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「10分だけでも寝たほうがいい」って本当?昼寝の効果とは?

2018.05.18

「10分だけでも寝たほうがいい」って本当?昼寝の効果とは?


昼食のあとにやってくる睡魔……。「ねむくて午後からの仕事は集中できない!」なんて人もいらっしゃるかもしれませんね。「10分でも昼寝をしたほうが集中力は上がる」といわれることもありますが、これは本当なのでしょうか?今回は「昼寝」の効果について解説します。

記事監修



福田敬子 先生


精神科医。都内メンタルクリニック勤務。早稲田大学卒業、同大学院修士課程修了。カリフォルニア大学バークレー校留学、金融機関勤務ののち、山口大学医学部卒業。東京都立松沢病院、日本医科大学付属病院精神神経科などを経て、現職。

女医+(じょいぷらす)所属。

■「昼寝」の効果とは!?

昼寝の効果は、以下のような点だといわれます。

  • 疲労が回復する

  • 集中力が高まる

  • 認知能力が高まる

  • 創造力を高める

実際このような効果を裏付ける論文もあります。一番有名でいまだにネット上で引かれるのは「昼寝の効果をNASAも認めた」といった論文でしょう。


これは、

Crew factors in flight operations 9: Effects of planned cockpit rest on crew performance and alertness in long-haul operations(長距離運航において、コックピットでの計画的な休息がクルーのパフォーマンスや注意力に与える影響)

というもので、この論文の共同執筆者である疲労の専門家、マーク・ローズカインド(Mark Rosekind)さんは「26分間の昼寝は、パフォーマンスを34%、注意力を54%向上させる」としています。


マークさんはNASAの後、米NTSB(NATIONAL TRANSPORTATION SAFETY BOARD:国家運輸安全委員会) でボードメンバーを務めたときにも、「飛行場の航空管制官は業務の間に26分の昼寝を組み込むように」と勧告を出しています。


昼寝の効果が大きいというのは本当のようですね。

⇒データ出典:

『NASA』「Crew factors in flight operations 9: Effects of planned cockpit rest on crew performance and alertness in long-haul operations」

https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19950006379.pdf

■「昼寝」に関係する遺伝子発見!?

2018年2月、京都大学の土居雅夫准教授、岡村均同教授、米国シンシナティ大学小児病院博士研究員の合田忠弘さん、濱田文香同准教授らの研究グループが「昼寝に関係する遺伝子」を発見した、との報道がありました。


その論文は、

Calcitonin receptors are ancient modulators for rhythms of preferential temperature in insects and body temperature in mammals (カルシトニン受容体は、昆虫の温度選択リズムと哺乳類の体温リズムのために働く、古来からある調節因子である)

というもので、米国の科学誌『Genes&Development』に掲載されました。


「昼寝の遺伝子」といった報道がされていますが、研究の画期的な点は、昆虫、哺乳類と種は全く違うのに同じ「カルシトニン受容体」(ハエでは「DH31受容体」がこれに当たります)が日内の体温調節に関わっている点です。


たとえばハエ(実験に使われたのはキイロショウジョウバエ)は変温動物で、哺乳類(実験に使われたのはマウス)は恒温動物(常に体温が一定に保たれている)ですから、体温調節の仕組みは根本的に違います。


しかし、活動中に休息を取るときに体温が下がるのは同じなのです。これまでは変温動物と恒温動物に共通する「日内に体温を上げ下げするための仕組み」については全く分かっていませんでした。


変温動物のハエは、体温が外気温に左右されるので、自分好みの温度のほうに移動する習性があります。また日内の活動期には高い温度のほうへ、休息期には低い温度のほうへ移動します。


この研究によって、この体温調節の仕組みを起こさせ、1日のリズムをつくっているのは「DH31受容体」であることが分かりました。このDH31受容体は、ハエの脳の「体内時計をつかさどる時計ニューロン群」の一部にあります(発現しています)。時計ニューロンは生物の概日リズムをつくり出す神経ネットワークです。


DH31受容体の発達が低下したハエでは昼間の温度選択のリズムが見られなくなることが分かりました。


ハエのDH31受容体は、哺乳類ではカルシトニン受容体に当たる遺伝子です。このカルシトニン受容体は、哺乳類でも体内時計の中枢となる「脳内の視交叉上核と呼ばれるニューロン群」の一部にあるのです。


研究チームはマウスを使って、カルシトニン受容体が日内の体温制御に関わっていることを明らかにしました。カルシトニン受容体がないマウスでは、活動中の体温変化が失われてしまい、昼寝の時刻の体温が低下しなくなりました。


このことから、昆虫、哺乳類と種は違えども、日内の体温変化は、「カルシトニン受容体」を介して体内時計からシグナルが送られ、制御されていることが分かりました。


昆虫と哺乳類は進化の過程で6億年前に分かれたといわれますが、その枝分かれでも「日内の体温制御システム」は綿々と受け継がれてきたというわけです。そして、この体温制御のいわばサブルーチンは、現在の人間の体内でも走っているはずです。


長い旅になってしまいましたが、さて昼寝です。


眠気に誘われ昼寝をしたいなぁ、なんてときには体温が下がることが分かっています。つまり、人間の日内リズムからいえば活動期の休息です。活動期に休息を取ること、体温を下げることは効率の良い代謝や睡眠時間の確保につながります。


この昼寝を促すのもカルシトニン受容体の働きによるものではないか?というわけです。発表された論文、また京都大学の公式サイトで公開されている「研究成果」でも「昼寝」という言葉はでてきません。しかし、今回特定された遺伝子は「昼寝関連遺伝子」と呼んでも間違いではないそうです。

⇒『京都大学』「マウスとハエに共通にみられる体温の日内リズムを制御する仕組みの解明」

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/documents/180214_1/01.pdf


昼寝の遺伝子かどうかはともかくとして、日中の活動期に眠くなったら体内時計の中枢から「カルシトニン受容体」を介して体温を下げる指令が出ているのかもしれません。その場合には、確かに体の欲求に逆らうのではなく、おとなしく従って10分でも寝たほうが良いのかも……ZZZZ。


(高橋モータース@dcp)