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悪夢を見る原因は部屋にある!? 今すぐ変えるべき睡眠環境とは

2018.05.14

悪夢を見る原因は部屋にある!? 今すぐ変えるべき睡眠環境とは


悪夢にうなされて飛び起きてしまった……なんて経験、誰もが一度はあるのでは?


夢の中に、現実で悩んでいることがそのまま現れたり、はたまた身に覚えのない怖い映像だったり。悪夢と一口に言ってもいろいろなパターンがありますよね。


なぜ人は悪夢を見てしまうのでしょうか。江戸川大学 社会学部人間心理学科教授の福田 一彦先生にお話を伺いました。

取材協力・監修



福田一彦 先生


江戸川大学 社会学部人間心理学科教授。日本睡眠学会理事。精神生理学、時間生物学、睡眠学などの実験心理学が専門。著書に「『金縛り』の謎を解く 夢魔・幽体離脱・宇宙人による誘拐」(PHPサイエンス・ワールド新書)など。

■人が見る夢の大半は悪夢!?

――今回は悪夢をテーマにお話を伺いたいのですが、まずは夢を見るメカニズムから教えてください。


福田先生

最近だと、テレビ番組などでも睡眠の特集が組まれることが多いので、「レム睡眠」「ノンレム睡眠」という言葉は聞いたことがあるかと思います。レム睡眠とは、睡眠中なのに眼が活発に動き、脳波は浅い睡眠の状態を示すのに、脳からの指令によって、筋肉の緊張がほぼゼロになる特異な睡眠状態で、1953年にアメリカの学者によって発見されました。それ以外をノンレム睡眠と呼び、眠りが浅い状態から深い状態まで、4つのステージに区分されます。


――レム睡眠とノンレム睡眠は眠っている間に交互に現れるもので、90分サイクルだという話を聞いたことがあります。


福田先生

よくそのように言われますが、実際の周期はそれほど厳密ではなく、1時間の場合もあれば2時間の場合もあり、平均すると90分というだけです。睡眠時間によりますが、一晩に3回〜5回ほどレム睡眠が繰り返されます。ほとんどの場合、このレム睡眠の状態の時に夢を見ます。夢は誰しも見るものですが、実は良い夢よりも悪い夢を見ることのほうが多いんですよ。



――えっそうなんですか!? 誰でもそうなのでしょうか?


福田先生

はい。夢の中で体験した感情に関する研究で、最も現れる頻度が多かった感情が「恐怖」であることがわかっています。知らない人に追いかけられて恐怖する夢を見たという人がよくいるのですが、夢の中ではこういった怖い思いをするのが普通なんですよ。レム睡眠中には恐怖や不安、怒りなどの負の感情に関わってくる脳内の場所が活性化します。つまり夢を見る頻度が多ければ多いほど、悪夢を見る可能性も高くなると考えられます。


――追いかけられる夢、確かに見たことがあります……。私は夢をよく見るほうなのですが、ほかにも大事な仕事の予定に遅刻したり、急に無一文になってしまったりといった悪夢を見ました。現実味を帯びていることもあれば、ヘンテコなありえない状況の夢もありますよね。どうしてこんな夢を見るのでしょうか?


福田先生

それは、レム睡眠中の脳の働きに関係があります。レム睡眠時には、レム睡眠の中枢がある下位の脳から、記憶が蓄えられている上位の脳へランダムに刺激が送られます。ランダムなので、どんな記憶が引き出されるかはわからず、基本的に夢の内容をコントロールすることはできません。全く関係のない記憶が結びついて、わけのわからないストーリーが組み立てられることも多いのです。しかし、何か現実でショッキングなことがあったり、不安な心理状態が続いていたりすると、それが夢に現れやすくなることもあります。


また、別の例になりますが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の方は、トラウマになった出来事が、ほぼそのままの形で悪夢として現れ、悩まされるケースが多いです。いわゆるフラッシュバック現象が夢に反映されるということで、レム、ノンレム関係なく悪夢を見るとも言われています。普通の人であれば夢を見るのはレム睡眠時なので、そこが大きな違いです。


■悪夢を見やすい人とそうでない人の違い

――レム睡眠がある限り、悪夢は誰しも見ているんですね。でも、悪夢を見たと認識して悩んでいる人は、そうでない人と何が違うのでしょうか?


