高血圧と言えば、年齢とともに気になる病気というイメージがあります。臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長は、「若い人の高血圧が増えています。高血圧は生活習慣病のひとつであり、ほかのさまざまな病気に悪い影響をもたらします。改善が難しい病気と言えるので、若いうちに予防法を実践しておきましょう」と言います。そこで、高血圧になりやすい体質や習慣、予防法について尋ねました。

取材協力・監修

正木初美氏


日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。内科、リハビリテーション科とともに、漢方治療、更年期外来、禁煙外来を行っている。


正木クリニック:大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9

http://www.masaki-clinic.info/

■高血圧とは、血管に常に負担がかかっている状態

――まず、高血圧とは、どのような状態を言うのかを教えてください。


正木医師 血圧とは、心臓から送り出された血液が血管を流れるときに血管の内壁にかかる圧力のことです。これが、正常値よりも慢性的に高い状態を「高血圧」と診断します。


日本高血圧学会のガイドラインでは、病院や健診施設などで測定した血圧が、上(収縮期血圧)が140mmHg(水銀柱ミリメートル) 以上、または下(拡張期血圧)が90mmHg以上を高血圧としています。


――血圧の「上」と「下」という言葉をよく耳にします。実際には何を表すのでしょうか。


正木医師 数値の高い方が「上」で、心臓が収縮して全身に血液を送り出すときの圧力です。また、数値の低い方が「下」で、心臓が拡張して全身から血液が戻ってくるときの圧力です。


――高血圧を放置していると、何が問題になるのでしょうか。


正木医師 血管がたくさんある脳や心臓、また細い血管が多い腎臓や目は、影響を受けやすくなります。高血圧だと血管に常に負担がかかるので、血管の内側の壁が傷付く、また、柔軟性がなくなって硬くなります。


すると、血管が硬くなって血液の流れが滞る「動脈硬化」が進行している恐れがあります。動脈硬化は、脳梗塞(こうそく)や脳出血などの脳卒中、心筋梗塞や狭心症などの心疾患、慢性腎臓病などの原因となります。


「上が高いけれど、下が低いから大丈夫」と思う人もいますが、どちらか一方が高くても高血圧です。上だけが高い場合は動脈硬化が進行している恐れがあります。

■塩分過剰、肥満、運動不足、ストレスは高血圧のもと

――高血圧になりやすい体質や習慣について教えてください。


正木医師 血圧を上げる複数の要因が重なって、高血圧につながります。具体的には次の7つの要因が考えられます。


(1)塩分の取り過ぎ

塩分(ナトリウム)を取り過ぎると、血液中の塩分濃度を保つために体内の水分が血液中に集まります。すると、血液の量が増えて、血圧が上がります。


(2)肥満 

心臓から送られる血液の量は体重が増えると増加するため、肥満の体型では高血圧になります。また、内臓脂肪の脂肪組織からは、血圧を上げるホルモンが分泌されることが分かっています。


(3)運動不足

肥満になりやすいだけでなく、心臓や肺の機能が低下してスムーズに血液が循環できなくなり、血圧が上がります。


(4)体質

高血圧になりやすい体質は、親から受け継ぎやすいと言われています。これは遺伝的な要素に加えて、食生活や生活習慣などが似るためとも考えられています。


(5)喫煙 

タバコの有害物質で血管の細胞を傷付けやすく、また、タバコに含まれるニコチンには血圧を上昇させる作用があります。


(6)ストレス

イライラ、ウツウツ、緊張や興奮でストレスがたまると、自律神経のバランスが乱れて血圧が上昇しやすくなります。


(7)加齢

年齢を重ねるごとに血管が老化し、動脈硬化が促進します。


――高血圧を予防するためには、どうすればいいのでしょうか。


正木医師 先の「高血圧になりやすい習慣」をやめる、あるいは逆の習慣を実践しましょう。まずは、減塩を心がけてください。WHO(世界保健機関)が推奨する1日の塩分摂取量は5グラム未満ですが、日本での平均的な塩分摂取量は約10グラムと報告されています。


――やはり、食事を見直すことが重要なのでしょうか。


正木医師 食事の見直しは最重要で、薄味に慣れることが減塩の第一歩です。しょう油やソースなど塩分が多く含まれる調味料での味付けを控え、コンブやカツオなど出汁の旨み、レモンやすだちなどの酸味、唐辛子やカレー粉などの香辛料、ユズやシソなどの香りを利用してください。


外食や加工食品は塩分が多く使われる傾向にあるため、食べ過ぎや調味料をかけて食べるのは避けましょう。


また、余分な塩分を排出する働きのある「カリウム」や、その働きを助ける「マグネシウム」が含まれる食品をいっしょに取りましょう。カリウムは野菜類や果実類、海藻類、豆類などに、マグネシウムはナッツ類や海藻類、野菜類などに豊富に含まれています。


さらに、高血圧は生活習慣病と言われる通り、毎日の生活の習慣と深く関係する病気です。若い世代の人は気付いていないだけで、30歳前後から顕著になることが多いのです。暴飲暴食、間食や夜食を避けて太り過ぎないように気を付ける、適度な運動をする、禁煙する、睡眠をとってストレスをコントロールするなどして、若いうちから高血圧を予防する意識を高めましょう。


高血圧はほかの病気をも悪化させる病気ということ、また、外食や調味料たっぷりの食生活や運動不足、ストレスなど、心当たりがある生活習慣がずらっと並び、ドキリとします。いますぐ日々の生活を見直し、高血圧を予防する方法を実践していきたいものです。


(取材・文 岩田なつき/ユンブル)