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健康保険が利かない!? 「差額ベッド代」っていったい何?

2018.05.28

健康保険が利かない!? 「差額ベッド代」っていったい何?


病気で入院すると出費がかさみます。いわゆる大部屋ではなく「ゆったりとした個室」などの希望を叶えるとさらにお金がかかります。またこの個室へグレードアップしたときの料金は健康保険が利きません。今回はこの「差額ベッド代」についてご紹介します。

記事監修


吹田朝子(すいた・ともこ) 先生


『一般社団法人 円流塾』代表理事。CFPR(R)認定者(ファイナンシャルプランナー)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、健康ファイナンシャルプランナー(R)。

一橋大学卒業後、生保会社の企画調査・主計部門を経て1994年より独立。著書多数。


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■健康保険適用の入院は料金が決まっている

国民皆保険制度をとっている日本では、診療報酬制度によって医療行為の単価(診療報酬)が決められています。たとえば「初診料」なら282点で、1点10円ですから「2,820円」という具合です(診療報酬制度については記事末のURLを参照してください)。

 

入院に関しても基本的な診療報酬が決まっています。たとえば、「一般病棟入院基本料」として、

1 急性期一般入院基本料※1

イ 急性期一般入院料1 1,591点

ロ 急性期一般入院料2 1,561点

ハ 急性期一般入院料3 1,491点

ニ 急性期一般入院料4 1,387点

ホ 急性期一般入院料5 1,377点

ヘ 急性期一般入院料6 1,357点

ト 急性期一般入院料7 1,332点

といった点数になっています。この点数をもとに1日当たりの一般病棟入院の基本料が算出されます。イからトまでは何が違うのかといいますと、看護職員一人で何人の患者を担当するのか、平均の入院日数や、重症な患者が何割いるかなどの点です(詳細が知りたい場合は記事末の厚生労働省の「個別改定項目について 参考資料 平成30年2月7日」を参照してください※2)。


1-イの場合には、1点10円で計算しますので「1,591点=1万5,910円」になります。


この入院基本料には、入院のどのような費用まで含まれるのでしょうか? 診療報酬点数表の通則によって、


通常必要とされる療養環境の提供、看護及び医学的管理に要する費用は(中略)、所定点数に含まれるものとする※3


と決まっていますので、入院時に必要となる基本的な「療養環境の提供」「医学的な管理」などの代金はこの中に含まれています。しかし、あくまでもこれは「素泊まり代」のようなもの。食事代や、病状に応じた特別な入院管理体制などの代金は別途加算されます。


こうした「療養のための通常の環境提供としての入院」には健康保険が適用されますが、より良い入院環境を求めるのであれば「特別の療養環境」を選択することができます。


ただし、これが健康保険適用外の特別なサービスになります。まさにアップグレード分の代金として、健康保険の負担はなく、全額を自己負担しないといけないのです。これがいわゆる「差額ベッド代」です。

■「特別の療養環境」を提供するのにかかる代金が「差額ベッド代」

話を整理しましょう。


入院に当たっては、保険が利く(公的医療保険で定められた)入院基本料ともいうべき基礎部分があります。「差額ベッド代」は、正式には「特別療養環境室料」といわれますが、この基礎部分に付加される「上乗せされる部分」に該当します。つまり、


基礎部分(入院基本料相当)+ 上乗せ部分(差額ベッド代)


となるのです。「特別の療養環境」を提供するため、大部屋と少人数部屋の差額の料金という意味で「差額ベッド代」といわれ、健康保険が適用されない部分として、医療機関が自由に価格を設定できます。


「特別の療養環境」に当たるものとしては、

1.病室のベッド数が1-4床

2.病室の面積が1人当たり6.4平方メートル以上

3.プライバシーを確保するための設備(カーテンやついたてなど)がある

4.少なくとも「個人用の収納設備」「個人用の照明」「小机等および椅子」の設備がある

という条件※4をクリアしなければなりません。これらがそろっていれば医療機関は「差額ベッド代」を請求できるわけです。ですから、入院基本料で入院できる部屋ではなく「個室がいい」と希望した場合には、まず間違いなく「差額ベッド代」を請求されるでしょう。

■「差額ベッド代でもめる」理由は?

「差額ベッド代」については、医療費の支払いの段になってもめることが多いといわれます。これは、差額ベッド代が1日当たり数千円程度から、高いところではバス・トイレ・電話・冷蔵庫・テレビなどが付いて数万円~10万円程度のものなど※5高額になりがちで、病院に支払う自己負担が非常に高くつくからです。

 

「差額ベッド代」が発生する特別な部屋に入院させる場合には、医療機関はあらかじめその旨を丁寧に患者に説明し、同意書にサインしてもらう必要があります。

 

厚生労働省は、

1.特別な療養環境を提供する部屋の場所や料金について、見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に分かりやすく掲示する

 

2.患者の意に反して、特別な療養環境を提供する部屋に入院させてはならない

 

3.患者が特別な療養環境を提供する部屋を希望する場合には、設備や料金などについてきちんと説明する

 

4.「特別な療養環境を提供する部屋」に入院することに同意する最終確認として、患者には同意書にサインしてもらう

といったことを医療機関に求めています※6。


そもそも治療は患者のためのもの。2に挙げられているように「患者の意に反して~入院させてはならない」とあり、医療機関側の事情なら「差額ベッド代」は請求できません。



患者が希望して個室などの「特別な療養環境」の部屋に入院する場合には、あらかじめ、きちんと医療機関から説明を受け、環境・設備・料金等に納得した上で、同意書にサインするようにしましょう。治療の前後でお金のこと、特に「差額ベッド代」でもめるのは避けたいですからね。


(高橋モータース@dcp)

※1データ引用元:『厚生労働省』「平成30年 厚生労働省告示第43号」「入院料等」

http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=519652&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196287.pdf

 

※2データ引用元:『厚生労働省』「個別改定項目について 参考資料 平成30年2月7日」P.6

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193709.pdf

 

※3データ引用元:『厚生労働省』「平成30年 厚生労働省告示第43号」「入院料等」通則1,P1

http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=519652&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196287.pdf

 

※4条件については以下を参照

⇒データ参照元:『厚生労働省』「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について,P2

http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=363702&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000128580.pdf

 

※5

⇒参考資料:『厚生労働省』「中央社会保険医療協議会 主な選定療養に係る報告状況」

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000140217.pdf

 

⇒参考資料:『全日本民医連』「みんいれん半世紀(20) 差額ベッドのない病院 いま注目、『こんな病院があったのね!』 差額とるより患者とともに医療改善の運動を」より「差額ベッド代(1日)の高額な全国上位10病院」

https://www.min-iren.gr.jp/?p=3223

 

※6厚生労働省が医療機関に履行するべきとしている条件については以下を参照

⇒データ参照元:同上,pp3-4

http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=363702&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000128580.pdf