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睡眠のリズムを整えるために大事なこと。「睡眠日誌」の効果って?

2018.05.28

睡眠のリズムを整えるために大事なこと。「睡眠日誌」の効果って?


どうも寝付きが悪い、ここのところあまり寝てないなぁ……。なんてお悩みの方は、一度自分の睡眠について記録を取ってみてはいかがでしょうか? 日記のようにつける「睡眠日誌」は、自分の睡眠について客観的に判断するための良い資料になるそうです。今回は「睡眠日誌」の効果についてご紹介します。

取材協力・監修


林光緒 博士


広島大学大学院総合科学研究科教授

日本睡眠学会(評議員)、日本時間生物学会(評議員)、日本社会精神医学会(評議員)、中国四国心理学会(監事)、日本臨床神経生理学会(会員)、日本心理学会(会員)、日本生理心理学会(評議員)、Sleep Research Society(会員)


著書に『快適な眠りのための睡眠習慣セルフチェックノート』(全日本病院出版会)、『睡眠のトレビア』(中外医学社)、『睡眠と健康』(放送大学教育振興会)、『睡眠学』(朝倉書店)、『睡眠心理学』 (北大路書房)、『眠気の科学』(朝倉書店)など。

■「睡眠日誌」とは何か?

「睡眠日誌」は、その日に何時間(何時から何時まで)眠り、その睡眠の状態はどのようなものだったのかを記録するものです。


基本は、

①床に就いた時刻

②入眠時刻

③睡眠途中で目が覚めた時刻(中途覚醒の時刻)

④起床時刻

の4つを2週間以上にわたって毎日記入していきます。昼寝、うたた寝、居眠りなども記入します。「ぐっすり眠れた」「眠りが浅かった」などのほか、たとえば寝床でスマホを見ていた、悪夢で目が覚めたといった「睡眠に関係する情報」も記録すると良いとされます。


この記録を続けると後で振り返って、

  • 1日の平均睡眠時間

  • 1週間の平均睡眠時間

  • 睡眠効率

    「実際に眠った時間 ÷ 寝床にいた時間 × 100」で計算します

    (床に就いても入眠まで時間がかかると睡眠効率は悪くなる)

などの情報が得られるほか、

  • 夜の睡眠時間が短くなると、翌日のこの時間帯に眠くなる

  • スマホを見ているとなかなか眠くならないのに、本を読んでいるとすぐ寝てしまう(睡眠効率が違う)

といったことに気付きやすくなります。つまり、睡眠日誌はさまざまな「睡眠障害」を解消するための基礎資料になるというわけです。

■「睡眠日誌」の効果とは?

広島大学の林 光緒博士は、8年前から講義の中で大学生に「睡眠日誌」をつけることを課題にしています。また、そのデータを基に睡眠リズムの是正について指導を行っているのです。


林博士に睡眠日誌についてお話を伺いました。


――睡眠日誌をつけることの効能とはどのようなものでしょうか?


林博士 睡眠日誌は文字ではなく「絵」や「図」にすることに意義があります。「自分がいつ寝て、いつ起きているのか」が図になると問題点が一目瞭然になりますからね。自分の睡眠時間が短い、眠れていない、などと思っていた人が、睡眠日誌によって「昼寝をたっぷりとっている」とか「思っていたよりも不規則な生活をしている」とか分かるわけです。


そうして「問題を認識する」と「直そうという気持ち」になりますね。このように睡眠日誌には睡眠習慣を直そうというモチベーションを高める効果もあります。


――睡眠リズムが乱れている人は自覚していないのでしょうか?


林博士 自覚している人もおられますが、普通だと思っている人も多いですね。実際に睡眠日誌をつけてみると「ここまでひどいとは思わなかった」という感想を持つ人が意外と多いんです。


――大学生に課題として睡眠日誌をつけるように指導されているそうですが?


林博士 はい。8年前から私の講義内で行っています。今年度(2018年)は教養の「睡眠の科学」という講義で行います。


――大学生の睡眠日誌の内容はいかがでしょうか?


