目が覚めて起き上がろうとしたら、首にぴきっと痛みが走り、一日中違和感がとれない……。寝違えは、我慢できる程度の軽い痛みから、ときには日常生活に支障をきたすほどの激痛を伴うこともありますよね。
寝違えを繰り返してしまうのは、寝相が悪いせい? それとも、ほかに原因が? 竹谷内医院カイロプラクティックセンターの竹谷内康修先生にお話を伺いました。
取材協力・監修
竹谷内康修 先生
整形外科医・カイロプラクター。2000年3月に慈恵医大卒業後、福島県立医大整形外科学講座へ入局。福島県立医大附属病院等で3年間整形外科診療を行う。2003年にカイロプラクティックの発祥地の米国へ。ナショナル健康科学大学(イリノイ州シカゴ近郊)で3年間学び、Doctor of Chiropracticの称号を得る。2007年3月に当院を開設。これまでに腰痛、腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症、肩こり、首の痛みや頚椎症の著書を12冊出版。
▼竹谷内医院カイロプラクティックセンター
■寝違えは首周りで炎症が起きている
――今回は寝違えについてお話を伺いたいのですが、そもそも寝違えとは、首周りで何が起きている状態なのですか?
竹谷内先生
頚椎は7つの椎骨で形成されていて、その接続部分、つまり椎間関節あるいは椎間板のどこかに急性の炎症が起きていると考えられます。もしくは、首の筋肉に炎症が起きている可能性もありますね。
――寝違えてしまう原因はどういうことが多いのでしょうか? 寝相の悪さが関係しているのでしょうか?
竹谷内先生
寝相の悪さも多少は関係しますが、それよりはもともと首が固まっていて肩こりがベースにある人が寝違えやすいです。なぜなら首肩が凝りやすい人は、横になったとしても筋肉の緊張がとれにくいから。本来ストレスがない状態だと、首周りは柔軟なんですよ。だいたいどんな姿勢で寝ても、首を痛める心配が少ないのです。
しかし、首肩が緊張した状態で寝ていると、楽な姿勢が限られてしまいます。寝ている間に知らずしらずのうちに辛い位置になり、長時間にわたり首をいじめることになってしまうんですね。
――首が柔らかい人の方が曲がった体勢で寝てしまいそうなので、寝違えやすいのかと思っていました。緊張状態とは具体的にどんな状態なんでしょうか?
竹谷内先生
筋肉が収縮している状態です。当然、血行や血流も悪くなっています。この状態が続くと、さらに肩こりになるという悪循環につながってしまいます。
――緊張状態が続く原因や習慣はどんなものがありますか?
竹谷内先生
普段の姿勢が悪いとよくないですね。あとは、ストレスは身体的なものも、精神的なものも影響を与えます。強すぎるPCやスマートフォンの光、うるさい音、きつい匂い、寒さなども要因のひとつです。
■湿布を貼っておけば大丈夫?
――私自身、寝違えてしまっても自然治癒に頼るばかりなのですが、どのような治療をしてもらえるんですか?
竹谷内先生
一般的な病院なら、レントゲンを撮って痛み止めの薬を処方することがほとんどです。本来、頚椎は前に凸の弓なりのカーブを描きますが、頚椎の配列がまっすぐになっている状態のストレートネックと診断される人が増えていると思います。スマホの普及などが影響していますね。ストレートネックになったからといって、必ずしもすぐに痛みを伴うわけではありませんが、負担が大きいのでいつかは痛みになる可能性が高いです。
カイロプラクティックだと姿勢を矯正するなど、慢性的な緊張を取り除けるようにします。頸椎にかかる負担を減らすと炎症も早く静まるので。また、寝違えは頸椎に押しつぶすように力がかかっているので、その筋肉の緊張をできるだけゆるめていくような治療をしていきます。
――なるほど。ちなみに家でできる対処法はありますか?
竹谷内先生
なかなか自分で対処しにくいというのが正直なところなので、痛み止め薬を飲むか治療を受けてほしいですね。
――とりあえず湿布を貼る人が多いかと思うのですが、効果はありますか? また温めるのはどうでしょう。
竹谷内先生
湿布は消炎鎮痛薬なので痛みは緩和されると思います。温めに関しては、直接シャワーをかけたり、サウナに入ったりするのは身体に負担がかかるのでNGです。急性の強い痛みがあるときは、湯船につかるのも避けましょう。慢性の痛みの場合は、お風呂に入ってリラックスすることが大切です。
■日ごろから首回りをストレッチして予防を
――では、寝違えを予防するためにはどんなことを心がけるとよいでしょうか?
竹谷内先生
ストレスのマネジメントや疲労回復のために十分な睡眠を取ることは基本ですね。また、首周りのストレッチをこまめに行うことも大切です。机に肘をついて、顎をもって首の前側の筋肉を伸ばします。そのあとに、両手で後頭部をやさしく包み込み、頭の付け根や首の後ろ側を伸ばしましょう。前後ともにこまめに動かすのがポイントです。
――なるほど。とにかく首周りの緊張をとくことが大切なのですね。
竹谷内先生
寝違いを繰り返していると、腕に痛みやしびれが起きる頸椎症が起こることがあります。なかでも、加齢もあいまって強い痛みをともなう頚椎症性神経根症になる人が近年増えています。首の痛みは大きな病気のきっかけとなる可能性も否定できません。だからこそ、日ごろからのケアが大切なのです。
なんとなく軽視しがちな寝違え。原因は、寝ているときだけではなく日ごろの姿勢や生活習慣にあったようです。寝相や枕のせいにせず、まずは首肩の状態がよくないことを自覚しましょう。こまめなストレッチやストレス解消を心がけてみてくださいね。
(取材・文:関紋加 編集:ノオト)