職場ではバリバリ働き、家庭でも良き妻・良き母であろうと頑張る女性は少なくありません。しかし、勤め人・妻・母という自分の役割を完璧にこなそうとして心に無理がかかり、「自分って何だろう」などと抑うつ状態に陥ることがあります。今回は、特にキャリア女性に気を付けてほしい「スーパーウーマン症候群」を解説します。
記事監修
福田敬子 先生
精神科医。都内メンタルクリニック勤務。早稲田大学卒業、同大学院修士課程修了。カリフォルニア大学バークレー校留学、金融機関勤務ののち、山口大学医学部卒業。東京都立松沢病院、日本医科大学付属病院精神神経科などを経て、現職。
女医+(じょいぷらす)所属。
■「スーパーウーマン症候群」とは?
スーパーウーマン症候群は、30代のキャリア女性に多いとされ、
仕事、良き母、良き妻など、自分に求められるものを完璧にこなそうとして疲れてしまった状態
を一般にこう呼びます。職場・家庭で働き過ぎて、心身共に疲れてしまうのです。燃え尽き状態ともいえますし、環境への過剰な適応に伴う障害とも考えられます。
主な症状としては、
・抑うつ状態
・不安
・イライラする/気分の落ち込み
・疲労、倦怠(けんたい)感
・集中力の低下/やる気の低下
・目まい、頭痛、肩凝り、下痢(げり)
・食欲の低下/過食症状
などが現れます。食欲が低下して何も食べたくないといった症状がある一方で、逆に食べ過ぎるという「過食症状」が現れることもあります。これは、不安や抑うつ状態を解消するための反応と考えられるのです。
■「スーパーウーマン症候群」の治療は?
環境ストレスと、「完璧にこなさなければならない」という自分の思い込み(これも一種のストレスです)が原因と考えられますので、これらを軽減することが治療のキーになります。
ですから、周囲の人がその女性の頑張りや苦しみを理解し、ストレス軽減を手助けすることが重要です。特に、家庭のパートナーである夫の理解と援助が必要なのです。
厄介なのは、自分に課すことでのストレスです。どんなに周囲が「そんなに頑張らなくてもいいんですよ」「あなたは十分立派ですよ」「少し休んだほうがいいですよ」などと声を掛けても、本人が自分の頑張りを認めて休息しなければストレスは減りません。
最悪なのは「気遣いでそう言っているだけだ」などと本人が曲解し、さらに「自分はもっと頑張らないと!」と思い込んでしまうことです。このようなケースでは抑うつ状態がさらに増進する可能性があります。
スーパーウーマン症候群に必要なのは「休息」です。
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仕事の一部を人に振る
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家事の一部を夫に振る
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子供にも何か手伝ってもらう
などを行い、自分の役割を軽減してみましょう。言葉は悪いですが、「手抜きもまた良し」という心理状態になることでストレスは軽減され、抑うつ状態から抜け出しやすくなります。
ただし、それができない女性も中にはいらっしゃいます。自分の仕事を人に振ることに何か罪悪感のようなものを感じてしまうのです。それまで育ってきた環境、与えられた教育がその人の心理に大きな影響を与えていますから、自分ではどうしても抜け出せない場合には、精神科などで専門医からアドバイスを受けるのがよいでしょう。
■「スーパーウーマン症候群」の予防
とにかく頑張り屋さんの女性は要注意です。頼りにされると自分のキャパシティー以上に頑張ってしまう人は、スーパーウーマン症候群になりやすいといわれています。
・人に甘えることが苦手
・責任感が強い
・人の頼みを断れない
といった特徴がある人は、責任を背負い過ぎることに注意しましょう。全てを完璧にする必要はないのです。あなたの心が苦しくなってきたら、遠慮せず上司・同僚・部下・夫・親など、周囲の人に相談し、ストレスをためないようにしましょう。それが抑うつ状態に陥らないための重要なポイントです。
何事においても完璧を期す女性が陥りがちな「スーパーウーマン症候群」。「頑張り過ぎないこと」が一番ですが、スーパーウーマン症候群になってしまう女性はそれができないことも。「手抜き」というと聞こえは悪いかもしれませんが、何事もほどほどにしておくのが心身の健康のため。仕事も家事も、肩の力を抜き、リラックスして取り組み、時にサボってみるのもいいのでは?
(高橋モータース@dcp)