女性は中高年になると骨の病気に注意しなければいけません。「骨粗しょう症」はその代表ですが、そのほかに「膝関節の特発性骨壊死(えし)」という疾患もよく知られています。今回はこの「特発性骨壊死」をご紹介します。
■「膝関節の特発性骨壊死」とは?
「膝関節の特発性骨壊死」は、ある日突然激しい痛みが膝に生じる疾患です。この疾患の痛みは1-2日で急激に強くなるのが特徴で安静時にも痛みがあり、夜も痛み、眠れないほどになります。
膝関節の軟骨の下に「軟骨下骨(かこつ)」という骨があり、軟骨を支える働きをしています。特発性骨壊死では、この軟骨下骨が壊死してしまうのです。「壊死」というのは「組織が死んでしまうこと」です。壊死による痛みですので、中高年に多い「変形性膝関節症」※とは異なり、膝を動かさず安静にしていても痛みます。
この膝関節の特発性骨壊死は50~60代以上で多く発症します。また女性に多いのが特徴です。
※変形性膝関節症は、軟骨がすり減ったり、なくなったりして膝が変形する病気です。軟骨がすり減り関節が変形することによって歩きにくくなり、痛みや腫れが症状として現れます。
■「特発性骨壊死」の原因は?
特発性骨壊死の原因はまだよく分かっていません。そもそも「特発性」という言葉は「原因が不明で発症する疾患」に使われるものなのです。ですのではっきりした誘因がなく発生する場合があります。ただし、加齢によって軟骨のクッション機能が低下し、骨がもろくなることで「小さな骨折」が生じ、それが原因になっているのではないか、という指摘があります。この場合は軽微な外傷に引き続いて発症します。
一方で、ほかの病気の治療のために投与された「ステロイド剤」によって骨壊死が生じることもあります。この場合は、特発性ではなく「二次性骨壊死」と呼ばれます。
■[特発性骨壊死」の治療法は?
特発性骨壊死は、比較的急速に膝に激痛が走るといった発症の仕方をします。厄介なのは、中高年に多い変形性膝関節症との鑑別診断です。特発性骨壊死の場合、発症後1-2カ月の間はレントゲンでは軟骨下骨に変化が見られないため、「変形性膝関節症」と診断されてしまうことがあります。早期の確定診断のためには「MRI検査」が必要なのです。
膝関節の特発性骨壊死の治療では、まず激しい痛みを抑えるため、
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安静にすること
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鎮痛剤の投与
などの対症療法を行います。その上で、
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T型杖、松葉杖の使用
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足底板(靴の中に入れる装具)の使用
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膝サポーターの使用
などを行って膝への負担を軽減します。
壊死した範囲が小さい場合には自然に治ることもありますが、痛みが継続、もしくは壊死部が大きく関節の骨に陥没が生じた場合「手術」が必要になることもあります。一般的な手術としては、以下のものがあります。
・脛骨(けいこつ)骨切り術
膝関節の近くで脛骨を切って角度を変え、適切な膝の角度に変形を矯正する手術です。
・人工膝関節全置換術
膝関節を人工膝関節に置き換える手術です。人工膝関節の材質は、金属・セラミック・ポリエチレンとさまざまです。膝関節の一部だけを補強する「人工膝関節単顆(たんか)置換術」という術式もあります。
手術を受けた場合には、手術後にリハビリを行い筋肉を強くするよう努めなければなりません。また一定期間ごとに医師の診察を受け、経過観察を続けることも重要です。
女性に多いとされる「特発性骨壊死」ですが、原因がよく分からないため予防も難しいのが現状です。ただ、加齢とともに骨や筋肉が弱っていくことは確かで、それを防ぐためにはカルシウムやタンパク質を十分に取ることが重要です。バランス良く栄養を取れる食生活を心掛け、激しすぎない適度な運動を行うようにしましょう。
(高橋モータース@dcp)