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においで感じる「好き」には「フェロモン」が影響している!?

2018.08.31

においで感じる「好き」には「フェロモン」が影響している!?


男性の注目を集めるような魅力を持った女性を「フェロモンが出ている」などと言うことがありますが、フェロモンは一般に「におい物質」ともいわれる化学物質。人間が異性を選ぶときにも、フェロモンが影響しているという話があります。

記事監修


藤野智哉先生


精神神経科医。秋田大学医学部卒業後、愛知県にて初期研修終了。

現在は愛知県にて某大学付属病院精神科勤務をしつつ某美容皮膚クリニックの外来も担当しています。

医師+(いしぷらす)所属。


▼インスタグラム

http://www.instagram.com/fujinofujino


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/281

■そもそも「フェロモン」って何?

「フェロモン」というのは、動物や微生物などが情報伝達のために分泌する物質です。その物質を感知するための「受容体」と呼ばれる、いわばその物質専用の窓口が備わっていて、そこにフェロモンが届くと、あらかじめ決められていたとおりの発育・行動の変化が促されるのです。


有名な例では、アリの分泌するフェロモンがあります。アリは自分たちが通る道にフェロモンを分泌し、その物質があるところを歩くようになっているので巣まで迷いません。


また、フェロモンには「性フェロモン」と呼ばれるものがあります。メスが性フェロモンを分泌し、それを感知したオスがその物質をもとにメスを探すという、交尾行動を促すためのものです。

■マウスによる実験では……

メスのマウスに、つがいになるオスのマウスを何匹か与えてみます。メスのマウスはどうやって交配相手のオスを選択するのでしょうか?


全ての哺乳類は、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)と呼ばれる遺伝子を持っています。MHCは免疫系に重要な役割を果たすものなのですが、マウスを使った実験をしたところ、

マウスは自分とは異なったMHC遺伝子を持つ個体を選択するということが判明しました[1]。遺伝的に遠い相手を選択し交配することは、違った形質を持つ子供を生み出すための重要なポイントです。また、別の実験では視覚に優れていないマウスが、生存競争上、非常に重要な点についての情報を、におい物質・フェロモンによって得ていることも判明しています [2]。

[1] Yamazaki, K., Boyse, E. A., MikC, V., Thaler, H. T.,Mathieson, B. J., Abbott, J., Boyse, J., Zayas, Z. A. &Thomas, 1,. 1976 Control of mating preference in mice bygenes in the major histocompatibility complex. J.exfi. Med.144, 1324-1335.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2190468/pdf/je14451324.pdf


[2]Yamazaki, K., Yamaguchi, M., Baranoski, L., Bard, J., Boyse, E. A. & Thomas, 1,. 1979 Recognition among mice. Evidence from the use of a Y-maze differentially scented by congenic mice of different major histocompatibility types. J. exp. Med. 150, 755-760.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2185685/pdf/je1504755.pdf

■人間の場合でもフェロモンは効果あり!?


では、人間はどうなのでしょうか?


実は、人間の鼻にも、マウスがフェロモンの信号伝達に使うのと同じような受容体が発見されています。人間の嗅覚は、ほかの哺乳類に比べて非常に鈍感であるため、この受容体が本当に機能しているのかについてはまだよく分かっていません。


しかし、フェロモンに関する実験では非常に興味深いことが分かっています。これはベルン大学の研究です[3]。

●男性・女性のMHC遺伝子をあらかじめ測定しておく

●男性は汗を吸着するよう綿のTシャツを渡され、それを着て生活する

●Tシャツを回収して、女性にTシャツの脇の下のにおいを嗅いでもらう

●女性に好みのにおいを判定してもらう

結果、女性は「自分とは似ていないMHC遺伝子を持つ男性が着ていたTシャツ」を選びました。つまり私たち人間にも、マウスと同じように「配偶者を選択するのにフェロモンを利用するプログラム」が働いている可能性があるわけです。


しかし「フェロモンが何かの信号で、情報伝達を行っていること」は確かでも、それがどのように人間の行動に影響を与えているのか分かっていないという事実があるのも確か。


今後、フェロモンの情報伝達に関する新たな研究結果が出るまでは、「このフェロモン香水をつければ異性からモテモテ!」といったアイテムには振り回されないようにしてほしいですね。

[3]「MHC-Dependent Mate Preferences in Humans」

http://www.coherer.org/pub/mhc.pdf


⇒参考文献:『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』(原題『INCOGNITO The Secret Lives of the Brain』)著:デイヴィッド・イーグルマン/訳:大田直子,株式会社早川書房,2017年3月25日二刷

(高橋モータース@dcp)