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人はなぜ老いるのか。謎を解く鍵は「命の回数券=テロメア」にある?

2018.07.12

人はなぜ老いるのか。謎を解く鍵は「命の回数券=テロメア」にある?


「人間はなぜ老いるのか?」「人間はなぜ死ぬのか」は大きな謎です。そのなかでひとつ明らかになっているのが、私たちのDNAには「テロメア(テロメアDNA)」という部分があるということ。これが老化や寿命に関係しているようなのです。今回はこの、「テロメア」についてご紹介します。

記事監修



今野裕之先生


精神科、心療内科医。日本大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、日本大学医学部附属板橋病院などを経て、現在は美咲クリニック、新宿溝口クリニック勤務(非常勤)。また、2016年よりブレインケアクリニック院長、2018年より日本ブレインケア・認知症予防研究所所長を勤める。

医師+(いしぷらす)所属。


▼ブレインケアクリニック院長ブログ

http://brain-care.jp/blog/

■「DNA」には遺伝情報が書き込まれています

私たちの染色体の中には、皆さんも学校で習った二重らせん構造のDNAがあります。私たちの設計図ともいわれるとおり、DNAにはその人の形質を決定する遺伝情報が書き込まれています。


ちょっと難しい話になりますが、遺伝情報は、

  • アデニン(A)

  • グアニン(G)

  • シトシン(C)

  • チミン(T)

という「塩基」と呼ばれる四つの物質の並びによって表現されています。たとえば「…CGGTTTA…」というふうに塩基が並び、これを「塩基配列」と呼びます。DNAは「はしご」のようで、はしごの桁(けた)に当たる1本1本に塩基がずらっと並んでいます。


塩基の「A(アデニン)」と「T(チミン)」、「グアニン(G)」と「シトシン(C)」は結合する性質があるので、お互いに向かい合った桁同士は「A-T(T-A)」「G-C(C-G)」が結合しています。これが、はしごでたとえるなら「段」の部分です。塩基がカップリングされているので、これを「塩基対」といいます。


このようにできている「はしご」をひねってらせん状にしたのが二重らせんといわれるDNAの構造なのです。


この「桁」部分を「1本の鎖」にたとえて、二重らせん構造のDNAを「二本鎖DNA」と呼んだりします。

■テロメアは「細胞分裂の回数券」

DNAの末端部分に「テロメアDNA」があります。テロメアDNAももちろん4種類の塩基の配列ですが、「5'-TTAGGG-3'」の繰り返しの配列からなっていて、長さは1-2万塩基対ほどです。


興味深いことに、細胞分裂を行うたびにこのテロメアDNAが短くなっていくのです。そしてテロメアDNAの長さが5,000塩基対程度になると、細胞はそれ以上分裂しなくなります。


つまりテロメアDNAは細胞分裂ができる(する)回数を制限していると考えられるのです。そのためテロメアDNAはよく「回数券」にたとえられます。分裂のたびに券をもいで渡し、なくなったら「もうできません」というわけです。


また、テロメアDNAのさらに端、最末端部分は塩基対になっていなくて、まるでしっぽのように桁の片方が長く突き出ています。つまり、鎖のたとえでいえばその部分だけが「一本鎖」になっているのです。この一本鎖部分は300塩基ほどの短いものなのですが、「グアニン(G)」が多いため「Gテール」と呼ばれています。


しかしこの短いGテールが染色体の安定性に大きな影響を与えていると考えられています。実際に、加齢によるとされる疾患で「Gテールの短縮」が見られるのです。そのため、Gテールの長さが短くなることで染色体が不安定になり、疾患が発生するのではないか、という推測がされています。



テロメアDNAはその長さによって細胞分裂の回数をカウントし停止させる役割をしているので、つまりは老化・寿命に大きく関わっているのではないかと考えられています。またテロメアDNA・Gテールの長さは加齢性の疾患に関係しているとして世界中の研究者がその因果関係について調べています。私たちが長生きするための「大きな秘密」がそこにあるのかもしれません。

⇒参考文献:

日本抗加齢医学会 専門医・指導士認定委員会 編集『アンチエイジング医学の基礎と臨床 第3版』(株式会社メジカルビュー社)2017年7月1日第3版第2刷発行

(高橋モータース@dcp)