福田先生

起きてから夢を覚えているかどうかです。就寝中、レム睡眠のタイミングで起きてしまうと夢を覚えていることが多いんです。夢は見ている最中に起きないと覚えていられないものなんですよ。悪夢に限らず、夢をよく覚えている人の中には、中途覚醒が多く、睡眠自体があまり健康的でない方も少なくありません。


――なるほど。悪夢に悩む人は、いいリズムの睡眠がとれていないということになりますね。


福田先生

そうです。なかには習慣として夢日記をつけている人もいるかもしれませんが、これはやめたほうがいいと思います。夢日記をつけるために夢を覚えていようとすると、だんだんレム睡眠の最中に起きられるクセがついてしまいます。夜はとにかく泥のように眠ることです。

■いい眠りのカギは部屋の照明にある!

――どうすれば、いい眠りを実践できるのでしょうか? 睡眠サイクルの整え方を知りたいです。


福田先生

睡眠を整えるというと、皆さん睡眠時間を確保しようとしますよね。そういう人に多い間違いがあります。たとえば、平日は仕事で朝早く、夜は遅くて睡眠時間が短い。代わりに休日にたっぷり眠るという人、少なくないですよね。いわゆる寝溜めというものですが、これは全く意味がありません。むしろ平日と休日の睡眠時間の差が大きければ大きいほど心身の調子を崩しやすくなります。


――忙しく働いていると就寝時間がまちまちになりがちなんですよね……。昼寝をするといいという情報も聞いたことがありますが、これはどうなんですか?


福田先生

基本的に大人が昼寝をするのはよくないと思います。特に長い昼寝をする習慣がある人は改めましょう。夜間の睡眠サイクルに影響を及ぼします。日本人は平均睡眠時間が短いとよく言われますが、毎晩7時間から7.5時間ほど、きちんと眠るのがいいです。差分は1時間程度に抑えてください。7時間を切ったあたりから体調を崩しやすいというデータがあり、日本や韓国、台湾など東アジアの国民の睡眠時間が特に短めなんです。



――やはり働きすぎが原因なのでしょうか?


福田先生

その面もあると思います。しかし、考えられる原因として挙げたいのは、リビングなど室内照明に白い蛍光灯を使っていることです。現代の日本の家庭はシーリングライトが付いていて、部屋全体を明るくしています。ところが欧米の家庭では、夜はオレンジ色の間接照明だけで部屋がすごく暗い場合が多い。日本では消費電力が低いという理由で、蛍光灯が多く普及していると思うのですが、夜に強い光を眼から取り入れると、脳内の生物時計に作用して夜更かしが助長されます。白い蛍光灯やLED照明にはブルーライトが含まれていて生物時計に強力な影響を与えるのです。蛍光灯でもLED照明でも構いませんが、ブルーライトが少ないオレンジ色の照明を使ってください。


――眠る前にパソコンやスマホを見続けるのはNGとは知っていましたが、部屋の照明も影響するとは盲点でした。今夜から間接照明に切り替えます……!


福田先生

眠る前の2時間をどういう環境で過ごすかが重要ですね。あとはお酒もよくないです。アルコールにはレム睡眠を抑制する働きがあります。レム睡眠には反跳現象というものがあり、抑制するとそのあとに反動がきて通常よりも時間が長くなってしまうのです。夢を極端に見やすい状況を作ってしまっていることになります。


――たしかに、お酒を飲んだ夜はよく夢を見る気がします。一方で、眠る前にはホットミルクや白湯を飲むという習慣がある人も多いですが、これは何かいい効果がありますか?


福田先生

いえ、正直睡眠自体には特に作用しないと思います。ただリラックスできる習慣という意味ではいいと思いますよ。眠くなる音楽CDや、眠りの質を上げる枕なども販売されていますが、それらも効果が期待できるとは証明されていません。しかし、本人が眠りやすい環境を作れるのであればよいかと思います。


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夢の大半が悪夢であるというのは驚きですね。ただし、悪夢など気にせず、とにかく生活を整えるのが大事だと福田先生は話してくれました。取材後、筆者もシーリングライトを使わずにオレンジ色の間接照明だけで過ごすようにしたところ、寝つきがよくなった気がします。もし悪夢をはじめとする睡眠に関する悩みがあったら、自分の生活を見直し、睡眠環境を改めてみてくださいね。


(取材・文:阿部綾奈 編集:ノオト)