卵巣の機能が加齢とともに低下し、月経が止まってしまうことを「閉経」といいます。日本人女性では、閉経の平均年齢は「50歳」。しかし、この平均年齢よりももっと早く閉経を迎えることもあるそう。今回はこの、40歳未満で起こる自然閉経=「早発閉経」についてご紹介します。
記事監修
高橋しづこ先生
産婦人科専門医。1995年、米国オレゴン州私立Reed Collegeを卒業。1997年、東海大学医学部へ入学。同大卒業後、東京大学医学部大学院より医学博士。その後は日赤医療センターや山王メディカルセンターで非常勤医師。女医+(じょいぷらす)所属。
▼詳細プロフィール
■「閉経」って何?
そもそも閉経とは何でしょうか? 『日本産科婦人科学会』によれば、
閉経とは卵巣の活動性が次第に低下し、ついに月経が永久に停止することを言います。一般的には12ヵ月以上月経が来ないと閉経としています。
と説明しています。
閉経になるともう子供を授かることはできませんし、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌もほとんどなくなりますので、女性の心身に大きな影響を与えます。閉経の平均年齢を50歳と上記しましたが、実は閉経年齢は個人差が大きく、早い人では40代前半で迎えたりします。逆に遅い人では50代後半ということもあるのです。
■「早発閉経」は40歳未満で起こる!
「早発閉経」は一般に「40歳未満での自然閉経」と定義されています。卵巣の機能が衰えて排卵しなくなり、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が減少するという、上記の閉経と似た状態に陥ります。
具体的な症例では、たとえば何か卵巣に障害があって手術をした、またがんの化学療法や放射線療法を受けていないのに、
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続発性無月経(月経が始まり、その後止まってしまうこと)
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「卵胞刺激ホルモン」※の分泌量が多い
といった場合には「早発閉経」と診断されます。また、続発性無月経だけではなく「原発性無月経(月経が始まらないこと)」「不妊症」「月経不順」もこの早発閉経の対象となります。赤ちゃんが欲しい人は、無月経、月経不順などがあった場合には、すぐに専門医の診断を受けてください。
■「早発閉経」の原因は?
早発閉経において、「原因がわかるもの」は全体の10-20%です。そのなかで比較的多いのが、
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自己抗体
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自己免疫性
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染色体異常
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遺伝子異常
など。早発閉経の患者を調べたところ、全体の約2割で染色体異常(以下の参考文献より/「60例」について調査しています)が、全体の約4割(同)で自己免疫についての関与が確認されたりしていますが、実際にどのように早発閉経が引き起こされるのかといった点は明確になっていません。
また、代謝性疾患、ウイルスによる感染症、卵巣の腫瘍(その治療)、喫煙・ストレス・不規則な生活なども原因になるといわれていますが、やはりよく分からないのが現状です。
⇒参考文献・引用元:
『日産婦誌54巻9号』「I.レクチャーシリーズ-どうあるべきか21世紀の女性医療-」「6.早発閉経の病態と取り扱い」
■「早発閉経」の治療は? 挙児希望の有無で分かれる
早発閉経の治療ですが、残念ながら現在のところ有効な根本的な治療法はありません。赤ちゃんが欲しい(挙児希望)という場合には、早い段階で排卵誘発剤を使用して排卵を促すことが行われます。排卵がある状態にしなければならないからです。
挙児希望がない場合には、女性ホルモンを補充して規則的な月経周期を維持するようにします。ただし、女性ホルモンのエストロゲンを単独で補充すると子宮内膜がんのリスクが高まります。
ですので、エストロゲンだけでなく、もうひとつの女性ホルモン「プロゲステロン」も同時に補充するのが効果的とされます。このふたつの女性ホルモンを補充する療法を「カウフマン療法」といいます。カウフマン療法を行うと卵胞刺激ホルモンが分泌されませんので、排卵がありません。ですので挙児希望がない場合に行われるのです。
かつては早発閉経が起こるともうリカバリーできないと考えられていましたが、最近では排卵・妊娠・分娩(ぶんべん)が行えた例も報告されています。
女性の皆さんに注意してほしいのは、早発閉経が決してレアケースでないという点です。30歳までで1,000人に1人、40歳までで100人に1人が早発閉経を発症するというデータがあります。読者の皆さんも月経不順などがあったら、すぐに専門医を受診するようにしてください。
※卵胞刺激ホルモンは、脳(の「視床下部」という部位)から分泌されて卵巣に届き、卵胞(卵子になります)の成長を促すホルモンです。この分泌量が多いということは、卵胞刺激ホルモンを多くして卵巣を刺激しないといけないということ。つまり卵巣の機能が低下していることを意味します。
(高橋モータース@dcp)