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臨床内科専門医が教える。天気の変化が気になる「気象病」とは?

2018.06.13

臨床内科専門医が教える。天気の変化が気になる「気象病」とは?


季節の変わり目や雨が近づいてきたときに、頭痛やめまい、肩こり、胃重感、耳鳴り、イライラ、ウツウツなどの不調が生じる、また、関節痛やぜんそくなどの持病が悪化することがあるといいます。


「天候の変化が原因と考えられる場合、こうした症状は『気象病』と呼ばれます。とくに女性に多いのが特徴のひとつです」と話すのは、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長。そこで、気象が体に与える影響、その対処法や予防法について聞いてみました。

取材協力・監修



正木初美氏


日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。内科、リハビリテーション科とともに、更年期外来、禁煙外来、漢方治療を行っている。


▼正木クリニック

大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9

http://www.masaki-clinic.info/

■気圧の変化で自律神経のバランスが乱れる

梅雨どきにはどこかしらだるくて疲れがとれないという人が増えます。昔からよく、「雨が降ると古傷が痛む」、「雨の日は憂うつに感じる」などと言われますが、正木医師は、天候と体調不良の関係について次のように説明します。


気象病の主な原因は、気圧の変化です。多くの場合、低気圧が近づいてくる、また雨模様で湿度が高くなるにつれて不調が出ます。近ごろは、ゲリラ豪雨で急に天候が変わる、朝晩の気温差が大きい、梅雨が長い、台風が大きくて多いなどで患者さんの数は急増していると言われています。


天気が急に変化するということは気圧も同様に変化するということです。気圧が急変すると、私たちの体の機能を調整している自律神経のバランスが乱れます。不調が起こるのはそのためです。


自律神経とは、循環器や消化器、呼吸器が正常に働くように調整している神経です。活動や緊張、興奮をつかさどる『交感神経』と、鎮静やリラックスをつかさどる『副交感神経』の2つがあり、相互に働いて、呼吸や心拍、体温、血圧、血流、消化などを正常に保つようにコントロールしています。


朝起きて活動を始められるのは交感神経が優位に働き、夜になると気分が落ち着いて眠くなるのは副交感神経が優位になるからです」


自律神経の乱れが不調をまねくとは、よく聞きます。気圧は自律神経にどのように関わっているのでしょうか。


「耳の奥の『内耳(ないじ)』という部分には、気圧の変化を敏感に感じるセンサーがあって、少しの変化でもたちまち脳に伝えて自律神経に影響すると考えられています。


交感神経が優位に働くと、心拍数、血圧、体温が上がって血管は収縮します。これが強くなると、頭痛や胃痛、関節痛などの痛み、イライラなどが現れやすくなります。


副交感神経が優位になると内臓や器官はその反対に作用し、だるい、眠い、憂うつだといった症状が出ます。気象病が女性に多いのは、自律神経のコントロール力は男性に比べて女性の方が低いから、またホルモンのバランスの影響などがあるとされます」と正木医師。

■栄養が整った食事、適度な運動、十分な睡眠、冷え対策をする

では、どうすれば気象病の諸症状を改善できるのでしょうか。正木医師はこうアドバイスをします。


「気象病になりやすい人は、日ごろから内耳が揺れに敏感で乗り物酔いをしやすい、また、寝つきが悪いストレスを感じやすいなど、自律神経の乱れが原因と考えられる不調を覚えやすいという報告があります。


ですから、自律神経のバランスを整えるために、栄養のバランスが整った食事をする適度な運動をする十分に睡眠をとるなどの生活習慣の改善をすることが始めの一歩となります」


さらに、「室内の温度にも配慮が必要です」と正木医師。


「夏は一歩外に出ると猛暑、室内に入ると冷房で一気に冷えるということをくり返します。すると体温を一定に保とうとする自律神経に負荷がかかり、さまざまな不調をまねく原因となります。


これを防ぐためには、エアコンの設定温度を下げすぎず、屋外と室内の温度差を10度以内にとどめましょう。職場などで調整が難しい場合は、夏用のひざかけやレッグウォーマーを使う、カーディガンを羽織るなどして冷えを防止しましょう。


また、入浴はシャワーですませず、38度~40度のぬるめのお湯に浸かって体を温めると血流が促進され、症状の改善に役立つでしょう」

■ストレッチで血流を促す。予報で気圧の変化を予測する

続いて正木医師は、実際に気象病の症状が現れたときの対処法をこう挙げます。


首のストレッチを軽く行う、また、耳を上下横に引っ張ってからくるくると回すなどをして、首、頭部、耳の付近の血流を促しましょう。


また、めまいや頭痛、立ちくらみ、軽い吐き気など、乗り物酔いと似た症状の場合は、乗り物酔い対策の薬や頭痛薬で症状を抑えられる場合があります。また、関節痛が現れるときは、患部を温めてみてください」


気圧の変化を事前に察知すれば、予防がしやすいかもしれません。


「気圧の変化は、天気予報を確認すれば予測がつきます。低気圧が近づいてくるときがもっともしんどいことが多いので、早めに自分に合っている薬を飲む、仕事の予定を変えるなど、ある程度対応することができるでしょう。


天気予報をチェックすることはもちろんですが、近ごろは気圧の変化を事前に知らせるスマホやパソコン用の無料のアプリもあります。それらを活用して、体調の変化に備えましょう。


症状が長く続く場合は、気圧や天気の変化と体調を記録してください。それを持って、かかりつけ医や内科を受診するといいでしょう」(正木医師)


梅雨や急な大雨、台風、高い湿度のときなどの体調不良に自覚がある場合は、日ごろの生活習慣を改善するとともに、事前に天気を把握して対処法を考えておきたいものです。


(取材・文 堀田康子、岩田なつき / ユンブル)