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【第20回】彼女の「嫌い」なところ:失恋して辛いです

2018.08.17

【第20回】彼女の「嫌い」なところ:失恋して辛いです


付き合っていた彼氏に振られて、毎日辛いです。もう二度と、あんなに素敵な人には出会えないと思ってしまいます。彼にはもう新しい彼女がいます。もう忘れるべきなのでしょうか。失恋をどう乗り越えたら良いですか。



本連載も、なんともう20回を迎える(嬉しい!)。毎月細々とどこかの誰かの悩みに答えているわけだけれど、「これはどうしたらいいですか」「あれはどう思いますか」という声が後を絶たない。


その中でも多いのが、失恋の悩みだ。

いや、悩みというより“叫び”に近い。辛くて仕方がなくなって誰でも良いから聞いてくれ! と思う夜に、わたしにメッセージが届くらしい。


たしかに、失恋は辛い。


片思いが実らなかったり付き合っていた人に振られたりすれば当然だけれど、“振る側”も辛い。自分のことを好きでいてくれる人を自ら手放すわけだから、(相手と真剣に向き合っていればいるほど)やっぱり痛みが伴う。

恋を失った時の心の穴は、さながらブラックホール。空虚な心には、何もかもが吸い込まれていく。楽しさも、嬉しさも、前向きな気持ちも全部。


失恋したときのことは、よく覚えている。

「あれ? 振られてしまった?」という驚きが最初の感想だった。驚きと(悲しみからくる)怒りとが混ざり合って、もはや混乱して、振られた当日はまだ我慢出来た。辛かったのは、翌朝からだ。薄暗い部屋でゆっくり目を開けた時の、「夢だったらよかったのに」というあの気持ち。今日から、わたしは、ひとり。これまでだって本当はひとりだったくせに、圧倒的に孤独だった。


最初のころは怒りに満ちて、「いや、それはこうでしょう」とか「そんなこと言ったらあなただって」とか何度も脳内で繰り返し、時間が経つとそれを負け惜しみのようにメールしてしまったり、かと思えば急に「でもあなたと逢えてよかったです」みたいなポエムのようなものを送りつけてしまったりした。でも結局、いろんな手を尽くしても返ってこないメールを見て、なにもかもを後悔したっけ。どんな理由であれ、別れたからには彼の心はもうここにはない。そんなことを改めて思い知った。


失恋を癒してくれる別の男性と遊ぼうか、と思うときもあったけれど、そんなことをしても虚しさだけが募るのは、最初から分かっている。時間薬という言葉も知っている。それでもこの瞬間、この辛さをどうすればいいのだろう。さみしさで身体がねじ切れて、散り散りになってしまいそうだった。


……わかるよ、わかる。失恋は、本当に辛いよね。

わかったうえでこう答えたい。


「大丈夫、その時間もいつか必ず過ぎるから」。


喪失感も、必ず癒える。いや、癒えてしまうと言ってもいい。あの甘美な時間も、思い出したくても思い出せなくなる。だから今はその辛さを味わって味わって、味わいつくすのが最善のような気がする。


「彼のことを忘れるべきでしょうか?」とも聞かれるのだけれど、忘れる必要なんてない。そもそも忘れようと思っても忘れられないし、忘れたくないと思っても忘れてしまう。


きっと忘れられないうちは、忘れないことが必要なのだ。悲しさが癒えないうちは、まだ悲しみが必要なのと同じように。


わたしはそう思ってからは、無理に強がるのをやめた。もういっそ、潔く「振られちゃったけど、好きだったなぁ」と思うようにしていた。そうして悲しみをじんわり、しっかり味わった。あんな男クソだった、と思うよりもずっとスカッとした。





こういうこともよく聞かれる。


「彼に連絡したくなってしまいます」とか「よりを戻したいのですが、どうしたらいいですか?」とか、そういう類のもの。


大体の場合、連絡をしたところで事態がよくなることはないし、「やっぱりお前しかいない!」なんて元サヤに戻るようなことはない(喧嘩の勢いで別れてしまったのなら話は別)。だから当然、連絡をせずに寂しい夜はさっさと眠るのが一番だけど、それでも、連絡したくなってどうしようもなくなってしまうなら、連絡してしまえばいい。もっと傷つくかもしれないけれど、押さえ込んだ気持ちはどんどん大きくなって「あのとき連絡をしていたら?」という未練に変わっていってしまう。


わたしは、何度でも連絡をした。

無理を言って少しだけ会ってもらったりもした。それでもっと傷ついたり悲しい思いをしたりして、「本当に、私たちが一緒に進む未来はないのだな」と、本当に心の奥の奥の奥のほうからようやく理解したとき、二度目の失恋をして、やっと前に進むことができた。心の底から「もう無理ね」とわかるようになるからだろうか、吹っ切れてからはあれだけしつこく悪あがきしたとは思えないほどにけろっとできる。


思い切りダサくなって、すがったり、泣いたりわめいたりしよう。そもそも恋愛なんて格好悪いものなのだし、どうして別れた後ばかり美しくあろうとするのだろう? 「もう本当に無理だ」とわかるまで、あがく。あがききったら、そのあとはもう「見返したい」などと思わないことだ。


見返したいという気持ちは、いつまでもその人に縛られていることと変わらない。なにより、昔の恋人に「見返されたな〜!」と思ったことなんてあるだろうか? わたしには、ない。もうとっくに他の誰かを好きになっていて、昔の人が魅力的になっていようが大成功していようが、3分で忘れてしまう。


過去の誰かのために綺麗になろうとか思わないで、未来の幸せのために綺麗になってほしい。いつかあなたを本当に愛してくれる誰かのために、いつか心の底から好きになれる誰かのために、綺麗になる。そんな風に気持ちを持っていってほしい。



長々書いてしまったけれど、最後に一番大事なことを言わせてくれ。


とにかく、「わたしは今よりも幸せになる」と誓ってほしいのだ。


どれだけ彼が素敵だったとしても、どれだけ美しい恋愛をしたとしても、終わりが来てしまったということは何かうまくいかなかった理由があるわけだ。あなたにとって、もっと素敵な相手が他にいるという証拠。思い出は美化しすぎないで、あの人より素敵な人はいないという呪いを自分でかけないで。


恋愛の別れは、今よりももっと幸せになるためにある。

今は悲しくて世界中が「最悪」で埋め尽くされているだろうけれど、そういう時だからこそ何度でもつぶやいてほしい。信じきってほしい。


「わたしは、あなたは、今より幸せになる」


それだけ信じていられたら、あなたは絶対大丈夫です。


(ライター/さえり 写真/インディ 編集/サカイエヒタ)

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