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耳鼻咽喉科専門医が教える。花粉症やアレルギー性鼻炎に朗報。「舌下免疫療法」とは?

2018.06.02

耳鼻咽喉科専門医が教える。花粉症やアレルギー性鼻炎に朗報。「舌下免疫療法」とは?


スギやヒノキの花粉症に悩む人にとって、初夏の訪れは症状がおさまってほっとするころではないでしょうか。ですが、この時期ならではの花粉症ケアの情報があります。


耳鼻咽喉科専門医でとおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長によると、「スギ花粉の飛散が落ち着いてきた6月からは、『舌下(ぜっか)免疫療法』を始めるタイミングなんです。この方法は来シーズン以降の症状を緩和して、やがては根治も期待ができます。2014年秋から健康保険が適用になり、2018年夏には錠剤も登場します」ということです。詳しいお話を聞いてみました。

取材協力・監修



遠山祐司氏


耳鼻咽喉科・気管食道科専門医。大阪市都島区医師会会長。医学博士。医療法人とおやま耳鼻咽喉科院長。

医療法人とおやま耳鼻咽喉科:大阪市都島区御幸町1-9-1


http://www.eonet.ne.jp/~tohyamajibika/

■アレルギーの元を体内に入れて、体質を改善していく

――舌下免疫療法というのは、どのような方法なのでしょうか。


遠山医師: 花粉症を訴える人の多くは、くしゃみや鼻水、目のかゆみを抑えるために、飲み薬や点鼻薬、点眼薬を用いているのではないでしょうか。これは、起きている症状を鎮めるための「対症療法」と呼ばれる治療法です。


これに対し、「舌下免疫療法」とは、症状の元となる免疫のしくみに働きかけて、症状そのものを緩和し、根本的な改善を目指す治療法です。アレルゲン免疫療法や減感作療(さりょう)法と呼ばれる治療法のひとつです。現在、高い有効率が認められ、この療法ができるのは、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の2種類です。


――免疫のしくみに働きかけて、症状が和らぐ、根治が期待できるとは朗報です。治療の方法を具体的に教えてください。


遠山医師: アレルギーの原因となるスギ花粉の抽出物を体内に入れて、安全性と効果を確認しながらゆっくりと量を増やし、段々に体質を変えていきます。舌下というのは、舌の裏に薬を投与するという意味です。


これまでの免疫療法には、皮下免疫療法といって注射で抽出物を入れる治療法がありましたが、注射の痛みや長期に渡る頻繁な通院回数に難点がありました。それらを改善し、利便性の高い治療として登場したのが「舌下免疫療法」です。2014年に健康保険の適用となり、普及しはじめています。


また、ダニアレルギー性鼻炎も同様の方法で、2015年から舌下免疫療法が健康保険の適用になっています。当初は12歳以上への使用のみ認められていましたが、2018年2月に12歳未満にも使用可能となりました。

■舌の下に薬を垂らして2分間放置するだけ

――実際に治療を行っている患者さんの症状や感想はいかがですか。


遠山医師: 健康保険が適用となって早い時点でスギ花粉に対して治療を始めた患者さんは、3年以上継続していることになりますが、今シーズンはほとんど症状が出ていません。また、以前より軽くなり、対症療法として用いる薬も減った人が多くいます。一般に、スギ花粉症で舌下免疫療法をスタートしてから、花粉症の時期を2シーズン過ごした患者さんは、その次のシーズンからかなりの確率で症状が驚くほど軽減するようです。


実際には、「舌の下の粘膜に薬を垂らし、2分間そのまま放置したあとで飲み込む。服用後5分間はうがいや飲食を控える」という方法で、誰もが手軽に服用できます。最初の2週間でその量を徐々に増やし、3週目からは同じ量の薬を、毎日舌下に投与します。


副作用は口内炎、またのどや耳のかゆみが挙げられ、1回目は病院で様子を見ながら実施します。2回目からは毎日自宅で自分で行なってもらいます。


患者さんからは、「当初は面倒と感じたけれど、慣れてくると、日課として抵抗なく続けられる」という意見が多くあります。


――花粉の飛散が終わった時季から、治療を開始するのがよいということでした。なぜでしょうか。


遠山医師: 免疫療法は、スギ花粉にアレルギーがある人にスギ花粉エキスを体内に入れるため、アレルギー反応を起こす可能性があります。実際に花粉が飛散している時期でアレルギー反応が活発に起こっている最中では、さらに反応が強くなる可能性も考えられます。


そこで、スギ花粉の飛散がおさまった5月以降に始めるのが望ましいわけです。また、即効性がある治療ではなく、少なくとも3カ月以上続けたあとでなければ、効果が期待できません。本格的な飛散が始まる3カ月前には治療を開始しておきたいと考えると、6月~12月が治療をスタートするタイミングとなります。

■約8割の人に効果がみられる

――つらい花粉症の諸症状を和らげられるのであれば試したくなります。どの程度、改善する見込みがあるのでしょうか。


遠山医師:「2割弱は根治する可能性があり、かなり症状が抑えられる人・何らかの効果を感じる人は約6割、残りの2割前後は効果がみられない」というデータがあります。個人の効果を見極めながら、治療を続けるかどうかを検討していきます。


治療期間が長くなるほど効果が期待できるという報告もあり、最低3年以上は続けることが推しょうされています。

■2018年夏から5歳以上が服用可能な錠剤が新登場

――治療を始めるにあたって、年齢制限など条件はありますか。


遠山医師:スギ花粉症であるという確実な診断が必要です。そのため、血液検査や皮膚(ふ)テストを行ってから、治療を始めることになります。また、健康保険が適用になった当初は、12歳以上という条件がありましたが、2018年6月末からは、5歳以上の子どもから使うことができる錠剤が発売されます。この治療法を活用する人が拡大すると予想されます。


また、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法の両方を同時にスタートすることは推しょうされていません。

■治療費は1カ月あたり2,000~2,500円

――費用はどのくらいかかるのでしょうか。


遠山医師: 健康保険適用で3割負担の場合、診療費と薬代の合計で1カ月あたり2,000~2,500円です。1年を通して治療をするので、年間約24,000~30,000円となります。治療を始める前の検査や1年に1回程度の検査が必要ですが、その費用は各5,000円ほどです。


効果がみられる人にとっては、つらい諸症状を和らげられると同時に、長い目で見ると医療費の節約になると言えるでしょう。


舌下免疫療法はどこの医療機関ででも行っているわけではありませんので、事前に問い合わせてから受診してください。


――舌下免疫療法が有用なこと、また拡大されていくだろうこともわかりました。ありがとうございました。



あのつらさを根治できる可能性があるならば、ぜひ試してみたいものです。来シーズンの前に、検討してみてはいかがでしょうか。


(取材・文 ふくいみちこ、岩田なつき/ユンブル)