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「国民健康保険」ってそもそも何?受けられる給付は?

2018.06.25

「国民健康保険」ってそもそも何?受けられる給付は?


フリーランス(自営業)の皆さんなどは、公的な医療保険の中の「国民健康保険」に加入しますね。国民健康保険の被保険者数は2016年度で3,013万人(速報値※1)。人口の約24%が国民健康保険に加入していることになります。今回は、「国民健康保険」の基礎知識についてご紹介します。

記事監修


吹田朝子(すいた・ともこ) 先生


『一般社団法人 円流塾』代表理事。CFPR(R)認定者(ファイナンシャルプランナー)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、健康ファイナンシャルプランナー(R)。

一橋大学卒業後、生保会社の企画調査・主計部門を経て1994年より独立。著書多数。


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■「国民健康保険」とは?

公的な医療保険には以下の五つがあります。

1.健康保険

2.国民健康保険

3.共済組合

4.船員保険

5.後期高齢者医療制度

略して「国保(こくほ)」と呼ばれることもある「国民健康保険」の概要をまとめると次のようになります。

●保険者※2:

市区町村(地方自治体)※3、国民健康保険組合


●被保険者:

市区町村に住所があって「上記の『公的な医療保険』の1・3・4・5のどれにも加入していない人」、国民健康保険組合の組合員


●給付の種類

・療養の給付

・入院時食事療養費

・入院時生活療養費

・保険外併用療養費

・療養費

・訪問看護療養費

・特別療養費

・移送費

・高額療養費

・高額介護合算療養費

・出産育児一時金※4

・葬祭費(または葬祭の給付)※4

・傷病手当金※5


●保険料の徴収

・市区町村が保険者の場合:世帯主から徴収

(被保険者ごとに保険料を計算して世帯単位で合算。世帯主が納める)

・国民健康保険組合が保険者の場合:組合員から徴収


地方税法の規定によって、市区町村が保険者の場合には「保険料にかえて『国民健康保険税』を課することができる」ので、国民健康保険の場合、保険料は「保険税」「保険料(税)」と記載されることがあります。受けられる給付内容は、「保険税」でも「保険料」でも基本的には同じです。


●保険料の「内訳」と「計算方法」

保険料(税)の内訳としては、

・医療分(医療給付に充てる分)

・後期高齢者支援金分(後期高齢者の支援金に充てる分)

・介護分(介護給付に充てる分)

となっており、この合計が保険料(税)になります。また、三つの項目ごとに年間に納める金額の上限(これを「賦課限度額」といいます)が決まっています。


「計算方法」は、


・40歳未満

保険料 = 医療分 + 後期高齢者支援金分


・40歳以上65歳未満

保険料 = 医療分 + 後期高齢者支援金分 + 介護分


・65歳以上75歳未満

保険料 = 医療分 + 後期高齢者支援金分

(介護保険料は別途、市区町村の介護保険担当の部署から通知)


というように、被保険者の年齢によって「上記の内訳のどの部分を負担するのか」が分けられています。


さらに、この区分ごとの金額は、以下の四つの項目の組み合わせによって計算され、それらを合計して保険料となります。


・所得割

世帯加入者の所得に応じて計算(所得額 × 料(税)率)


・資産割

世帯加入者の固定資産税額に応じて計算(固定資産税額×料(税)率)


・均等割

世帯の加入者数に応じて計算(加入者数×均等割額)


・平等割

世帯ごとに一定額で計算


これら四つの項目の組み合わせや料率(税率)、賦課限度額はそれぞれの市区町村によって異なっています。つまり、国民健康保険の場合には、同じ世帯であっても納める保険料(税)はそれぞれの市区町村によって違うのです。


自分の住んでいる市区町村の税率については、それぞれのホームページなどで確認してみてください。

まとめだけでは何のことか分からないと思われますので、注意すべきポイントをご紹介しましょう。

■国民健康保険の被保険者は誰?

国民健康保険の被保険者の「上記の『公的な医療保険』の1・3・4・5のどれにも加入していない人」というのが、よく分からないかもしれませんね。被保険者の区別は、


1.健康保険

被保険者:企業に勤務する「サラリーマン(条件を満たす日雇い労働に従事する人も)」


3.共済組合

被保険者:国家公務員・地方公務員・私立学校教職員など


4.船員保険

被保険者:船長、海員、予備船員として船舶所有者に使用される人


5.後期高齢者医療制度

被保険者:75歳以上の人、65歳-74歳の一定の障害があると認定された人


となっていますので、これ以外の全ての人は、自分の住所がある市区町村を保険者とする「国民健康保険」に加入しないといけないのです。


ですから、


・農業・漁業に従事する人

・自営業者、事業主

・会社勤務をリタイアした人

・無職の人


などの皆さんが国民健康保険の被保険者になります。日本は国民皆保険制度ですので「嫌だ」と思っても強制加入で、保険料支払いの義務が生じます。

■「国民健康保険組合」って何?

