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誰でも一度は感染する。「RSウイルス」とは?

2018.07.10

誰でも一度は感染する。「RSウイルス」とは?


7月頃から増加傾向がみられる感染症のひとつに「RSウイルス」があります。呼吸器系の感染症で、軽い鼻かぜのような症状の場合もあれば、発熱し、ひどい咳が続く場合もあります。特に乳幼児は症状が重くなるために注意しなければなりません。このように、症状に違いがあるのはなぜなのでしょうか?今回はこの「RSウイルス」について解説します。

記事監修



岡村信良 医師


医療法人小田原博信会 理事長、医学博士-健康検定協会-

■「RSウイルス」には誰でも一度は感染する!

呼吸器にRSウイルスが感染する病気を、「RSウイルス感染症」といいます。例年7月頃から感染者数が増加し、冬に流行のピークを迎えることが多いです。


RSウイルスの特徴は、以下のようなものです。


●2歳までにほぼ100%の人が感染する

生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%の人が、少なくとも一度はRSウイルスに感染するといわれています。感染症によっては、一度感染すると体内に抗体ができて再発しない(とされている)ものもありますが、RSウイルスは何回も感染・発症します。


●初めて発症したときは症状が重い

RSウイルスには、上記のように2歳までにほぼ全ての人が感染します。そして、初めて感染・発症したときは症状が重くなりやすいといわれています。特に生後数カ月までに感染した場合、細気管支炎や肺炎などの重篤な症状を引き起こすことがあります。


RSウイルス感染症は感染を繰り返すうちに耐性が付き、感染・発症したときの症状が軽くなります。このため、成人の場合は一般的な「風邪」と判断してしまうことがあります。

●RSウイルス感染症の症状

RSウイルス感染症は、ウイルスに感染してから2-8日(典型的には4-6日)の潜伏期間の後に発症し、以下のような症状が見られます。

  • 発熱

  • 鼻水

  • 喘鳴(ぜいめい)

  • 呼吸困難

多くの場合それほど重い症状は出ませんが、重症化すると喘鳴や呼吸困難を起こすことがあります。喘鳴とは呼吸時に「ぜいぜい」と音がする症状です。


成人の場合は「感冒様症状」といって一般的な風邪の症状とされる発熱、鼻詰まり、咳などが見られるだけで済むことが多いのですが、RSウイルス感染症の子供を看病する保護者や医療関係者が感染すると症状が重くなることがあります。これは、症状が重い子供によって大量のウイルスにさらされるためと考えられています。

●RSウイルスの感染経路

RSウイルスは以下のような経路によって感染しますが、『厚生労働省』によると「空気感染」するという報告はないとされています。


・感染者の咳やくしゃみによる「飛沫(ひまつ)感染」

・感染している人に直接接触することによる「接触感染」

・感染者が触った物品(ドアノブなど)からの間接的な「接触感染」

●RSウイルスの予防法

RSウイルスは感染力が強いウイルスです。0-1歳児は重症化するリスクがあるため、十分に注意が必要です。RSウイルス感染症には以下のような予防法があります。


・アルコールや塩素系の消毒剤で消毒する

子供が触るおもちゃや手すり、ドアノブなどは、小まめに消毒しましょう。


・手を洗う

RSウイルスが手に付着した場合、30分間は感染力があるとされています。流水・せっけんで小まめに手を洗いましょう。また、アルコール製剤による手指の消毒も効果的です。


・風邪をひいている人にも注意

2歳以上の子供や大人はRSウイルス感染症にかかっても症状が軽く、それと気付かない場合があります。ただの風邪だと思っていた人が実際はRSウイルス感染症だったという可能性もあります。そのような人は極力乳幼児との接触を避けましょう。やむを得ない場合には、マスクを着用し、飛沫感染を起こさないように十分注意してください。


・人の多い場所を避ける

RSウイルスは世界中に広く分布しています。特に流行期とされる10-2月は子供だけではなく大人の感染者も多いと考えられます。乳幼児を人の出入りの多い場所に連れて行くのはできるだけ控えたほうがいいでしょう。


・受動喫煙にも注意

たばこの煙は刺激が強く、特に子供の気道の状態を悪化させます。RSウイルスへの感染リスクが高くなるだけでなく、発症した場合には症状を悪化させてしまう危険があります。


・「パリビズマブ」を投与する

現在のところRSウイルス感染を予防するワクチンはありませんが、「パリビズマブ」という抗体製剤を投与することで、重症化するのを抑える効果が期待できます。ただし、この薬が投与されるのは以下の投与対象の人のみです。

・在胎期間28週以下の早産で、12カ月齢以下の新生児及び乳児

・在胎期間29~35週の早産で、6カ月齢以下の新生児及び乳児

・過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24カ月齢以下の新生児、乳児及び幼児

・24カ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児及び幼児

・24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児※

・24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児※


※本剤の添付文書では、投与に際しては学会等から提唱されているガイドライン等を参考とし、個々の症例ごとに本剤の適用を考慮すること、とされています。なお、パリビズマブ製剤の投与は保険適用となっています。

⇒『厚生労働省』「RSウイルス感染症Q&A(平成26年12月26日)」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html

●RSウイルス感染症の治療

RSウイルス感染症を治療するための特効薬はありません。治療は基本的に対症療法によって行います。咳の対処には気管支を広げる薬、痰(たん)を切りやすくする薬、呼吸器の炎症を抑える薬が使われます。



RSウイルスには、ほとんどの人が子供のころに感染します。「ただの風邪」だと思っている人が実際はRSウイルス感染症だということもあるので、乳幼児とは接触しない・させないように気を付けましょう。乳幼児に症状が見られた場合はすぐに病院に行きましょう。


(藤野晶@dcp)