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心霊現象じゃない!? 医学的に見る「金縛り」の仕組み

2018.07.04

心霊現象じゃない!? 医学的に見る「金縛り」の仕組み


主に寝ているときに体が動かなくなる「金縛り」という現象があります。「金縛りは霊的な現象だ」と考える人もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、金縛りを医学的に検証するとどうなるのでしょうか? 今回は「金縛りが起きる原因や対処法」について、医学的視点からご紹介します。

記事監修



渡辺宏行 先生


精神科医。信州大学医学部卒業後、横浜市立大学附属市民総合医療センターを経て医療法人福和会『南横浜さくらクリニック』勤務。日本精神神経学会、日本東洋医学会、医師+(いしぷらす)所属。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/181

■「金縛り」を医学的にいうと?

寝ているときに「意識ははっきりしているのに体が動かせない」という現象を一般的に「金縛り」といいます。医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれるもので、当たり前ですが霊は関係ありません。一般的に金縛りでは以下のような状態になります。

  • 意識はあるが体が自由に動かせない

  • 声を出すことができない

  • 息苦しく感じる

  • 何かが上に乗っているような圧迫感を覚える

  • 何かの気配を感じる

突然このような状態に陥るととても怖い思いをしますが、現在では科学的に説明がつく現象なのです。

■「金縛り」はどのようなときに起きるのか?

金縛りは「レム睡眠」に入っているときに起きるとされています。人間の睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」のふたつに分けられます。レム睡眠は「Rapid Eye Movement」の頭文字を取った略語で、「急速眼球運動」を伴う状態の睡眠のことです。一方のノンレム睡眠は「Non-REM」つまり、急速眼球運動を伴わない睡眠です。


人間が眠りにつくと、まずノンレム睡眠に入っていきます。入眠して最初のノンレム睡眠が最も深い眠りで、眠りの質に大きく関係しています。その後、眠りの浅いレム睡眠に移行します。このノンレム睡眠とレム睡眠は交互に入れ替わって起こり、これが目覚めるまで繰り返されます。レム睡眠、ノンレム睡眠の特徴は以下のとおりです。


●レム睡眠

・眼球が急速に動いている

・体が休息状態にあり、弛緩(しかん)している

・脳と筋肉の情報伝達が遮断されている

・自律神経系が不安定になり、脈拍、呼吸が乱れる


レム睡眠のとき、脳は覚醒時に近い状態で活動しています。このような状態で脳と筋肉との情報伝達が通常どおりに行われていると、寝ている間に体が意図せぬ動きをすることになり、不都合です。このため、脳と筋肉の情報伝達が切断され、脳からの命令は筋肉に伝わらず、外部からの刺激も脳に伝わらないようになっています。


●ノンレム睡眠

・体温、血圧が下がる

・呼吸、脈拍が穏やかになる

・眼球が動いていない


ノンレム睡眠は脳波の状態によって4段階に分けられます(「N1」-「N4」といいます)。このうちN3、N4は最も深い眠りで「徐波睡眠」と呼ばれます。今までは「夢を見るのはレム睡眠のときで、ノンレム睡眠のときには脳が休んでいるためほとんど夢を見ない」というのが定説でしたが、最近の研究ではノンレム睡眠のときにも脳は活動しており、夢を見ることが分かっています。ただ、脳の活動している部位が覚醒時やレム睡眠のときとは異なるため、夢を見てもその内容をほとんど覚えていないといわれます。


●金縛りの正体は?

レム睡眠のときに何かの原因で脳が覚醒しても、筋肉との情報伝達は遮断されておりすぐには通常の状態に戻りません。そのため体が思うように動かせず、感覚もはっきりしないということになるのです。これが、金縛りの正体です。

■「金縛り」になる原因・対策は?

金縛りの原因は、睡眠リズムの乱れによると考えられています。その主な原因は以下のようなものです。

  • 睡眠不足

  • 休日の寝だめ

  • 長すぎる昼寝

  • 時差ぼけ

  • 過剰なストレス

●金縛りになってしまったときの対処法

金縛りになると、突然目が覚めて体が動かないため、驚いてしまいますね。しかし、医学的には生理現象のひとつなので、慌てることはありません。落ち着いて、以下のように対処してみましょう。

  • 目を動かす

  • 指先など、動きやすい部分をゆっくり動かす

  • 声を出そうとしてみる

レム睡眠の状態では、脳と体との情報伝達が切断されているために思いどおりに動かせなくなっています。覚醒状態になれば脳と体の情報伝達が回復し、体も動かせるようになります。

●金縛りを予防するには

金縛りが起こりやすくなる原因は、主に上記の「睡眠リズム」の乱れと考えられています。睡眠リズムを整え、質の高い睡眠を取ることで改善されるでしょう。睡眠リズムを整えるには、以下のような点に注意しましょう。


・就寝時刻、起床時刻を固定する

休みの日にも夜更かしや寝坊をせず、なるべく普段と変わらないリズムで生活するように心掛けましょう。規則正しい生活を送るようになれば、睡眠リズムも改善されます。


・就寝前にはスマホ、パソコンなどを使わない

スマホやパソコンの画面からは強い光が放出されています。強い光を浴びていると脳が覚醒してしまい、眠りの質が低下します。


・就寝前のカフェイン、アルコール摂取を控える

カフェインには覚醒作用や利尿作用があり、就寝前に飲むと睡眠に悪影響を及ぼします。また、体内でアルコールを分解すると「アセトアルデヒド」という物質が発生します。アセトアルデヒドにはレム睡眠を阻害する働きがあり、睡眠の質を低下させます。


・適度な運動をする

日中に適度な運動をすることにより自律神経が整い、就寝時間が近くなれば自然に眠くなります。また、ウォーキングなどのリズミカルな運動をすると「セロトニン」というホルモンの分泌が促進されます。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれており、ストレス解消にもつながります。



金縛りは「霊的な現象」などではありません。医学的には「睡眠障害の一種」で、普通の生理現象のひとつだといえます。睡眠リズムを整えるために規則正しい生活を心掛け、もし金縛りが起きてしまったときは、怖がらずに落ち着いて対処しましょう。


(藤野晶@dcp)