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「健康保険」と「国民健康保険」って何が違うの?受けられる給付に違いはある?

2018.05.29

「健康保険」と「国民健康保険」って何が違うの?受けられる給付に違いはある?


公的な医療保険によって被保険者である私たちには「給付」が行われます。どのような給付があるかは、公的な医療保険の種類によっても異なります。今回は「健康保険」と「国民健康保険」の給付についてご紹介します。

記事監修


吹田朝子(すいた・ともこ) 先生


『一般社団法人 円流塾』代表理事。CFPR(R)認定者(ファイナンシャルプランナー)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、健康ファイナンシャルプランナー(R)。

一橋大学卒業後、生保会社の企画調査・主計部門を経て1994年より独立。著書多数。


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■「給付」って何でしょう?

普段はあまり使わない言葉ですが、「給付」とは「公の機関が金品や便宜を与えること」を意味しています。公的な医療保険において「給付」という場合には、

・「医療給付」…医療サービスという現物が与えられる(現物給付)

・「現金給付」…お金が与えられる(一時金や超過分の支給など)

の2種類があります。保険者※1が被保険者にどのような給付を与えるかについては基本的に法律で決まっています。


公的な医療保険には、

1.健康保険(「組合健保」と「協会けんぽ」)

主に企業に勤務するサラリーマンが加入します

(日雇い労働に従事する人も条件を満たせば、特例被保険者として手続きできます)


2.国民健康保険

自営業者、退職者など、他の医療保険(1・3・4・5)の対象外の人が加入します

(厚生年金保険など被用者年金に一定期間加入し、老齢年金給付を受けている65歳未満等の人も)


3.共済組合

国家公務員・地方公務員、私立学校教職員などが加入します


4.船員保険

船長、海員、予備船員として船舶所有者に使用される人が加入します


5.後期高齢者医療制度

75歳以上の人、また65-74歳で一定の障害があると認定された人が加入します

※保険の種別によって、未成年者などの家族は被保険者の扶養者という立場で医療保険に加入します。


の五つがあります。それぞれの保険は、

・健康保険 ⇒ 『健康保険法』により規定

・国民健康保険 ⇒ 『国民健康保険法』により規定

・共済組合 ⇒ 『国家公務員共済組合法』『地方公務員等共済組合法』『私立学校教職員共済法』等により規定

・船員保険 ⇒ 『船員保険法』等により規定

・後期高齢者医療制度 ⇒ 『高齢者の医療の確保に関する法律』により規定

となっています。つまり、五つの公的な医療保険はその根拠となる法律が全部違っているわけです。

■「健康保険」の給付は?

読者の皆さんのほとんどはサラリーマンで、会社勤務をしていらっしゃるでしょう。つまり、上記のうち「健康保険」(保険者は「健康保険組合」か「全国健康保険協会」のどちらか)の被保険者ですから、健康保険法に基づく給付が受けられます。健康保険法の第五十二条(第四章「保険給付」)では、

1.療養の給付(第五十二条の一)

2.入院時食事療養費(第五十二条の一)

3.入院時生活療養費(第五十二条の一)

4.保険外併用療養費(第五十二条の一)

5.療養費(第五十二条の一)

6.訪問看護療養費(第五十二条の一)

7.移送費(第五十二条の一)

8.高額療養費(第五十二条の九)

9.高額介護合算療養費(第五十二条の九)

10.家族療養費(第五十二条の六)

11.家族訪問看護療養費(第五十二条の六)

12.家族移送費(第五十二条の六)

13.家族埋葬料(第五十二条の七)

14.家族出産育児一時金(第五十二条の八)


15.出産育児一時金(第五十二条の四)

16.埋葬料(第五十二条の三)

17.傷病手当金(第五十二条の二)

18.出産手当金(第五十二条の五)

という給付を行うよう定めています。

(後述の国民健康保険法の給付との対比の関係上、順序を変えて番号を振っています)

⇒データ出典:『健康保険法』

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?openerCode=1&lawId=211AC0000000070_20170401

また、第五十三条に「健康保険組合の付加給付」という規定があります。


法律に定められた必ず行わなければならない給付(これを「法定必須給付」といいます:後述)に併せて、規約で定めるところにより、「健康保険組合」が独自に「給付」を追加できるのです。


たとえば、「出産育児一時金」を手厚くしたり、「高額療養費」制度で医療費の1カ月の自己負担限度額を低く設定し、より多くの給付を受けられるようにしたり、といった施策が健康保険組合によって行われていることがあります。


自分の健康保険証が「健康保険組合」のものであれば、独自の給付が行われているかを一度チェックしてみましょう。

■「国民健康保険」の給付は?

