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漢方専門医に聞く。更年期の不調に漢方薬は相性がいい?

2018.08.20

漢方専門医に聞く。更年期の不調に漢方薬は相性がいい?


「更年期」は誰もが通る道と理解はしていても、いざさまざまな症状が一度に現われたり、不調が次々と変化したりと、受けとめることが難しくて仕事や家事がつらくなる女性は多いのではないでしょうか。


「身体的に、精神的にと幅広い不調を伴う更年期障害のケアには、心身全体のバランスの乱れだととらえる漢方の考え方が相性がよいことがあります」と話すのは、漢方専門医で臨床内科専門医、また消化器内視鏡専門医でもある吉田裕彦医師。そこで、漢方では更年期障害をどのように考え、対応するのかについて聞いてみました。

協力・監修


吉田裕彦氏


臨床内科専門医。消化器内視鏡専門医。漢方専門医。糖尿病療養指導医。大阪府内科医会理事。八尾市医師会副会長。医療法人朋侑(ほうゆう)会・吉田クリニック院長。


医療法人朋侑会・吉田クリニック:大阪府八尾市山本高安町2-1-3

■更年期の症状は複雑で「不定愁訴」と呼ばれる

はじめに吉田医師は、更年期の不調に対する西洋医学でのとらえかたについて、

「閉経を迎える前後5年間を更年期とし、その時期に現れるさまざまな不調を更年期障害と呼んでいます。おもな原因は、卵巣の機能の低下によって女性ホルモンの分泌が減ることと考えられています」と説明します。


次に、女性ホルモンの働きについて、こう続けます。


「排卵を促す、乳房、子宮などを発達させるといった女性特有の働きをはじめ、自律神経のバランスを整える、血液中のコレステロールをする、骨量の増加に関わる、皮膚(ふ)や髪、また、脳の働きを活発にするなど、幅広く心身の健康を保つ役割を担っています」(吉田医師)


そういった働きがある女性ホルモンの量が減ると、当然、不調も複雑に現れそうです。


「症状は、ホットフラッシュと呼ばれる急なほてり、めまい、立ちくらみ、発汗、不眠、便秘、頭痛、肩こり、腰痛、月経トラブル、耳鳴り、イライラ、憂うつ、精神不安など、非常に多岐にわたります。現れ方や強弱も個人によって大きな差がみられます。これを『不定愁訴(ふていしゅうそ)』と呼びますが、さまざまな不調を訴えても、病院での検査ではとくに異常がないことが多いのも特徴のひとつです。


西洋医学では、女性ホルモンの補充療法をする、また、一つひとつの不調に対して薬を処方するなどします。一方、漢方薬の場合は、体質や体力、体格に応じながら、一つの薬で複数の症状に対応するため、不定愁訴のケアに相性がよいとも言えるでしょう」と吉田医師。

■「気・血(けつ)・水(すい)」の循環のバランスが乱れている

不定愁訴のさまざまなつらい症状に対する、漢方でのとらえ方について、

「漢方では、ヒトの心身は、『気(き)、血(けつ)、水(すい)』と呼ぶ3つの要素がバランスよく循環することで健康が保たれると考えます。そして、この循環のバランスが乱れると、不定愁訴が現れるととらえるわけです」と説明する吉田医師は、それぞれの要素を次のように整理します。

  • 『気』……生きるエネルギーや自律神経の働き。

    気が足りない、または過剰、うまく循環しないと、のぼせ、イライラや憂うつ、疲労感、だるさ、頭重感、便秘、不眠、発汗、動悸(どうき)などが現れます。

  • 『血(けつ)』……全身の臓器や組織に栄養を運ぶ血流、循環の働き。

    巡りが悪いと、貧血、めまい、月経トラブル、便秘、皮膚の乾燥などが現れます。

  • 『水(すい)』……血液以外の水分や胃液、涙など体液全般の循環の働き。

    不足したり、どこかに偏ったりすると、めまいやむくみなどが現われます。

■ホットフラッシュは余剰の熱が上に行くことで起こる

次に吉田医師は、更年期の不調でよくみられる、急な多量の発汗、のぼせを伴うホットフラッシュについて、こう説明をします。


「『血』を全身に滞りなく循環させる『気』の働きが十分ではないと、余分な熱が生まれます。熱は上に行く性質があるため、首から上に症状が現れるととらえます」


また、漢方医学の古典には、女性は7年ごとに節目があり、心身に変化が現われると記述されています。


「それによれば、28歳をピークに、35歳、42歳で心身の変わり目を迎えるとされます。はるか昔より、ちょうど現代で言う更年期から、加齢現象に備える時期だとされていたようです」(吉田医師)

■漢方薬は、体力、体質、体格に応じて選ぶ


そして、漢方薬を用いる際の大きな特徴として吉田医師は、「個人に合った選択」の重要性を挙げます。


「同じ症状であっても、漢方薬を選ぶときに欠かせないのは、本人の体力や体質、体格です。市販薬のパッケージには、ほとんど『比較的体力がある人』とか『胃腸が弱い人』といった、向く人の特徴が付記されています。それらの注意をよく読んで、自分に合った薬を選び取りましょう。


次に吉田医師に、更年期に対して、よく使われる漢方薬を挙げてもらいました。市販もされています。


・加味逍遥散(かみしょうようさん)

体力は中等度以下。のぼせ感があり、便秘傾向の人の肩こり、疲労感、精神不安、イライラ、不眠、月経トラブルなどがある場合に。


・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

比較的体力はある。のぼせと足の冷えある人の肩こり、頭重、めまいなどがある場合に。


・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

体力は虚弱。冷え症で貧血の傾向があって、疲労しやすい人のむくみ、足腰の冷え症、めまい、立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛などがある場合に。


・温経湯(うんけいとう)

体力は中等度以下。手足がほてり、唇がかわく人の不眠、不安、足腰の冷え、皮膚のあれなどがある場合に。


温清飲(うんせいいん)

体力は中等度。皮膚がかさかさして色つやが悪い人ののぼせや神経症などがある場合に。


・五積散(ごしゃくさん)

体力中等度またはやや虚弱。冷えがある人の腰痛、神経痛、関節痛、頭痛などがある場合に。


吉田医師は漢方薬の選択や服用について、「迷った場合、自分で選べない場合は、遠慮せずに薬局の薬剤師に相談してください。また、自分の体質や体力をつかめない、症状の説明がつきにくい場合などは、漢方薬を処方する内科や婦人科、心療内科、漢方専門医らをホームページなどで探して受診しましょう。


2週間程度をめどに服用しても、効果が現われない場合は、自分の体質に合っていない、あるいはほかの病気が隠れている可能性がありますので、医療機関を受診してください」とアドバイスを加えます。


「何となくつらい」、「いろいろな症状に悩まされる」など、不調にとらえどころがないときには、漢方が味方となるかもしれません。上手に使って、更年期をできるだけ軽やかに過ごしたいものです。


取材・文 ふくいみちこ・藤井 空 / ユンブル