一般に国民健康保険の保険者は市区町村なのですが、上記のとおり「国民健康保険組合」が保険者になることがあります。


略して「国保組合」と呼ばれることもある「国民健康保険組合」は、国民健康保険に加入義務のある自営業者・事業主の皆さんが集まって設立した、医療保険のための組合です。


地方自治体の知事の許可を得て都道府県ごとに、同業者の国民健康保険組合があります。たとえば、医師の国民健康保険組合では、「北海道医師国民健康保険組合」「青森県医師国民健康保険組合」……という具合です。


地域を限定しない「文芸美術国民健康保険組合」のような国民健康保険組合もあります。文芸・美術・映画・写真などの業種に従事する人を組合員としており、フリーランスのデザイナーなどに注目されています(なお、加入には加盟団体に入会する必要があり、別途入会金も発生します)。


ややこしいのは、企業に勤める会社員向けに「1.健康保険」の保険者として「健康保険組合」(略して「健保組合」)という組合もあることです。こちらは、『健康保険法』を法的根拠とする「健康保険」のための組合。


今回ご紹介している「国民健康保険組合(略して「国保組合」)」は、『国民健康保険法』を法的根拠とする「国民健康保険」のための組合です。


どちらも「公的な医療保険のための保険者」なのですが、根拠となる法律など成り立ちが異なっているのです。

■国民健康保険には「扶養」の概念がない!

サラリーマンの皆さんが加入する「健康保険」と、市区町村の「国民健康保険」の大きな違いは、「被扶養者(扶養されている人・養われている人という意味です)」という考え方がない点です。


「健康保険」の場合には、サラリーマンの夫が加入していると、被扶養者の妻は健康保険の適用を受けることができます。奥さんは保険料を支払う必要はありません。


しかし「国民健康保険」の場合には、被保険者は「夫」「妻」と2人となり、仮に妻が無収入でも、均等割の負担が発生します。保険料はそれぞれに課せられ、その合算分を夫(夫が世帯主の場合)が世帯の保険料として納めるのです。


子供が生まれた場合も同様で、「健康保険」であれば「被扶養者異動届」で子供が加わる手続きをすれば、保険証に子供の名前が入るだけで、子供に保険料が課せられることはありません。


一方、「国民健康保険」の場合には、妻・子供それぞれが被保険者になりますので、夫・妻・子供の3人のそれぞれに課せられる金額を合算し、夫(夫が世帯主の場合)がその世帯の保険料を納めることになります。


ですので、自営業に従事する人で、世帯の人数が多い場合は、国民健康保険の保険料負担はかなり重いものになるでしょう。もし、負担がつらいと思う場合は、前年度の収入と加入者数など一定の基準で保険料が軽減・免除される制度もあります。ただし、その基準は各市区町村によって異なりますので、確認してみてください。


「国民健康保険は高い!」という声は少なくありません。しかし、企業と従業員が保険料負担を折半する「健康保険」と比較すると、被保険者の負担が大きくなってしまうのは仕方がない面もあります。



サラリーマンの皆さんも、会社をリタイア・退職したら、それまでの健康保険から国民健康保険に加入し直すことになります。日本の公的医療保険の一つである「国民健康保険」についても、知っておいたほうが良いのではないでしょうか。


(高橋モータース@dcp)

⇒データ参照元:

・『厚生労働省』「国民健康保険制度の概要」

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/kokumin_nenpou01.pdf


・『東京都福祉保健局』「保険料額について」

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kokuho/aramashi/h29hokenryougaku.html


※1 厚生労働省の資料による。

⇒データ出典:『厚生労働省』「平成28年度国民健康保険(市町村)の財政状況について =速報=」平成30年3月9日

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000153105_1.pdf


※2 「保険者」とは、契約に基づいて保険料(掛け金)を徴収し、給付を行う義務を負う者のことです。保険に加入し、契約に従って保険料(掛け金)を支払い、給付を受ける人のことを「被保険者」といいます。


※3 市区町村の「区」は「特別区」と呼称される東京23区を指します。国民健康保険についての資料で「市町村(特別区を含む)」という表記がされる場合がありますが、これも同様に東京23区のことを指しています。


※4 特別な都合がある場合は「全てまたは一部を行わなくてもよい」ことになっていますので、保険者によって給付の有無・水準が異なります。


※5 「給付を行うことができる」とされているので、保険者によって給付がないことがあります。給付の有無・水準は保険者によって異なります。