林博士 睡眠リズムが乱れている学生は結構いますね。大学は、毎日1時間目から授業があるわけではありませんので、1時間目の授業がないと、夜更かしして、朝ゆっくり寝ているんです。ひどい人になると、朝4時、5時になってようやく眠りに就いたりします。


このような生活が慢性化すると、1時間目がある日も朝起きられなくなります。これでは朝の授業に間に合いませんし、授業に間に合うように起きたとしても睡眠不足がひどくて居眠りも多くなってしまいますね。

■睡眠のリズムを整えるために大事な3つのポイント

――先生の講義で、そのような睡眠リズムは修正されるのでしょうか?


林博士 ええ、大丈夫です。まず2週間、睡眠日誌をつけて自分の睡眠のどこに問題があるかを把握してもらいます。その後、睡眠改善の指導を行いますが、早い学生なら1-2週間で睡眠のリズムを取り戻すことができます。


大事なことは次の3点です。

1.平日、休日にかかわらず、毎朝決まった時刻に起きる

2.太陽の光を浴びる

3.夕寝をしない

――社会人の場合、休日に寝だめをする人が多いと思うのですが?


林博士 逆です。それは「寝だめ」ではなく、平日の睡眠不足を休日に取り返しているだけなんですよ。人間には必要な睡眠の量があります。それが足りないと、その分をどこかで補充しないといけません。


この足りなかった分が「睡眠負債」です。本人は「寝だめ」と称して睡眠をためているつもりかもしれませんが、実は「返済」に過ぎないのです。ですから「1」(毎朝決まった時刻に起きる)が大事なんです。


平日も休日もいつも決まった時刻に寝て起きて、1日ごとに必要とされる睡眠量を満たす。これができると睡眠リズムは良くなります。


――太陽の光を浴びるのは有効ですか?


林博士 人間の体内リズム(「サーカディアンリズム(概日リズム)」といいます)の周期は、もともと24時間よりも少し長いんです。だから気を付けていないと、どんどん夜更かしの生活になっていきます。でも朝、太陽の光を浴びると24時間にリセットされます。そこで、太陽の光を毎朝浴びて体内リズムをきちんとリセットすれば、夜は早く眠れるようになります。


――夕寝をしない、というのは?


林博士 一般に夕方4時以降の睡眠のことを「夕寝」といいますが、夕寝をすると夜の眠りが浅くなりますし、寝付きも悪くなります。朝起きてから夜眠るまでの間、睡眠物質が作られていくんですが、夕寝してしまうと睡眠物質が消費されてしまって、夜眠ろうとしたときに睡眠物質が足りなくなってしまうんです。それで夕寝すると夜、眠れなくなってしまうんです。

■社会人も睡眠日誌をつけてみよう!

――読者にはサラリーマンが多いのですが、社会人もやはり睡眠日誌をつけてみるべきでしょうか?


林博士 日本人は世界一、睡眠が短いことが知られています。平日はやるべきことがたくさんあって、夜遅くまで起きているという人は、大学生だけでなく、社会人にも多いんです。


平日に十分な睡眠時間を確保できないと、その分、土日に「寝だめ」してしまう。つまり土日は睡眠負債の返済に使われてしまう、といったことになりがちです。これでは睡眠のリズムは崩れたままです。


ですから、社会人の皆さんも一度「睡眠日誌」をつけてみられたらどうでしょうか? 「ここまでひどいとは思わなかった」というような結果になるかもしれません。


繰り返しますが、睡眠日誌は自分の睡眠の状態を把握するためのものです。自分の睡眠について客観的に見ることは、健康を維持するためにも有益なことだと思います。


――ありがとうございました。



林博士のお話では、睡眠障害で悩んでいる人が医師の診察を受けるときに「睡眠日誌」があれば、良い診断材料になるでしょう、とのことでした。皆さんも試しに「睡眠日誌」をつけてみたらいかがでしょうか?


(高橋モータース@dcp)