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心療内科医に聞く。だるい、おっくう、やる気なし。これって「五月病」?

2018.05.14

心療内科医に聞く。だるい、おっくう、やる気なし。これって「五月病」?


ゴールデンウィークが終わったころから、心身のだらだら感が抜けない、会社に行きたくない、人と会うのがおっくう、気分が落ち込むなどの不調が出る人が増えると言います。「五月(ごがつ)病」という言葉が頭をよぎりますが、心身医学専門医で心療内科医・野崎クリニック(大阪府豊中市)の野崎京子院長は、「5月を乗り切れなかった人が、6月の梅雨のころに症状が強くなる傾向があります。つらいと思ったら早めに対処しましょう」と話します。自分でできる予防法などについて聞いてみました。

取材協力・監修



野崎京子氏


心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院、住友病院などを経て、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える 人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス)。


野崎クリニック:

大阪府豊中市新千里南町2-6-12

http://www.myclinic.ne.jp/nozaki/pc/

■五月病は一時的にうつのような症状になること

はじめに野崎医師は、五月病についてこう説明をします。


「五月病とは医学的な病名ではなく、通称です。連休後に、気分が重くて前向きに考えられない、活動したくない、会社に行きたくない、頭痛や胃痛がひどい、よく眠れないなど、精神的ストレスが原因で体の不調も続き、一時的にうつの症状が出るような状態を五月病と呼んでいます」


五月病とは、4月に就職や入学をした新入社員や新大学生がなりやすい症状として知られていましたが、近ごろは年代を問わずに増えていると聞きます。


「若い人でなくても、春先に環境が大きく変化したなどで五月病を訴える大人の患者さんは多くいらっしゃいます。


春に転勤した、転職をした、引っ越しをした、人事異動があった、出世した、子どもが独立をしたなどで、新しい環境に対応しようと必死にがんばったものの、ゴールデンウィークの長い休みに入って糸が切れたようにプツリと緊張感が解けることがあるでしょう。それをきっかけに、疲れが噴き出したといったケースです。


そしてその環境になじめない、たとえば、異動先や引っ越し先が期待した状況ではない、人間関係に緊張がある、家族にトラブルがあるなどで、休みが終わっても精神的な疲労から回復しないと、焦りや不安感がつのって不調は悪化することがあります」と野崎医師。

■五月病は病気。気分や感情的なものではない

五月病は通称ということですが、医学的な説明はどうなるのでしょうか。野崎医師は次のように説明を続けます。


「ストレスの原因が明らかで精神的な不調が2週間以上続き、『自律神経失調症』や『不眠症』などがみられて出勤が難しいなどの場合は、『適応障害』や、症状によっては『うつ病』と診断されることがあるでしょう。医学的に、ストレスから離れると適応障害の不調が半年以上続くことはないと考えられていますが、それ以上長びく場合はうつ病の診断が多くなります」


だれしも、環境になじめない、また人間関係のトラブルがあれば、重い気分になることはあると思うのですが、不快な感情と五月病とは違うのでしょうか。


「だれもが感じる気分的、感情的な不快感と、五月病の症状は別のものです。五月病は病気です。不安感や気分の落ち込みがひどい、食欲が落ちて回復しない、眠れなかったり熟睡できなかったりといったつらい不調が続く場合は、早めに心療内科か精神科を受診してください。


こういった精神的な不調を、自分の考え方や性格だからと思い込んで放置する人は多いのですが、病気の場合、脳から出る神経伝達物質の作用による神経や感情の変化がもたらすと考えられます。病気だと自覚することで改善への道すじが見えることもあるでしょう。回復する手段は必ずあります」(野崎医師)


また、五月病の患者さんが増えるシーズンについて野崎医師は、

「適応障害やうつ病で受診する患者さんの数は、6月から7月にかけてが最も多いという調査報告があります。5月の連休明けからがまんを重ねた結果、6月の梅雨シーズンになって気候の影響もあり、自力での回復が難しくなったという状態です。悪化の一途をたどる前に受診しましょう」と警告をします。

■健全を保つ最重要要素は、「食事、睡眠、運動の習慣」

では早いうちに、自分でケアする方法はあるのでしょうか。野崎医師はこうアドバイスをします。


「目安として、うっとうしい気分でもいつもどおり出社して業務をこなしている、食事はしている、少し睡眠不足だけれど週末には寝られるといった状態なら大丈夫でしょう。夏ごろにはすっかり回復するケースも多いです。


精神的なストレスに対抗するには、基礎体力が必要です。栄養バランスが整った食事を1日3食食べて、毎日7時間は睡眠をとり、また通勤時にひと駅多く歩くなどの軽い運動をしてください。当たり前と思われるかもしれませんが、実はこうした生活習慣こそが健全な日々を送るうえで最重要な要素となります」

■マイペースで自分らしくふるまえるように

続いて野崎医師は、考え方や休日の過ごし方についても、次のように伝えます。


「釈然としない思いが重なったときは、ストレスの原因は何なのか、自分の環境は自然な状態か、あるいはがまんを強いられている状況か、具体的な解決法はあるのか、自尊心のありようはどうなのかなど、まずは状況をできるだけ冷静に見つめましょう。


職場や家族の期待に応えようとひとりで抱え込み、過剰にがんばると、いずれは反動で疲れます。次の長期休暇のお盆休みなどを目標や目安にして、マイペースで努力を持続しながら、自分らしくふるまえるよう、日々の行動を考えましょう。


自分の全力を100%としたら、その60~70%の力で仕事や学業につとめ、30~40%は余裕をもっておくように意識をしてみます。そうすると心身の健康が維持できて、いざ人生のイベントや有事にも備えることができるでしょう」

■誰かに相談する、紙に書き出す、趣味に興じる

ストレスの改善に良い方法はあるでしょうか。


「『他愛ない会話ができる誰かと話す』、『しかるべき人を探して相談する』、また、『感情を紙に書き出す』といった方法が有用です。言葉や文字にすると、複雑な感情が整理されて冷静になることがあります。


連休や週末の休日には、ストレスにまつわる環境から離れて、親しい友人と好きなものを食べながら無邪気な時間を過ごす、趣味の時間を持つ、日帰り旅行に出かける、また、ジョギングやウォーキング、ヨガや筋トレなど軽い運動をしてみてください」と野崎医師。


気分がふさぐことがあれば、まずは日々の習慣を見つめ直し、食事、睡眠、運動を整えること、また、周囲を見渡して自分の存在を冷静に見つめる、誰かに相談する、ストレスの元を紙に書き出す、休日を利用して趣味や運動などを実践し、五月病を予防したいものです。


(取材・文 海野愛子/ユンブル)


↑野崎京子医師の著書『心療内科女医が教える 人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス)

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