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「子宮が下がる」ってどういうこと?子宮下垂の原因と症状

2018.08.13

「子宮が下がる」ってどういうこと?子宮下垂の原因と症状


年齢を重ねるにつれ、体の生理機能は低下します。筋肉や靱帯(じんたい)などの体を支える組織も同様に衰えてくるため、これらに支えられてきた臓器の位置が下がることが起きます。女性の生殖器では「子宮が下がってくる」という現象が見られます。これはどのような症状を引き起こすのでしょうか?

記事監修

巷岡彩子(つじおか・あやこ)先生


産婦人科専門医。医学博士。都内の大学病院やクリニックでの勤務を経て、現在、不妊治療専門の産婦人科クリニックにて勤務。ママドクターとして育児や家事と仕事を両立しながら活躍中。女医+(じょいぷらす)所属。

■「子宮」は靱帯などによって支えられている

子宮は、骨盤の中央、やや前に傾いて屈曲した状態で、靱帯や支持組織※1によって固定されています。この靱帯は非常に強靱(きょうじん)な線維組織です。臓器を支えるために、建築物の梁(はり)のように巡らされています。

■出産・加齢によって靱帯は緩む

年齢を重ねると徐々に靱帯が緩んでくるようになります。特に出産(経膣分娩)を経た女性はこの靱帯に負荷がかかっていたため、より傷つき緩みやすくなります。


妊娠中に子宮を支えている靱帯のひとつ「円靱帯」が痛むことがありますが、これは赤ちゃんが成長により子宮も増大し、靱帯が引っ張られるからです。


出産の際は赤ちゃんが産道を通ることで、円靱帯だけではなく子宮を支えている靱帯・支持組織に大きな負荷がかかります。よって出産回数の多い女性ほど、靱帯は傷つき緩みやすくなるのです。

■靱帯が緩むと子宮が下がる

靱帯が緩むと子宮が下がってきます。子宮が下がり膣内におりてきている状態を「子宮下垂」といいます※2。また子宮がさらに下がり膣外にまで出てしまった状態を「子宮脱」と呼びます。※3。


これらは靱帯が緩んだり、弱くなったりで子宮を支え切れなくなることで起こりますので、妊娠・出産を多く経験した女性、高齢の女性に多く見られます。


子宮下垂の場合には、

・下腹部の違和感/圧迫感

・尿漏れ/尿失禁


子宮脱の場合には、

・脱出した子宮による外陰部の不快感、おりものの増加や出血 

・頻尿

・排尿困難


といった症状が現れます。また、子宮ではなく、周囲の臓器も一緒に脱出することもあり、それぞれ「膣脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」と呼びます。総称として「骨盤臓器脱」という言い方が一般的になっています。

■子宮が下がってきた場合の治療法

子宮下垂の治療には「ペッサリー挿入法」があります。リング状のペッサリーという器具を膣内に入れ、子宮が下がるのを防止するのです。ただし、脱出は収まっても(腹圧性の)尿失禁がひどくなることがあります。経過観察も含めて医師と相談しながら行うのが重要です。


それでも下垂が継続する場合、または出血や不快感等の症状が強い場合には手術を行います。子宮を温存する・しない、性交渉を望む・望まない、等で、術式の選択が変わっています。また、膣式の手術、腹腔鏡手術等、様々な方法があり、メリット、及びデメリットも含めて担当の医師と十分に相談するのが良いでしょう。


もし、この先赤ちゃんを産むことがない(患者さんに挙児希望がない)のであれば、子宮を摘出するのもひとつの方法です。その際には周囲の靭帯の補強も同時に行います。また性交渉の希望のない女性には、膣閉鎖術を行うこともあります。


「挙児希望がある」「子宮を温存する」のであれば、膣壁を縫い縮めて子宮が下がるのを食い止める手術が行われます。また、弱くなった支持組織をポリプロピレンのメッシュに置き換えるという術式が行われています(Tension-free Vaginal Mesh:略称TVM手術)。膣式だけでなく、腹腔鏡での手術も行われるようになってきています(Laparoscopic Sacrocolpopexy: 略称 SLC) 。


年を取ると体の機能が衰えてきますが、女性の場合には子宮が下がるという現象も起こるのです。子宮下垂、子宮脱は普段の生活にも支障が出る可能性が高いので、気になる症状があれば、早めに専門医の診察を受けるようにしてください。


※1子宮体部を左右の前側方から支持する「子宮円靱帯」、子宮頸(けい)部・膣上部から骨盤壁に至って支持する「基靱帯」「膀胱子宮靱帯」「仙骨子宮靱帯」があります。


※2正確には、「子宮下垂」は外子宮口が両坐骨棘(ざこつきょく)を結ぶ線より下降した場合をいいます。


※3正確には、「子宮脱」は子宮の一部または全部が腟入り口より外に下垂したことをいいます。


(高橋モータース@dcp)