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もし、「お金がない」「保険証がない」ときに病気になってしまったら……?無料低額診療の仕組み

2018.06.18

もし、「お金がない」「保険証がない」ときに病気になってしまったら……?無料低額診療の仕組み


たとえば突然、仕事がなくなって、お金もなくなってしまうことがあるかもしれません。そんなとき、もしけがをしたり、病気になったりしてしまったら……? 医療費は、どのように支払えばいいのでしょうか。今回は、このような場合の救済となる「無料低額診療」について解説します。

記事監修


笹倉渉 先生


麻酔科標榜医、麻酔科認定医、麻酔科専門医、日本医師会認定産業医。『公立昭和病院』初期臨床研修医。『東京慈恵会医科大学附属病院』麻酔科・助教。『公益社団法人 北部地区医師会 北部地区医師会病院』麻酔科・科長を経て、現『MYメディカルクリニック』院長。


⇒『MYメディカルクリニック』公式サイト

http://mymc.jp/

■生活に困っている人が医療を受けられるように!

公的な医療保険に何らかの理由で加入できず保険証を持っていない、また加入していても自己負担分を支払えないといった場合には、医療機関に足を運ぶこともできません。そのような状態でもし病気になったら、治療を受けることは困難です。


生活保護の申請を行って生活扶助を受けられればいいのですが、申請から実施までには時間がかりますし、また申請が必ず通るとも限りません。


困っている人たちが診療を受けられるように実施されているのが「無料低額診療事業」です。第二種社会福祉事業として位置付けられていて、


生活困難者が、経済的な理由によって必要な医療を受ける機会を制限されることのないよう、無料または低額な料金で診療を行う


というものです。

■無料低額診療を受けるための手続き

無料低額診療を受けるためには、まず福祉事務所などで「無料低額診療を受けたいのですが」と相談します。そうするとソーシャルワーカーとの面談が行われます。


また、無料低額診療を行っている医療機関の窓口に行き、同様の相談を行って、ソーシャルワーカーを紹介してもらう方法もあります。面談では、給与明細・年金通知書・預金通帳などを確認し、制度の適用が認められれば、無料低額診療を受けることができます。


急に具合が悪くなったなどの緊急の場合には、先に無料低額診療を行っている医療機関を訪問し、診察を受けてからソーシャルワーカーに相談する、といったこともあります。

⇒データ引用元:

『厚生労働省』「無料低額診療事業について」

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0121-7d.pdf

■無料低額診療を行う医療機関

無料低額診療を行う医療機関は日本全国に647カ所(病院347カ所/診療所300カ所)あり、患者数は777万4,148人に及びます(厚生労働省の平成27年度のデータによる)。


ちなみに都道府県それぞれに何カ所あるかについては以下のようになります。


●無料低額診療を行う医療機関の数

・北海道 48カ所

・青森県 14カ所

・岩手県 6カ所

・宮城県 10カ所

・秋田県 1カ所

・山形県 6カ所

・福島県 9カ所

・茨城県 8カ所

・栃木県 6カ所

・群馬県 15カ所

・埼玉県 25カ所

・千葉県 21カ所

・東京都 51カ所

・神奈川県 40カ所

・新潟県 11カ所

・富山県 5カ所

・石川県 9カ所

・福井県 8カ所

・山梨県 13カ所

・長野県 7カ所

・岐阜県 5カ所

・静岡県 9カ所

・愛知県 3カ所

・三重県 4カ所

・滋賀県 8カ所

・京都府 39カ所

・大阪府 66カ所

・兵庫県 29カ所

・奈良県 18カ所

・和歌山県 7カ所

・鳥取県 5カ所

・島根県 2カ所

・岡山県 18カ所

・広島県 8カ所

・山口県 10カ所

・徳島県 3カ所

・香川県 6カ所

・愛媛県 14カ所

・高知県 2カ所

・福岡県 25カ所

・佐賀県 3カ所

・長崎県 11カ所

・熊本県 8カ所

・大分県 4カ所

・宮崎県 9カ所

・鹿児島県 10カ所

・沖縄県 8カ所

⇒データ引用元:

・『厚生労働省』「無料低額診療事業・無料低額老健事業の実施状況の概要(平成27年度実績)」

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/muryou_sinryoujigyou_h28.pdf


・『厚生労働省』「無料低額診療事業等に係る実施状況の報告 / 平成28年度無料低額診療事業等に係る実施状況の報告」

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E7%84%A1%E6%96%99%E4%BD%8E%E9%A1%8D%E8%A8%BA%E7%99%82%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E7%AD%89%E3%81%AB%E4%BF%82%E3%82%8B%E5%AE%9F%E6%96%BD%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AE%E5%A0%B1%E5%91%8A&layout=dataset&toukei=00450303

秋田県のように1カ所しかない県もありますが、少なくとも各都道府県全てに無料低額診療を行う医療機関は存在します。

■薬代が問題! ただし薬代を助成する地方自治体もあり!

無料低額診療は生活に困っている人にとっては助かる制度ですが、問題がひとつあります。「薬代」です。現在は医薬分業が進んでいるため、医師に薬の処方箋(しょほうせん)を書いてもらい、薬局で薬を購入するのが普通です。つまり診療は無料・低額でも「薬代」が自己負担になってしまうのです。


生活にも困っている場合には薬の代金を支払うことは難しいでしょう。薬代も支援すべきなのですが、悲しいことに現在は一部の地方自治体で助成制度があるのみです。


たとえば、高知県高知市では無料低額診療における薬剤の代金を市が負担するための条例「社会福祉法に基づく無料低額診療事業に係る薬局の登録等に関する規則」を全国に先駆けて2011年(平成23年)に定めています。


青森県青森市では「調剤処方費助成事業」を行っており、無料低額診療を実施している医療機関の発行する「無料低額診療券」を青森市内の保険薬局で処方箋と一緒に提示すると、薬代が無料または低額になります。


また、北海道旭川市でも「旭川市無料低額診療事業調剤処方費用助成事業」として同様の薬代の助成を行っています。さらに北海道苫小牧市では2014年4月から、沖縄県那覇市では2016年6月から助成制度が開始されました。


地方自治体の多くで無料低額診療における薬代の助成を求める請願が起こっていますが、実現して「助成されるのが普通」となるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。



健康でなければ働くことはできません。現在、病気で生活に困っていらっしゃる皆さんは、まず健康になることが先決です。そのためにこの「無料低額診療」を利用してみてはいかがでしょうか。まずは無料低額診療を行っている医療機関、また福祉事務所などの窓口を訪れてください。日本人は誰もが健康に暮らす権利を持っているのです!

⇒参考:

・『高知県高知市』「社会福祉法に基づく無料低額診療事業に係る薬局の登録等に関する規則」

http://lg.joureikun.jp/kochicity/act/frame/frame110001914.htm


・『青森県青森市』「『無料低額診療事業』利用者への調剤費助成」

https://www.city.aomori.aomori.jp/kenko-fukushi/fukushi-kenkou/fukushi/seikatsu-fukushi/01.html


・『北海道旭川市』「旭川市無料低額診療事業調剤処方費用助成事業」

http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/kurashi/135/189/192/d052402.html


・『北海道苫小牧市』「『無料低額診療事業』利用者の調剤費を助成します」

http://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kenko/chiikifukushi/muryouteigaku.html


・『沖縄県那覇市』「無料定額診療事業調剤処方費事業を開始します!」

http://www.city.naha.okinawa.jp/kakuka/fseisaku/osirase/muteisin.html

(高橋モータース@dcp)