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「睡眠時無呼吸症候群」とは?危険性とセルフチェック方法

2017.06.22

「睡眠時無呼吸症候群」とは?危険性とセルフチェック方法


近年、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SASと略されます)の危険性について取り上げられることが多くなっています。「大きないびきをかくんでしょ」といった軽い認識かもしれませんが、この睡眠時無呼吸症候群、実は一般の理解よりもずっと怖い病気なのです。


『御茶ノ水呼吸ケアクリニック』理事長・院長の村田朗医師にお話を伺いました。村田先生は睡眠時無呼吸症候群の治療について長い経験を持っていらっしゃいます。

取材協力・監修


村田朗医師


1983年、日本医科大学卒業。医学博士。日本内科学会認定内科医。日本呼吸器学会専門医・指導医。日本睡眠学会会員。2003年、日本医科大学准教授、『日本医科大学呼吸ケアクリニック』副所長などを経て、現在は『医療法人財団 日睡会』理事長、『御茶ノ水呼吸ケアクリニック』院長。


著書:『ぐっすり眠れる本・快眠力』(青空出版)、『COPDの早期発見と治し方』(主婦と生活社)、『ナースのための聴診器の聴き方・使い方』(総合医学書社)ほか


『御茶ノ水呼吸ケアクリニック』

https://www.sas-care.jp/

■睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?

まず、睡眠時無呼吸症候群がどんな病気かを見てみましょう。村田先生に伺ったところ、

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

一晩(7時間)の睡眠中に無呼吸数と低呼吸数が1時間に5回以上起こる状態で、その結果、日中の眠気などの種々の症状を呈する疾患


と定義されているとのことです。


・寝ている間に10秒以上も呼吸が止まる「無呼吸」

・気道の空気の流れが10秒以上、50%以上悪くなる「低呼吸」


が睡眠中に繰り返し起こります。大きないびきをかくのは、空気の通りが悪くなっている証拠なのです。睡眠時無呼吸症候群になると十分な睡眠が取れないため、


・日中の居眠りが多くなる

・起床時に頭痛が起こる

・夜中にトイレに何回も起きる


といった症状が特徴的に現れます。

■睡眠時無呼吸症候群の一番の問題点とは?

睡眠時無呼吸症候群の問題点について村田先生に伺いました。


――睡眠時無呼吸症候群を軽く考えないほうが良いのでしょうか?


村田先生 睡眠時無呼吸症候群の一番の問題点は、呼吸が止まることによって酸素が全身にいかなくなることです。たとえば、息を止めて我慢比べをすると、血液中の酸素飽和度が96とか95でもう苦しいわけです。


ところが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんを計測すると、もちろん一瞬ですけれども、無呼吸時にアンデス山脈に登ったくらいの70-80%にまで落ちることがあるのです。


――ええっ!そこまで下がるんですか。


村田先生 はい。体にいいわけないですよね。で、苦しいから頭を起こして(意識が戻り)呼吸を再開させるんです。で、眠るとまた無呼吸・低呼吸状態に陥る。また起きる。これを繰り返しているので深い睡眠が取れないのです。


呼吸がきちんと行われていないので、二酸化炭素が排出できず、これが起床時の頭痛の原因になったりします。また低酸素状態が繰り返されると狭心症の発作が起きたり、夜間の不整脈(心房細動)が起きたりします。


――寝ている間に起こるのが恐ろしいですね。


村田先生 寝ている間に死んでしまう、というのもあり得るのですよ。呼吸が自然にできなくて低酸素状態になるというのは危機的な状況を引き起こすのです。

【睡眠時無呼吸症候群が引き起こす重篤な病気】

  • 高血圧症

  • 糖尿病

  • 高脂血症

上記の3つの病気から動脈硬化が進行すると……


・不整脈

・狭心症

・心筋梗塞

・脳卒中


を引き起こす可能性があります。


――こうしてお話を伺うと、「いびきが大きい病気」という軽いイメージを持っている人が多いかもしれませんが、それは甘い考えですね。


村田先生 睡眠時無呼吸症候群⇒高血圧症・糖尿病・高脂血症⇒動脈硬化⇒心筋梗塞・脳梗塞というように、次々とステップを踏んで症状が重篤になっていく可能性があるわけです。いってみればドミノ倒しですね。この点をもっと理解していただきたいと思います。

■なぜ睡眠時無呼吸症候群になるの?

