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アルツハイマーにも有力?脳と「匂い」には深い関係があった

2018.10.23

アルツハイマーにも有力?脳と「匂い」には深い関係があった


人間の五感は、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚ですね。五感それぞれで感知する情報を使って人間は生きています。しかし、「嗅覚」だけは脳への情報伝達が少し変わっているのです。そのため「匂い」には特別な効果があると考えられています。

今回は、「匂い」と脳の関係性についてご紹介していきます。

記事監修



中村由紀 先生


皮膚科医。埼玉医科大学医学部医学科を卒業。以降、総合病院にて皮膚科医として入院外来を担当。

アロマテラピーやハーブなどの代替医療にも興味をもち、医療とのコラボレーションを目指している。2012年椿の女王。

女医+(じょいぷらす)所属。

■嗅覚と記憶の結び付きは強い!


ある匂いを嗅いで、突然記憶がよみがえったということはないでしょうか? このようなことが起こる理由は、「嗅覚」の特殊な情報伝達経路にあると考えられています。


鼻で感知された匂いの情報は、「嗅神経(きゅうしんけい)を通り、「嗅球(きゅうきゅう)」という、匂いを分析する器官に送られます。この嗅球は大脳辺縁系の一部である「扁桃体(へんとうたい)」「海馬(かいば)」という感情や記憶に関与する部位と結びついているのです。


五感の中で唯一嗅覚だけが、視床を経由することなく脳の中枢部と直結しています。この情報伝達経路のため、匂いは記憶と結びつきやすいのです。実験によれば、匂いをかいで思い出す記憶は、幼少期のものが多い傾向があります。


またfMRI(MRIという体の内部を画像化する画像検査を利用し、脳や脊髄の活動を視覚化する方法のひとつ)を使った観測によって、匂いによって活性化する脳の部位は、幼少期の記憶なら「眼窩(がんか)前頭皮質」、大人になってからの記憶なら「左下前頭回」と分かっています。「眼窩前頭皮質」は知覚と結びついています。そのため、匂いによって幼少期の記憶を思い出すと、それに付随した「知覚」が鮮明によみがえると考えられるのです。

■「香りが脳に与える影響」の実験


脳の老化による認知機能の低下は大きな問題です。しかし、嗅覚による刺激が認知機能を改善するという興味深い研究があります。


これは神保大樹博士(トリノ大学医学部客員教授)らチームの「Effect of aromatherapy on patients with Alzheimer's disease.(アルツハイマー病患者におけるアロマテラピーの効果の検討)」という研究(2010年)です。


この研究によると、


・午前中に「レモン」と「ローズマリーカンファー」、午後に「オレンジスイート」と「ラベンダー」をブレンドしたアロマを嗅いでもらったところ、アルツハイマー病の認知障害が有意に緩和された


と報告されています。また神保博士の研究によれば、「レモン、グレープフルーツ、レモングラスといった柑橘(かんきつ)系成分を嗅ぐと、前頭前野近傍が活性化されること」が示唆されています。

⇒論文:『Wiley Online Library』「Effect of aromatherapy on patients with Alzheimer's disease」

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1479-8301.2009.00299.x


⇒参考文献:日本抗加齢医学会 専門医・指導士認定委員会『アンチエイジング医学の基礎と臨床 第3版』(株式会社メジカルビュー)2017年7月1日第3版第2刷発行,pp321-322

情報伝達経路が特殊になっているためなのか、匂いと脳の認知には強い関連性があるようです。また、一般に女性のほうが匂いに敏感といわれますので、匂いによって昔の記憶を思い出すのも女性のほうが多いかもしれません。あなたは、匂いで昔のことを思い出した経験がありますか? もしあるとしたらそれはどんな記憶でしょうか?


(高橋モータース@dcp)