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急激な寒暖差が危険なのはどうして?ヒートショックが起こる理由

2018.05.16

急激な寒暖差が危険なのはどうして?ヒートショックが起こる理由


季節の変わり目は、一日の間での寒暖差が激しいこともあり、体調を崩す人が多くなります。このような急激な温度変化は体調不良の原因となりますが、特に負担が大きくなるのが「心臓」です。これはどのような仕組みによるのでしょうか。今回は「なぜ急激な温度変化が良くないのか」を解説します。

記事監修



田嶋美裕 先生


循環器内科医。東京大学医学部卒業、東京大学付属病院勤務。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などの循環器疾患のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病全般の治療に携わる。

女医+(じょいぷらす)所属。

■急激な温度変化は「ヒートショック」を起こす

「急激な温度変化は体に良くない」といいますが、これは急な温度変化によって血圧の変動が大きくなるためです。急激な血圧の変動は心臓や血管に大きな負担を掛けてしまいます。


たとえば、寒くなった日の入浴では体が急激な温度変化にさらされます。暖かい部屋の室温は20度以上になっていることもありますが、浴室、脱衣所、洗面所、トイレなどは10度以下に下がることもあるでしょう。場合によっては10度以上の温度変化が生じることも考えられます。入浴時の温度変化の流れは以下のようになります。

1.居間や自室など、暖かい部屋ですごす(体が温まっている)

2.気温の低い脱衣所に行き、服を脱ぐ(体が冷気にさらされる)

3.入浴によって温まる(急激に体が温められる)

4.脱衣所で服を着る(体が冷気にさらされる)

周囲の温度が下がると、体は熱を奪われないように血管を収縮させます。すると、血圧が上昇します。逆に温度が上がると血管は拡張し、血圧は下がります。短時間で血圧の変化が起こることは、心臓や血管に大きな負担を掛けるのです。


このように急激な温度変化によって体にダメージを受けることを「ヒートショック」といい、特に冬には入浴時などに亡くなる人が増えます。ヒートショックが起きたことによる死因は、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞などがあります。また、ヒートショックによる血圧低下が原因で浴槽内で意識を失い、溺れてしまうというのも死因のひとつです。


季節の変わり目にも温度変化が激しくなることがありますので、ヒートショックに陥る可能性がないとはいえません。十分に注意しましょう。

●ヒートショックを起こしやすい人

どんな人にとっても急激な温度変化は良くないのですが、特にヒートショックを起こしやすい人がいらっしゃいます。それは以下のような人です。

・高齢者

・血圧が高い人

・不整脈など、心臓の持病がある人

・糖尿病・脂質異常症の人

・太り気味の人

●ヒートショックの対策

12月~2月にかけての冬場や、気温が下がった日の入浴時やトイレなど、ヒートショックが起こりうる状況では、以下のような対策を取ると良いでしょう。


・脱衣所を暖める

一時的に暖房器具を使用したり、浴室でお湯のシャワーを出して脱衣所にその空気を入れたりするなど、脱衣所を暖めてから入浴しましょう。


・浴室で服を脱ぎ着する

寒い脱衣所で服を脱いだり着たりするのではなく、浴室で行うことで温度変化を緩やかにすることができます。


・お風呂の温度をぬるめにする

寒いときは浴槽に張るお湯の温度を高く設定したくなるものですが、これは急激な温度変化をもたらすため危険です。38-40度程度の、少しぬるいお湯に入るようにしましょう。


・入浴の順番を遅らせる

ヒートショックを起こしやすい人はなるべく家族の後に入るようにしましょう。ほかの人が入浴した後は脱衣所の温度も上がっており、温度変化が少なくなります。


・気温が低い時間帯の入浴を控える

深夜や早朝は気温が下がっており、脱衣所も寒くなります。可能であれば、このような時間帯の入浴は避けたほうが良いでしょう。


・食事直後、飲酒後の入浴を控える

食事直後や飲酒時には、血圧が下がりやすい状態となっています。ヒートショックを起こしやすい人は、食事直後、飲酒後の入浴を控えましょう。


・トイレでも暖房器具を使用する

トイレも比較的温度が低いことが多いのではないでしょうか。小型の暖房器具を使用して、一時的にでも温度を上げると良いでしょう。

■気温の変化にも注意

ヒートショックとは別に、俗に「気象病」と呼ばれる体調不良を起こす人もいらっしゃいます。1日の最高気温と最低気温の差が大きい日、最高気温が前日と大きく異なる日などにこのような体調不良が起こります。症状としては、頭痛、ぜんそく、胃腸の不良、目まいなどが挙げられます。


これは「自律神経」の乱れが原因で起こります。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、自分の意思とは関係なく働いています。自律神経は呼吸・血流・内臓の動きなどをコントロールしており、これが乱れることが体調不良につながるのです。


交感神経は体が活動しているときに優位に働き、脳や筋肉にたくさんの血液を送ります。そのため血圧が上がり、興奮状態になります。気温が低いときには交感神経が優位になり、体温が下がらないようにします。


副交感神経は睡眠時など、体を休めているときに優位に働きます。すると血圧が下がり、心拍数も低下して落ち着いた状態になります。気温が高いときは副交感神経が優位になり、血管が拡張して体の熱を放出します。こうして体温が上昇するのを抑えるのです。


急激な温度変化が起こると、自律神経がうまく対応できず活動に乱れが生じます。そのため、上記のような症状を起こすのです。

●自律神経の乱れを改善するには?

気象病の症状を起こさないようにするには、自律神経を整えることが大切です。そのための対策には以下のようなものがあります。


・規則正しい生活リズム

人間本来の生活リズムは、日中に活動し、夜は睡眠を取るというようにできています。規則正しい生活をすることで、自律神経も自然に整っていきます。


・栄養バランスの取れた食事

自律神経を整えるためには、毎日の食事にも気を配りましょう。特にビタミン類をしっかり取ることが大切です。


・質の高い睡眠

夜にしっかり眠ることで副交感神経が働き、自律神経が整っていきます。寝る直前までスマホやパソコンを使っていると興奮状態が続き、睡眠に悪影響を与えます。睡眠の質を高めるには、寝る2時間前までにスマホなどの使用をやめるのが良いとされています。


・適度な運動

体を動かすことで交感神経が働きます。日中に交感神経を優位にしておくと、夜は副交感神経が優位になりやすい状況になります。



急激な温度変化が体に与えるダメージは意外と大きく、命に関わることもあります。季節の変わり目は温度変化も大きくなりがちなので、「もう春だから」と油断しないように心掛けましょう。特に「ヒートショックを起こしやすい体質」に当てはまる人は、注意が必要です。


(藤野晶@dcp)