昔から「早起きは三文の徳」「早寝早起き元気な子」などといわれます。早く寝て早く起きることが良いとされているのですが、最近の研究では「できない人もいる」という結果が出ています。今回は「若い世代は早寝早起きに向かない」という話です。
記事監修
渡辺宏行 先生
精神科医。信州大学医学部卒業後、横浜市立大学附属市民総合医療センターを経て医療法人福和会『南横浜さくらクリニック』勤務。日本精神神経学会、日本東洋医学会、医師+(いしぷらす)所属。
▼詳細プロフィール
■「夜型」がピークになる年齢は!?
人間には体内時計が備わっていて、それによって朝起き、夜になると眠くなります。通常は、その人にとっての適正な睡眠時間を確保できるように脳がコントロールしています。
しかし、近年の研究でそのコントロールが年代によって変化することが分かってきました。人間は徐々に「夜型」になっていくのです。「高校生-大学生」のころには最も夜型になります。
睡眠についての専門家である三島和夫先生は、その著作(記事末を参照)の中で夜型化のピークについて、
女性は19.5歳、男性は21歳の大学生で夜型のピークを迎える
と指摘していらっしゃいます。この夜型化によって思春期には夜遅くまで起きていても平気ですし、眠くならないのです。入眠が遅くなりますから、朝学校に行くために起きる時間が小学校のときと同じでも、起きられなくなるというわけです。
夜型化は思春期にピークに達し、以降は年を取るごとに逆に「朝型化」が進行します。60歳ぐらいになると12・13歳のころと同じような睡眠リズムになるようです。
なぜこのような夜型化が進行するのかはまだよく分かっていません。ホルモンの分泌が影響しているのでは、と推測されています。
■「早寝早起き」が無理な人もいる!
というわけで、高校生・大学生には「早寝早起き」が生理的に難しいということになります。
また年齢による夜型化のほかに、そもそも体質が夜型なため早寝早起きに向いていないという人がいます。「成人の3割は夜型」であるといわれているのです。
この体質的に夜型の人も「早寝早起き」は体に負担がかかります。夜型の体質は、体内時計の周期が長いことが原因と推測されています。ただし、その人に必要な睡眠時間が普通の人よりも長い、また低血圧によって覚醒後のパフォーマンスが上がりにくい、といった原因も考えられます。
しかし、早寝早起きに向かない夜型体質の人がある程度いらっしゃるのは確かです。もし自分が朝型か夜型か気になったら、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「朝型夜型質問紙」※に回答してみてください。あなたの体質について判定してくれます。
※国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター「朝型夜型質問紙」
高校生・大学生の年齢で夜型化がピークに達します。決して寝坊を勧めるわけではありませんが、現在その年齢の読者の皆さんは、「無理して早寝早起きをするのは心身に負担をかけるものである」という知識だけは持っておいたほうが良いのではないでしょうか。
(高橋モータース@dcp)
⇒参考文献・引用元:
三島和夫『あなたの睡眠を改善する最新知識 朝型勤務がダメな理由』(日経ナショナルジオグラフィック社),2016年1月26日第1版第1刷(引用は同書P.26より)