どんな人にもコンプレックスや悩みってありますよね。そしてそんなときにもらう、「こうすればいいよ」なんて正攻法なアドバイスは逆に心に響かないことも……。そこでこの連載では、毎回さまざまなお悩みをあらゆる分野の専門家や著名人に相談し、一風変わった視点からその解決法を探っていきます。

≪お悩み≫



「今より痩せてモデル体型になりたいけれど、私は食べることが大好き。そのため、いつも食の誘惑に負けてしまいます……。どうすれば煩悩に打ち勝ち、ダイエットを成功させられるでしょうか?」(23歳、会社員)

≪回答≫



「煩悩に打ち勝つことは本能にあらがうレベルで難しいもの。『中道』の考え方をダイエットに取り入れてみて」(光明寺金剛院 南光坊住職 板脇俊匡さん)

少しでも体重を減らして美しくなりたい。それは今の時代、女性の多くが抱く自然な願望かもしれません。けれど、好きなものを我慢できない、飲み会の誘いを断れないといった食への誘惑に負けてしまうのもよくある話です。


「煩悩は人が生まれながらにして持っているもので、それをおさえるのは非常に難しいこと」と話すのは、四国霊場第55番札所「光明寺金剛院 南光坊」で住職を務める板脇俊匡さん。仏門に仕える身として煩悩の断ち方をよく知るであろう板脇さんが、ダイエットに取り入れてみるべきだと提唱する考え方とは……?

■お坊さんでも悩む“煩悩との付き合い方”

お寺の住職といえば仏道修行をおこなう身だけあって、煩悩との付き合い方は百も承知のはず。それだけに、今回の「食への誘惑が断ち切れない」という悩みに対してもサクッと解決策を出してくれそうですが……?


「“煩悩の制御”というのは仏教における一大テーマ。なぜなら仏教の目的とは、修行によって煩悩を断って悟りを得て成仏することだからです。けれど、私も仏道修行においてはいまだ格闘中の身。甘いものの誘惑につい負けてしまうこともしばしばで……」


しょっぱなからまさかのカミングアウト! お坊さんですら煩悩に完全に打ち勝つことはむずかしいようです。でも、そもそも“煩悩”って何なのでしょうか?

■“煩悩”とは私たちが生まれながらにして持っている執着心

「仏教でいう“煩悩”とは『自分や対象に執着すること』です。煩悩はすべての人が生まれながらに持っているもので、突き詰めると生きることに対する激しい欲望ともいえます。生存本能に深く根ざしているだけに、とても厄介なものなんです。『生きたい!』と願う強い気持ちが心を乱し、何かを成し遂げたいという思いを妨げるんです。


ですから、『煩悩の制御=本能の制御』といっても過言ではありません。これは非常に困難なものですよ。本能を制御する簡単な方法があれば私が聞きたいぐらい(笑)」


執着する気持ちは本能レベルのものなので、簡単にはコントロールできないということですね。今回の相談者さんをはじめ、私たちがダイエットを成功させることがいかに大変なのかが少しわかった気がします。


「仏教でいう代表的な煩悩には、『貪』(とん。貪る心)、『瞋』(じん。怒り恨むこと)、『痴』(ち。愚かなこと)の三つがあります。これは私たちを毒す根源であるから『三毒』ともいいます。


ダイエットで考えてみると、とくに『貪』との戦いですよね。ダイエットに成功して痩せるには、おいしいものをたくさん食べたいという“食”を貪り求める心や、できれば運動はしたくない・楽して痩せたいなどという“安逸”を貪る心に打ち勝つことが求められます。こうした心を制御することは簡単にできることではありません」


たしかにダイエットとは、「痩せたい気持ち」と、「でも食べたい」「運動したくない」という気持ちとの葛藤といえます。そしていっときは制御できたとしても、一生続けていくのは並大抵のことではありません。一度ダイエットが成功して痩せても、リバウンドする人は多いものです。


では、私たちはどうやってこの葛藤から抜け出せばよいのでしょうか?


「そこで私からは、『中道(ちゅうどう)』という考え方をダイエットに取り入れることを提案します」

■「中道」の考えをダイエットに取り入れて

中道。初めて耳にする読者の皆さんも多いと思うのですが、中道とは何ですか?


「中道は仏教の根本的立場で、『両極端から離れること』をいいます。極端な食事制限は、体力の低下につながったり栄養の欠如からさまざまな病気を招いたりする可能性があります。いっぽうで、極端な暴飲暴食は肥満、高血圧といった諸病のもとともなります。


この両極端を離れて、どちらにもかたよらないよう自分を節制していくことが『中道』です。たとえば『昨日は食べ過ぎたから、今日は食べる量を抑えておこう!』といった心がけも中道の実践だといえると思います。


スポーツ選手やタレントならいざ知らず、一般人であれば過度に体重を減らしてモデル体型を目指すのではなく、痩せすぎず、太りすぎずのほどほどがよいのではないでしょうか。また『痩せているのが美しい』という美に対する意識も時代により変化するものです」


「逆に考えれば『モデルのように痩せて人からよく見られたい』という思い自体がすでに、自分に執着している煩悩の姿ともいえます。はかない価値観や体重の数字に一喜一憂するよりも、極端にかたよることのない“中道”の心を意識してみてはいかがでしょうか? 結局はそれがダイエットへの近道となるかもしれません」

★今回のアドバイザー



板脇俊匡さん(光明寺金剛院 南光坊住職)

愛媛県今治市在住。平成21年より四国霊場第55番札所「南光坊」住職、平成28年度より四国八十八カ所霊場会理事を務める。趣味は寺社めぐり、将棋観戦。


(取材・執筆/鷺ノ宮やよい 編集/ヒャクマンボルト)


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