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なぜか「自分は病気」だと演出する。ミュンヒハウゼン症候群っていったいなに?

2018.07.09

なぜか「自分は病気」だと演出する。ミュンヒハウゼン症候群っていったいなに?


自分が病気だと思われたくてそのように行動してしまう、という精神疾患(mental disorder)があります。これが「ミュンヒハウゼン症候群」です。今回はこの精神疾患についてご紹介します。

記事監修



今野裕之先生


精神科、心療内科医。日本大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、日本大学医学部附属板橋病院などを経て、現在は美咲クリニック、新宿溝口クリニック勤務(非常勤)。また、2016年よりブレインケアクリニック院長、2018年より日本ブレインケア・認知症予防研究所所長を勤める。

医師+(いしぷらす)所属。


▼ブレインケアクリニック院長ブログ

http://brain-care.jp/blog/

■ミュンヒハウゼン症候群とは?

「虚偽性障害」(factitious disorder)という精神疾患があります(『IDC-10』による:後述)。


虚偽性障害とは、意図的に自分を病気だと主張し、その症状のふりをし、病人の役割をすることで満足を覚える精神疾患です。


この虚偽性障害のタイプのひとつが「ミュンヒハウゼン症候群」(Munchausen's syndrome)です。この精神疾患は1951年にイギリスの医師、リチャード・アッシャーによって発見されました。「ミュンヒハウゼン」は、「ほら吹き男爵」として知られるミュンヒハウゼン男爵から取られています。


あまり良い名称とはいえませんが、その典型的な症状としては以下のようなものが挙げられます。

  • 自分を病気だと繰り返し主張する

  • 症状、兆候を他人に認めさせるため偽装を行う

  • 自傷行為をすることもある

  • 病気の検査を何度も受ける

  • 手術を何度も受けることがある

  • 病人になることに満足を覚える

  • 動機は不明瞭である

また、自分の思うとおりの診断が得られないとよそのお医者さんにかかる、といったことを行うため、同じような


・病院はしご症候群(hospital hopper syndrome)

・医者めぐりをする患者(peregrinating patient)


といった名称の疾患もこの「虚偽性障害」に分類されます。

■精神医学的にはどう定義されている?

精神医学のハンドブックである『ICD-10』では、精神疾患を独自のコードで分類していますが、その中の「F68.1」が「虚偽性障害」です。これに「ミュンヒハウゼン症候群」が含まれるのですが、その定義は以下のようになっています。

F68.1 症状あるいは能力低下の意図的算出あるいは偽装、身体的あるいは心理的なもの(虚偽性障害)


確認された身体的あるいは精神的な障害、疾病あるいは機能不全がないのに、患者は繰り返し、一貫して症状を偽装する。身体症状では自ら切傷やすり傷をつくって出血をさせたり、毒物を自分に注入したりすることさえある。苦痛の模倣や出血があるという主張がきわめて説得的で執拗なため、そのつど所見がないにもかかわらず、いくつもの病院や診療所で繰り返し検査や手術が行われることがある。

 この行動の動機はほとんどいつも不明瞭で、おそらくは内的なものであるが、その状態は病気による行動と病人の役割の障害として最も適切に解釈される。この行動パターンを持つ患者は、通常、パーソナリティおよび対人関係における多数の他の著しい異常の兆候を示す。

(後略)


⇒データ引用元:

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン新訂版』(医学書院)P.232

保険金詐欺のために病気を装うといった、動機が明らかに外側にあって、しかも明らかな「詐病」は、この分類には入りません。また、「風邪をひいたので会社を休みます」みたいな仮病も普通は精神疾患ではありません。


虚偽性障害、またミュンヒハウゼン症候群では、あくまでも動機が内的なものに限られます。病気を装うことによって、

  • 親身に接してもらえる

  • 大事にしてもらえる

  • 注目を浴びることができる

  • 愛情を感じることができる

など、病気であることによって、なんらかのメリットが存在するために病気を装うと考えられています。



(高橋モータース@dcp)