検索
「睡眠の質」ってそもそも何? 質を上げる方法とは?

2018.05.09

「睡眠の質」ってそもそも何? 質を上げる方法とは?


「睡眠の質を上げよう」「睡眠の量よりも質が大事」といった言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。ですが、そもそも「睡眠の質」とは何なのでしょうか? どうすれば「高める」ことができる? 今回は『筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構』(略称「IIIS」)の機構長である柳沢正史博士に「睡眠の質」について伺いました。

取材協力・監修


柳沢正史 博士


『筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構』機構長。

1960年東京生まれ。筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了。31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授とハワードヒューズ医学研究所研究員を24年にわたって併任。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラムに採択されたことを受けて、筑波大学に研究室を開設。2012年より文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム『国際統合睡眠医科学研究機構』の機構長。1998年、その欠乏がナルコレプシーの原因となる脳内物質「オレキシン」を発見。2017年度の朝日賞を受賞。

柳沢博士は、副機構長である櫻井武博士と共に、覚醒を維持する脳内物質「オレキシン」を世界で初めて発見するなど、睡眠研究における第一人者です。

■睡眠の「質」が「量」をカバーすることはない!

――よく「睡眠の質が大事」「睡眠の量よりも質」なんていわれますが、そもそも「睡眠の質」とはどのような定義なのでしょうか?


柳沢博士 まず、睡眠の質が量を代替するという考え方が間違っています。睡眠の質が睡眠の量をカバーすることはありません。


「短い時間でよく眠る方法はない」


のです。人間には必要な睡眠の量というのがあらかじめ決まっています。個々人で若干の差異はあるのですが、成人の場合、99%の人は「7±1時間」、つまり「6-8時間」が必要な睡眠量と考えて間違いありません。


――「質」というと、つい「量」と対比して考えてしまいますが?


柳沢博士 質が良い睡眠とは、自分に必要な睡眠量も十分に取れていることと考えるべきですね。


繰り返しになりますが、ヒトの睡眠は「質」で「量」をカバーできるものではありません。「十分な睡眠の量」が取れていることが「良質な睡眠」の前提であると考えてください

■「睡眠の質」を向上するには?

――「睡眠の質」を上げる方法はあるのでしょうか?


柳沢博士 十分な睡眠量を確保した上で、睡眠の質を上げるためには以下の3つのことを守るといいですね。

1.寝室を暗くする

2.寝室を静かにする

3.寝室を適温にする

――やはり暗くするのは基本的なことですか?


柳沢博士 ヒトは昼行性の動物ですから、暗くなると眠くなるようにできています。ですから寝室が明るいのは睡眠には絶対良くないです。真っ暗なのは不安という人もいらっしゃいますが、その場合でも「フットライト」などにして薄暗くしましょう。


――音についてですが、テレビをつけたままにして眠るという人も多いですね。


柳沢博士 テレビ・ラジオのつけっ放しというのは最悪で、聴覚は眠っている間にも働いています。そのため目覚まし時計で目が覚めるわけですね。


人間の聴覚は人の声には非常に敏感です。人の声には覚醒作用があります。ですから、人の声がしている環境では眠りにくいですし、深く眠れません。


たとえば医療の現場では、ここ十数年ぐらいで「ICU(集中治療室)に入った患者さんの眠りの質が悪い」という事実が注目されています。ICUに入るのは重篤な疾患の患者さんですから、それも当然と思われるかもしれませんが、それを置いておいても眠りの質が悪いのです。


ICUは夜でも明かりがついていますし、また多くの医療スタッフが部屋の中に出入りし、話すなどして聴覚を刺激するためではないかと考えられます。ですから今は、ICUも「夜は暗くしましょう」「静かにしましょう」というのが主流になっています。


――3番目は温度ですが?


柳沢博士 日本にはなぜか「エアコンをつけっ放しにして眠ると体に悪い」という都市伝説がありますが、これには科学的根拠がありません。適温のほうがいいに決まっています。


ですから、私のおすすめは「夏なら26度など、その人にとっての適温に設定して、一晩中エアコンをつけて眠ること」です。風は直接ベッドに当たらないようにしてください。


最近のエアコンは優秀で、室内の温度が設定温度に近いとほとんどオフ状態で電気を食いません。電気代もそれほど高額にはならないでしょうから、睡眠の質を上げることを考えれば、やはりエアコンを使うのがいいですね。冬も同様に眠りやすい快適な温度に設定して、エアコンを使うのが良いでしょう。


睡眠の質を上げる確実な方法というのは、実はこの3点ぐらいしかないのです。


――ありがとうございました。



「睡眠の質が良いこと」には、「その人にとって必要な睡眠の量が取れていること」が含まれているとのこと。ですから、「睡眠量が少なくても質でカバーできる」という考え方は間違っているわけです。皆さんも自分に必要な睡眠量を確保できるように日々の生活リズムを整えてください。その上で、柳沢博士から指摘のあった3点について留意するようにしましょう。

■「睡眠の謎」に最新の科学で迫る

今回お話を伺った柳沢博士によれば、睡眠については「分からないことだらけ」だそうです。「人間はなぜ眠るのか?」という根本的な問いに対する答えはまだ見つかっていません。


アンケート調査で睡眠時間を聞いてみた調査はあるのですが、このデータはあくまでも自己申告。


「本当にその睡眠時間だったのか」を調べてみると、「6時間」と回答していたのに実は「4時間だった」「7時間だった」といったケースが散見されるのです。つまり、人間の睡眠についてきちんと調べた「基本的な客観データ」もまだないともいえます。


柳沢博士の研究チームでは、この基本的なデータを収集するため「1,000人」に対しての大規模な「睡眠調査」を実施しようとしています。この調査は、「より正確に、より科学的に私たちの睡眠の実態を明らかにしよう」とする、世界でも類例のない意欲的なものです。


また、その調査の結果、いわゆる「ショートスリーパー」や「ロングスリーパー」といわれる人が見つかったら、その人たちに対する遺伝子スクリーニングも視野に置いています。遺伝子に何か特徴があれば、「人間の睡眠の長短がなぜ起こるのか」といった根本的な秘密の一部が明らかにできるかもしれません。


大規模調査なこともあって、現状では残念ながら予算が足りていません。クラウドファンディングで皆さんからのご支援を募集していますので、ぜひ以下のページからご協力をお願いいたします!

『Readyfor』「人はなぜ眠る?最適な睡眠とは?「睡眠の謎」に最新の科学で迫る」

(高橋モータース@dcp)