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【第17回】彼女の「嫌い」なところ:親を説得できません

2018.05.13

【第17回】彼女の「嫌い」なところ:親を説得できません


わたしには夢があるのですが、親に話すと「ダメ」と言われてしまいます。友だちに話したときにも「現実的じゃない」と笑われてしまい、悔しかったです。親や友だちを説得するにはどうしたらいいのでしょうか?


親に話すとダメと言われた、友だちに話すと無理と言われた。こういう相談もよくもらうようになった。わたしは現在、会社に勤めずにフリーとしてライターをしているからか、よく「さえりさんは、どんな風にして親を説得しましたか?」と聞かれる。


わたしの話を先にすると、両親を事前に説得できたことなど一度もない。わたしの親は、慎重で堅実。私たち姉妹の話を真剣に聞いてくれる理解ある両親ではあるのだけれど、それでもわたしの大きな決断にいつでも二つ返事で「いいね」と答えてくれたわけではなかった。それもそのはず、わたしが話す夢は結構突拍子もなく、いつでもふわふわと曖昧だったから。


たとえばNYで暮らしながらお金を稼ぎたい(どうやってかはまだ決めていないけど)とか、就職せずに仕事をしたい(どうするのかは今考え中だけど)とか、転職したい(なにがしたいかはまだ決めていないけど)、独立したい(どんな仕事がくるかはまだわからないけど)という具合。どの夢も、決して生半可な気持ちで話したわけではなかった。直感で「なんだかできる気がする」と思っていたし、本気でやってみたいと思っていた。けれど、どうしても口から出てくる言葉は頭で思い描くよりもずっと頼りなく、両親はだいたいの場合、渋い顔をしていた。


大学生の頃、先輩に夢を話したときも「無理」と言われたことがある。社会人歴2年目の先輩と飲みに行ったとき、彼は2年前よりもずいぶんくたびれていて、少しやさぐれてもいた。そうして仕事の愚痴と大変さを語り、卒業を控えたわたしの夢に対してはこう言った。「いや、俺も思ってたよ、そういうの。でも、今ならわかる。そんなのみんなやりたいと思ってんだよ。でもみんなそう思いながらも、一生懸命働いてるわけ。わかる? 現実って厳しいんだよ」と。


あの頃は、仲のいい先輩なのにどうしてわたしの夢を応援してくれないのかとちょっと腹立たしく思った。同時に、帰り道はひどく落ち込み、不安になったのも覚えている。

仲のいい友だちに話したときも「そんなことできるの?」といぶかしがっていて、そのたびにひどく心細い気持ちになった。こんなにワクワクする話なのに、こんなにわたしが嬉しそうなのに、どうして「いいね! いいね!」と笑ってくれないの? どうして「さえりならできるよ」と言ってくれないの? と思った。


けれど、今になって振り返れば、周りがそういうのは無理もないなと思える。あれだけふわふわとした実態の見えない夢を語られたら、大事な人であればあるほど心配に思うのは、当然だろう。それに、本人たちが実際にそういう道を歩んでいなければ、軽々しく「できるよ」とは言えない。今まで自分が見てきた世界を基準にして、最大限のアドバイスをするにとどまるのも、仕方がないことではないか。


わたしは、あの頃、誰かに背中を押してほしかったのだと思う。

同意して共感してもらって、「できるよ、大丈夫だよ」と言ってもらいたかったのだと思う。そのために相談をしていた。そのくらい、自信がなかったとも言える。誰かの応援と後押しがなければ、前に進めないくらい内心は怖がっていたのだろう。


結局、その程度の出来事で心が折れ、いくつかの夢は一歩踏み出す前に諦めてしまった。でもそれは、悪いことではなかったと思う。その程度の夢だったのだ。進んでいたって、どこかでダメになっていただろう。

逆に言えば、実際に叶えられたいくつかの夢は、周りの言葉など気にならなかった。「そうだよね、難しいよね。でもやってみるわ」と笑って、ひとつひとつ前に進むうちに簡単に叶って。そうしていまは、昔描いた夢の最中にいる。現実というのは、親や友だちの前にあるものではなく自分で歩んでつくっていくものだと、今では思える。



さて、親や友だちをどうやって説得するか? だけれど、本当に納得してほしいのであれば計画をみっちり立てて、未来の見通しを事細かに話し、リスクやその対処法なども洗い出して、安心してもらえるようにするのが一番だと思う。わからないものは怖い。それは、あなただけでなく、周りの人だってそうだから。


でも、これまでのわたしのように「直感では確信していても、言葉にできない」と思うのであれば、事前に誰かを説得しようとするのを諦めたほうがいいと思う。


夢を叶えるにあたって、説得はそれほど必要なことなのだろうか? 心細く思うのはわかるけれど、変化の入り口はいつだって不安なものなのだ。そのくらいは引き受けてもらわなければ。

いずれ周りに納得してもらい、肯定してもらえるようになるには、結局のところ自分が前に進んでみるしかない。とても素朴で泥臭いやり方だけれど、前に進んで、実際に「できた」というところを見てもらうしかないのだ。


「ああやっぱり“覚悟”しなくちゃいけないのね」とか「周りの反対を押し切ってでも進まなきゃいけないのね」と、すこし凹んでしまう人がいるかもしれない。「わたしに足りないのは、“覚悟”だと思います」という声も聞こえてきそうだ。


でも、先に覚悟を決める必要もないし、自信を持つ必要もない。

反対を押し切って「うるせえ! わたしはわたしの夢があるんだ黙ってろ!」と言う必要も全くない。


親にも友だちにも、「ちょっと頑張ってみるから、見ていてくれない?」と言えばいい。やってみて、できなくてもいい。できるか・できないかなんていうのは、やってみた人にしかわからないことなのだし。


その夢がとても大事なものなら、立ち止まって悩まずに、進んでほしい。

周りばかり見ていても、現実は何も進まないよ。



(ライター/さえり 写真/インディ 編集/サカイエヒタ)

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