睡眠時無呼吸症候群になってしまう原因とは何でしょうか?村田先生に伺ったところ、それには「構造的原因」と「機能的原因」があるそうです。


  • 睡眠時無呼吸症候群の「構造的要因」

・日本人特有の頭蓋骨の形態的特徴(上下に長く、前後に短いため気道径が狭い)

・首回りの脂肪沈着

・扁桃肥大

・小顎症

・舌の付け根や軟口蓋が気道へ落ち込んでいる

・舌が大きい

・鼻に構造的な問題がある(鼻すじのわん曲など)ため口呼吸になっている


  • 睡眠時無呼吸症候群の「機能的要因」

・加齢による気道周囲開大筋の筋力低下

・疲労・飲酒・睡眠薬による筋緊張感の低下


このように気道が狭くなるような要因があると、やはり睡眠時無呼吸症候群になりやすいのです。また、最初に挙がっていますが、日本人は「平たい顔」という特徴があり、この頭蓋骨の形状がそもそも睡眠時無呼吸症候群になりやすいのだそうです。


ただし、村田先生によると「欧米と比較して日本人はまだ患者数が少ない」とのこと。それは「欧米のようにひどい肥満の人が多くないから」だそうです。


睡眠時無呼吸症候群といえば、「太っている人がいびきをかいているイメージ」があるかもしれませんが、実は痩せている人でもなるのです。それは、顎(あご)が小さいという構造的要因のせいです。実際、歯を矯正する場合、奥歯を4本抜かないと、歯がきれいに並べないくらい顎の骨が小さいのです。

■治療を受けるタイミングは?

睡眠時無呼吸症候群の治療はどのように受けるのが良いのでしょうか。村田先生に伺いました。


――隣で寝ているパートナーがいれば、「いびきが大きい」と指摘されたりして病院に行くきっかけになると思うのですが。ひとり暮らしの場合など、なかなか気付きにくいかもしれません。自分が「睡眠時無呼吸症候群かも?」と気付く方法はありますか?


村田先生 そうですね、もし確かめたかったら、枕元に機材を置いて一晩録音してみるのはどうでしょうか。スマホに録音アプリがあるなら、それを使ってみるといいでしょう。再生して簡単に確認できますね。


また、


・寝ている最中に何度も起きてしまう

・眠りが浅い感じがずっとある

・起きたときに頭痛がある

・昼間に居眠りしてしまう


といった自覚症状がある場合には、専門医を受診するのがいいでしょう。


――たとえば村田先生にかかると、睡眠時無呼吸症候群かどうかはすぐ分かりますか?


村田先生 分かりますよ。検査の方法は決まっているんです。


1.簡易検査で睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングを行う

2.PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査で確定診断を行う


という順番です。簡易検査は、動脈内の酸素飽和度を計測する「パルスオキシメーター」という装置を使います。先ほど申し上げたとおり、睡眠時無呼吸症候群の場合、無呼吸状態になって血液中の酸素飽和度がドンと落ちますから、それで判断できるわけです。


――PSG検査とはどのようなものですか?


村田先生 PSG検査は、眠っている間の「脳波」「呼吸運動」「心電図」「いびき音」「血中酸素飽和度」を計測して、総合的に睡眠時無呼吸症候群かどうかを判定する検査です。いきなりPSG検査をやっちゃいけないんですよ。簡易検査で判定された場合はPSG検査に進みます。


――費用が気になるのですが、保険は効きますか?


村田先生 睡眠時無呼吸症候群のこれらの検査は全て保険適用になります。また、睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、その治療も保険適用になります。安心してください(笑)。


――読者にアドバイスがあればお願いいたします。


村田先生 最近では、最近といっても10年以上前から言われていたのですが、睡眠時無呼吸症候群が緑内障を引き起こすことも分かってきました。上でも触れましたが、睡眠時無呼吸症候群は重篤な病気への引き金になります。つまり、睡眠時無呼吸症候群は全身疾患に関係しているのです。


――「ドミノ倒し」ですね。


村田先生 よくメタボリックの深刻さを説明するのに「肥満⇒高血圧症・糖尿病・高脂血症⇒動脈硬化による合併症……」といったドミノ図が引かれますが、睡眠時無呼吸症候群の場合も同様に、それが原因でより深刻な事態に、ということが往々にしてあるのです。


メタボリック・ドミノなんて言葉もあるぐらいですが、睡眠時無呼吸症候群の場合には、


太っていなくても、痩せていても同じように重篤な病気になってしまう可能性がある


のです。ですから、もし睡眠時無呼吸症候群であるなら、できるだけ早く治療を受けたほうが良いのです。


――ありがとうございました。



睡眠時無呼吸症候群の検査、治療に保険が適用されるとは、筆者は知りませんでした。この病気が日本で広く知られるようになったのは2013年以降といわれます。しかし、すでにその治療が保険適用になっているのは、睡眠時無呼吸症候群がいかに深刻なもので、また国民の健康に大きな影響を与えるかを行政が理解している、ということでしょう。


村田先生のアドバイスにあったとおり、睡眠時無呼吸症候群が疑われるのであれば、重篤な事態にならないうちに、早期発見、治療するのが良いでしょう。


(高橋モータース@dcp)