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なぜ言葉が分からなくても通じ合えるのか。人類には共通する「表情」がある!?

2018.06.30

なぜ言葉が分からなくても通じ合えるのか。人類には共通する「表情」がある!?


なぜ海外で製作された映画なのに俳優の情動が生き生きと伝わってくるのだろう? なぜ日本の漫画は世界的に受け入れられるのだろう? と、不思議に思ったことはありませんか。この疑問を解くキーは、映画の俳優や漫画のキャラの「表情」にあるようです。今回は「人類に共通する表情」についてご紹介します。

記事監修



矢加部文(やかべ・あや)先生


専門は形成外科、乳腺外科、美容外科、美容皮膚科。長崎大学医学部卒業後、長崎大学形成外科入局。長崎大学病院・長崎医療センター・福岡徳洲会病院で形成外科、ナグモクリニック福岡院勤務福岡大学形成外科 レーザー外来・美容医療担当、メディアージュクリニック勤務を経て、2016年形成外科・美容皮膚科 みやびクリニック 開院。


▼みやびクリニック

http://www.miyabiclinic.net/

■なぜ外国人でも表情は理解できるのか!?

『エロイカより愛をこめて』(作:青池保子先生)という漫画がありますが、この漫画に登場する主人公のひとりがドイツの情報将校という設定です。


その縁もあって青池先生がドイツに行き、日本語版の単行本をドイツ人に見せたところ、本作のことを全く知らなかったのに「この人はこの人のことを愛しているのね」とすぐに見抜いたというエピソードがあります。青池先生の表現力が素晴らしかったのはもちろんですが、なぜこのようなことが起きるのでしょうか?


また、たとえば映画。どの国で作られたかによらず、私たちはスクリーンに映る俳優の感情を理解し、感情移入することができます。たとえ字幕がなくても、その俳優がどのような感情を示しているのかを間違うことはほとんどないでしょう。


そこで、「たとえ人種、文化、言語などが違っても、人類には共通する表情があるのでは?」という疑問が湧きます。


『進化論』で有名なチャールズ・ダーウィンはその可能性に気付き『The Expression of Emotions in Man and Animals.』(1872年)という本で同様の説を提唱しています。人間は祖先から感情表現を受け継ぎ、社会的集団の中でコミュニケーションを活用して生存率を上げてきたというのです。また、ダーウィンは「人間の表情は、自然環境の刺激に順応してきた」としました。


ダーウィンよりもはるか後になって、それを検証した科学者がいます。ポール・エクマン博士です。

■パプアニューギニアまで出かけたポール・エクマン博士

ポール・エクマン博士は、アメリカ人と日本人に表情の写真・映像などを見せて、この表情はどんな感情を表しているかを聞くという実験を行いました。


また、アメリカ人・日本人だけではなく、チリ人、アルゼンチン人、ブラジル人も含めて同様の実験を行いました。すると確かに共通する「特定の感情を表す表情」があったのです。


しかし、それらの国の人たちが同じメディア、たとえばアメリカ映画などを見ることで共通の認識(この表情はこういう感情を表しているのだ、など)になっているだけなのではないか、という反論も成立します。


そこでエクマン博士は、先進国の文化から隔絶したパプアニューギニアの部族を訪れ、同様の実験を行いました。それでもやはり「こういう感情を表している」と認識された表情があったのです。


エクマン博士は、人種、文化、言語などが違っても人類共通の「特定の感情を表す表情」があることを確信します。それは、

・驚き

・恐怖

・嫌悪

・怒り

・幸福

・悲しみ

でした※。相手が人類であれば、これらの感情を表す表情をすれば、それは相手に伝わるのです。


エクマン博士の主張には懐疑的だった科学者たちも、独自に調査を行うことで「表情の万国共通性」について逆に確信が深まるという結果になりました。


現在では、共通性の高い表情の種類が幾つあるか、などには諸説ありますが、少なくとも「人類に共通する『特定の感情を表す表情』がある」ことは定説となっています。


約150年前のダーウィンの主張は正しかったのです。

※ただし、エクマン博士自身の後の研究、またほかの研究者によって人類共通の表情と考えられるものは追加されています。もし興味のある人はエクマン博士の研究、またほかの論文などを参照してください。

(高橋モータース@dcp)