自営業者・退職者等の皆さんが加入しなければならない「国民健康保険」では、『国民健康保険法』によって以下の給付が被保険者に行われるように定めています(「第四章 保険給付」内)。

1.療養の給付(第三十六条)

2.入院時食事療養費(第五十二条)

3.入院時生活療養費(第五十二条の二)

4.保険外併用療養費(第五十三条)

5.療養費(第五十四条)

6.訪問看護療養費(第五十四条の二)

7.移送費(第五十四条の四)

8.高額療養費(第五十七条の二)

9.高額介護合算療養費(第五十七条の三)


10.特別療養費(第五十四条の三)


※11.出産育児一時金(第五十八条)

※12.葬祭費・葬祭の給付(第五十八条)

※※13.傷病手当金(第五十八条の2)

※※14.出産手当金


⇒データ出典:『国民健康保険法』

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=333AC0000000192

「1-9」は健康保険の給付と同じですが、10の「特別療養費」は健康保険にはありませんね。この特別療養費は、国民健康保険法の第54条の3に定められており、

被保険者の世帯に属する人が、『被保険者資格証明書』の交付を受けている場合に限って、かかった医療費について「特別療養費」という給付を受けられる

というものです。なぜこのような規定があるのでしょうか?


まず、上記の会社員向けの「健康保険」の場合には、「未成年者などの家族は被保険者の被扶養者」という立場で、保険の摘要を受けることができます。


しかし「国民健康保険」の場合には、あくまでも個人個人が加入するものであって、原則として加入している人だけが保険の適用を受けられる仕組みになっています。


そのため「健康保険」には「家族療養費」「家族訪問看護療養費」など、家族(被扶養者:健康保険法に定める被扶養者の範囲※2)が受けられる給付が定められている一方、「国民健康保険」でも、家族の一部も対象になるように「被保険者資格証明書」の交付を受けた場合に、特別療養費の給付が受けられるという規定になっているのです。


なお、「その他の給付として」『国民健康保険法』第五十八条では、※がひとつ付いている「11.出産育児一時金」と「12.葬祭費・葬祭の給付」については、給付を行うようにと定められているのですが、

特別の理由があるときは、その全部または一部を行わないことができる

とされ、市区町村の裁量に委ねられています。ただし、このふたつはたいてい給付されているようです。


※がふたつ付いている「13.傷病手当金」については、同法「第五十八条の2」に規定があり、「条例または規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる」となっています。しかし、健康保険にあるような「傷病手当金」や「出産手当金」は現時点で実施しているところはほとんど見られないようです。

⇒データ参照元:『厚生労働省』「我が国の医療保険について」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

ただし、少子化対策的な面もありますので、出産に関しては「出産祝い金」の交付などを行っている地方自治体があります。読者の中で国民健康保険に加入している人は、出産に関する助成について確認してみてください。

■法律に定められた給付と付加給付がある!

このように、「健康保険」と「国民健康保険」を比較しただけでも給付の内容に違いがあることが分かります。公的医療保険で受けられる給付については、大別して以下の三つがあるわけです。

●法定必須給付

法律で定められた、必ず行わなければならない給付


●法定任意給付

法律で定められているが、行うかどうかは保険者の判断に任されている給付


●任意給付(法定外給付)

法律に定められた給付以外に、保険者が独自に被保険者に対して行う給付

「健康保険」と「国民健康保険」とを比較すると、「健康保険」のほうがより給付が手厚いですが、その理由のひとつは、勤務する「企業」と「従業員」で折半して保険料(掛け金)を負担し、保険により多くの資金を提供しているという仕組みにあります。



しかし、公的な医療保険を維持するため、莫大(ばくだい)な公費(税金)が投入され赤字になっていることは事実です。公的な医療保険制度でどのような給付が受けられるのか、またその概要などを知っておくことは、日本の財政問題を理解する上でも大切なことなのです。


(高橋モータース@dcp)

※1「保険者」とは、契約に基づいて保険料(掛け金)を徴収し、給付を行う義務を負う者のことです。保険に加入し、契約に従って保険料(掛け金)を支払い、給付を受ける人のことを「被保険者」といいます。サラリーマンの皆さんの場合、保険者は「健康保険組合」か「全国健康保険協会」になります。


※2被扶養者の範囲

同居が必須の人と、同居していなくてもいい人のケースがあります。


●同居していなくてもいい被扶養者

1.配偶者(内縁を含む)

2.子(養子を含む)・孫・兄弟姉妹

3.父母(養父母を含む)等の直系尊属


●同居が必須の被扶養者

1.上記以外の三親等内の親族(義父母等)

2.内縁の配偶者の父母、連れ子

3.内縁の配偶者死亡後のその父母、連れ子