化粧品や乳液などのスキンケア化粧品によく書かれている「レチノール」という成分名。このレチノールが何なのか分からないまま使用している人も多いのではないでしょうか。
今回は、30代以降の女性にこそ使ってほしい化粧品成分「レチノール」についてご紹介したいと思います。
1.レチノールとは?
レチノールは別名、ビタミンAとよばれる脂溶性(油にとけやすい)ビタミンの一種です。しわなどでお悩みの方に人気の化粧品成分で、エイジングケア化粧品に多く使われています。
2017年2月には、資生堂が日本で初めて純粋レチノール(資生堂独自のレチノールの呼び方)による「しわを改善する」効果を厚生労働省から認められたこともあり※1(SHISEIDOニュースリリースより引用 )、注目を集めています。
2.成分の特徴と役割
レチノールが含まれる化粧品の多くは、「しわ」「ニキビ」「乾燥による肌あれ」といった肌トラブルを抱えている方に向けた商品です。肌トラブルごとのレチノールの役割をみてみましょう。
◆しわ
純粋レチノールによる「しわを改善」する効果を認められた資生堂はこのように説明しています。
レチノールはヒトの表皮角化細胞(ひょうひかくかさいぼう)※2でヒアルロン酸の産生を促進します。ヒアルロン酸は水分保持や皮膚の弾力性の維持などに関与し、また加齢とともに減少することが知られている重要な成分です。レチノールはヒアルロン酸の産生を増加させ皮膚に柔軟性をあたえて、しわを改善します。※1(SHISEIDOニュースリリースより引用 )
※2 皮膚の一番外側をおおっている表皮で4つの層からなり、分裂しながら皮膚表面に移動していく細胞のこと
◆ニキビ
レチノールには、表皮角化細胞※2の増殖を促進し、角質を薄くはがれやすくする効果があるため、肌のターンオーバーを促しニキビなどの肌トラブルの改善に役立ちます。
◆乾燥による肌あれ
レチノールによって、肌の水分やヒアルロン酸が増えて肌がやわらかく保たれ、乾燥による肌あれを防ぐことができます。
3.使い方
レチノールはメイクアップやヘアケア、リップクリームなどにも用いられる化粧品成分ですが、大半はスキンケアに使われています。油分に溶けやすく水分にはほとんど溶けない性質から、スキンケアのなかでも油分が多く含まれているクリームや美容液として使用するのがおすすめです。化粧品のなかでは目もとクリームが人気です。
また、レチノールはビタミンなので、サプリメントとしてからだの内側からもケアすることができます。レチノールを取り入れることによって、真皮(皮膚の一番内側)にあるコラーゲンの産生を促進する効果が期待できるのです。
4.使用上の注意
レチノールは、熱(温度や湿度)、光(紫外線)、空気(酸素)に弱く不安定で、人によっては刺激を感じる成分のため、レチノールを使用する際は決められた使用方法をしっかり守り、適切な方法で保存することが大切です。「酢酸レチノール」や「パルミチン酸レチノール」といった、レチノールをより安定化させ低刺激にしたものもあり、これらも化粧品成分として使われています。
ちなみに、酢酸レチノールとパルミチン酸レチノールとでは、パルミチン酸レチノールの方が低刺激です。はじめてレチノールが含まれる化粧品を使う際は、パルミチン酸レチノールを使用したものから試してみるといいかもしれません。
また、美容皮膚科でニキビ治療などに使われる医薬品の「レチノイン酸」はレチノール以上に効果を発揮してくれますが、効果があるだけに刺激もより強いので使用する際は注意が必要です。サプリメントでレチノールを取り入れる場合は、必ず摂取量を守ってください。過剰摂取をすると、肌が乾燥しかゆくなることがあります。
〈使用する際に注意すること〉
・まずは、目立たない部分に試す
・光(紫外線)に弱いので夜に使用する
※昼に使用する場合は、使用後に日焼け止め(紫外線防止剤)なども塗るとよい
・はじめは2日おきなど間隔をおいて使用し、徐々に間隔を短くして慣らしていく
・使用期間、使用量を必ず守る
・異常を感じたらすぐに使用をやめる
〈保存方法〉
・高温多湿を避け、日のあたらない涼しい場所で保管する
・使用ごとにフタをしっかり閉める
5.レチノールが含まれている商品を手に入れるには?
スキンケアの参考にできそうな商品をいくつか紹介します。
しわ改善の効果を認められた純粋レチノール配合の目もとクリーム。
成分が劣化しないように工夫した特殊容器で安全性を高めています。※1
〈社名〉資生堂
〈ブランド名〉エリクシール
〈商品名〉・エリクシールシュペリエル エンリッチド リンクルクリーム
※成分名はレチノール
DHCのレチノタイムシリーズは、全製品にレチノールとトコフェロール(ビタミンE)を結合して作られた「レチノイン酸トコフェリル」が配合されています。
〈社名〉DHC
〈ブランド名〉レチノタイム
〈商品名〉・クレンジング&マッサージクリーム EX
・ウォッシングフォーム EX
・リンクルローション EX
・リンクルミルク EX
・リンクルパワーセラム EX
・リフトクリーム EX
・リンクルリップエッセンス EX
※成分名はレチノイン酸トコフェリル
6.豆知識
アメリカでは、レチノイン酸がニキビや光老化※3の治療薬として使用されていて、30年もの使用実績があります。そのため、日本では医療機関でしか処方されないレチノイン酸がアメリカでは簡単に購入できます。ただ、「4.使用上の注意」でも述べたように、レチノイン酸は効果が高い半面、刺激も強く配合量も多い場合があるので、注意しながら使用しましょう。
※3 光(紫外線)によってしみ、たるみなどができ肌が老化すること
刺激が強いということから、前から化粧品成分として使用されていたにも関わらずあまり人気のなかったレチノール。しかし、資生堂の純粋レチノールを皮切りに注目度が高まり新しいレチノール化粧品が次々と誕生しています。レチノールを上手に使いこなして、年齢に負けない肌を手に入れてくださいね。
(爪肌育成マエストロ/小齋飛鳥)
【参考文献】
・新化粧品ハンドブック / 日光ケミカルズ(2006)
・セルフフェイスケアトレンドデータ2012‐2013 / 富士経済(2012)
【引用】※①
・SHISEIDOニュースリリースより引用
https://www.shiseidogroup.jp/news/detail.html?n=00000000002135&?rt_bt=menu-rd-bana_001