良質なタンパク質は身体にいいと言いますが、実のところ「現代人は不足している」ことが多いのだとか。その理由は? 効率よくタンパク質を摂取するには、いったいどうしたらいいのでしょうか? 今回は、分子栄養学や予防医療に精通している黒田愛美医師に「タンパク質を効率よく摂取する方法」を伺いました。
取材協力・監修
黒田愛美先生
クリントジュネスbyクリントエグゼクリニック
杉山産婦人科 卵子アンチエイジング外来 ドクター
*
2014年11月よりクリントエグゼクリニックに勤務。食事やサプリメントなどの分子栄養学やホルモンなどの予防医療を中心とした「内面からのアプローチ」と、レーザー、ヒアルロン酸、ボトックスなどの「外からのアプローチ」の両方を手掛ける医者として活躍している。
▼黒田愛美オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/kurodaaimi131/
▼クリントジュネスbyクリントエグゼクリニック
▼詳細プロフィール
■現代人に「タンパク質が足りない」理由とは?
―現代人にタンパク質が不足している人が多いのはなぜなのでしょうか?
黒田先生:
食生活自体に問題があることはもちろんですが、腸内環境が良くない人も多いと考えられます。腸内環境が整っていないと、せっかく良質なタンパク質を摂っても消化吸収がうまくいきません。また、そもそも日本人は胃酸と消化酵素が少ない民族なので、特にお肉を食べると、胸やけを起こしたり腸の炎症を起こしたりしがちな人も多いでしょう。
腸が荒れるとミトコンドリアの回路がうまく作動しなくなるため、体調不良が肌荒れなどの症状を引き起こすことになります。また、タンパク質が足りないと、ミトコンドリアの回路をまわすための酵素が作れません。
■タンパク質を効率的に摂取するには?
―どうすればそうした悪循環を解消できますか?
黒田先生:
まずは腸内環境を整えることが大切ですが、同時に、「タンパク質を効率よく消化・吸収すること」を意識することも大切です。具体的な方法としては以下の4つが挙げられます。
「よく噛んで食べる」は一般的にもよく言われることですが、実際に健康な胃腸を維持するためにとても大切なことです。よく噛まずに飲み込んでしまうクセがある人は、「より小さい形状にしたお肉をいただく」を実践するのもいいですね。
「ボーンブロス」は、牛や鶏、魚の骨と野菜を長時間煮込んで採った出汁で、栄養がぎっしり詰まっているため、『黄金のエキス』ともいわれています。スープ状なので胃腸に負担がかからず、体内の消化酵素も代謝酵素も温存できる分、ミトコンドリア機能が高まるし、パフォーマンスも向上します。
「プロテインを摂取する」場合に実践してほしいのは、数種類のプロテインをローテーションすることです。プロテインには、ホエイプロテイン、カゼインプロテイン、ソイ(大豆)プロテインなどのオーソドックスなものから、ヘンププロテイン、玄米プロテイン、ナッツプロテインなど様々な種類のものがありますが、同じ種類のものをとり続けると、アレルギー発症のリスク、腸の炎症のリスクが高まるからです。
たとえば、ホエイプロテインは、遅延型アレルギーの原因物質として約27.9%もの数字を示しています(ちなみに、カゼインもホエイと同じく牛乳のタンパク質が原料なので注意が必要です)。
また、ソイプロテインは大豆から作られていますが、大豆に含まれるサポニンとレクチンというタンパクも、体内で分解されにくい構造であるため、腸の炎症につながる場合があります。
こうした理由からローテーションをおすすめしていますが、「プロテインではなくアミノ酸を直接とる」のもまた一手です。アミノ酸は、たとえば肝機能がよくない人などは医療処方してもらうこともできますが、市販のアミノ酸サプリメントやドリンクもあります。
「消化酵素をとる」に関しては、お肉など胃腸に負担がかかる食事をいただく機会があれば、食前に飲むのがいいですね。胃腸が弱いなら毎日飲むのもおすすめです。わたしが内服しているのはMetagenics社の『スペクトラザイム(※1)』という消化酵素ですが、そのほかに『タフマック(※2)』などもあるので、消化力を高めたい人は利用してみてもいいかもしれませんね。
※1、2 いずれもクリニックで処方を受けて購入してください。
―ありがとうございました。
肌荒れや体調不良が続いている人はタンパク質不足の可能性も否めません。さっそく今日から、タンパク質を効率よく消化・吸収することを意識してみてくださいね。
(取材・文 松本玲子)