生殖器は赤ちゃんをつくるためにありますが、男性と女性ではその役割と機能が違っているため、全く違った形状をしています。異性のものを見て、なんだか不思議な形状だなと思ってしまったこともあるのではないでしょうか。そこで今回は男性器の「睾丸(こうがん)」についてご紹介します。
記事監修
伊藤友梨香 先生
泌尿器科医。東海大学医学部卒業、東邦大学医療センター大森病院勤務、石心会川崎幸病院勤務。
女医+(じょいぷらす)所属。
■睾丸で精子をつくり、副睾丸で保管する
男性の生殖器は大きく分けて、
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陰茎(いんけい)
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陰嚢(いんのう)
のふたつから成ります。これは外から見える「外性器」ですが、体内には、
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睾丸(精巣)
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副睾丸(精巣上体)
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精管
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精嚢
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射精管
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前立腺
などの生殖に関わる器官があります(これらが内性器)。陰嚢を触ってみると、ふたつの球状のものに触れます。この球状の形から時に「キンタマ」なんていわれますが、ひとつひとつの「球」は、丸っこい「睾丸(精巣)」の上に「副睾丸(精巣上体)」がくっついたものになっていて、これが左右一対あります。
睾丸は「精巣」という呼び名があるとおり、精子を作る役割をします。副睾丸(精巣上体)は睾丸で作られた精子を一時的に保管する働きをするのです。
●睾丸
卵形をした「精子を作る器官」です。ひとつの睾丸には、長さ1mほどにもなる曲精細管が約1,000本収められていて、ここで精子が作られます。できた精子は直精細管を通って、副睾丸に送られます。また、男性ホルモンを分泌するのも睾丸の重要な役割です。左右一対、ふたつあるのはどちらかに障害があっても精子がつくれるようにである、と考えられています。
●副睾丸
睾丸にくっついてある器官で、睾丸から送られてきた精子を保管します。副睾丸では最大10億もの精子を保管できると考えられています。また、精子は10-20日ほど蓄えられ、その間に成熟します。
■精子を保護するために陰嚢は体にぶら下がっている
下品な表現で恐縮ですが、「キンタマぶらぶら」なんていわれるとおり、睾丸・副睾丸は陰嚢という「袋」に入れられて、体にぶら下げるようになっていますね。
これは、精子が熱に弱い(そもそも精子をつくる過程も体温よりも低くないとうまく進みません)ためです。精子をつくる睾丸、保管するための副睾丸を体の外に出すことで、温度調節が容易なようにしているのです。
陰嚢は、寒いときには収縮して睾丸を体に近づけて温め、暑いときには伸びて表面積を広げ、睾丸が温まり過ぎないよう熱を逃がします。また、陰嚢の表面はしわしわになっていますが、これは表面積を増やして放熱しやすいようにするためです。いわばラジエーターですね。
陰嚢はこのような働きで、精子がつくられやすい温度を保っているのです。
体にぶら下がった陰嚢、その中の睾丸は不思議に思えるかもしれませんが、上でご紹介したとおり「精子をつくりやすい環境を整えるため」「保管している精子を熱から守るため」にそのようになっているのです。
(高橋モータース@dcp)