(120mEq/L以下)

    …嘔吐、強い食欲不振や頭痛、精神症状や意識障害など

110mEq/L以下になると特に危険な症状が出ます。こうした血中ナトリウム濃度は、血液検査をすることで分かります。


ただ、どのくらい水を飲めば低ナトリウム血症になるのかは、個人差もあるため一概に「何リットル」とはいえません。ただ、いずれにしても「過剰に飲むこと」だけは避けないといけません。


厚生労働省の「『健康のため水を飲もう』推進運動」によると、成人が一日に必要な水分量は2.5リットル。尿や便で1.6リットル、汗や呼気に含まれる水分として0.9リットルが失われます。必要な2.5リットルのうち、1.3リットルは食事から取ったり、体内で作られるもの。つまり残りの1.2リットルを、最低でも補う必要があるのです。


ですので、一日の必要量である2.5リットルを上回らないようにすれば過剰に摂取することはありませんし、1.2リットル以上飲めば、スポーツなどで過剰に汗をかかない限りは、不足することはないと考えられます。



通常の生活を送る上では水中毒になる可能性は低いでしょう。しかし、死亡例のような万が一のケースを避けるためにも、多量飲水の習慣が危険になりうることや、水中毒の知識を入れておくといいでしょう。


※mEqとは、Eqの1/1000。Eqは、電解質の溶液内のイオンの電荷数を示す単位。mEq/Lは、溶液1L(リットル)中のミリグラム当量の意味になります。


⇒参考記事:

『厚生労働省』「健康のため水を飲もう推進運動」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html

(中田ボンベ@dcp)