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夢は意味がない現象?睡眠時に脳で起きていることを解説

2018.10.25

夢は意味がない現象?睡眠時に脳で起きていることを解説


夢という現象は昔から多くの人を惹きつけてきました。平安時代のころは、ある人が登場する夢を見た場合、その登場した人の魂が抜け出て自分の夢に出ている、つまり夢に出てきた人は自分のことを恋い慕っているという解釈をしていたようです。現代では脳や神経の研究が盛んになり、夢という現象はかなり解明されてきました。この記事では「夢」について掘り下げていきましょう。

夢のメカニズム


そもそも人はどのような機序で夢を見るのでしょうか。


睡眠とは、眼球が急速に動いている状態で眠るレム睡眠と、そのような状態ではないノンレム睡眠に分けられ、これらが交互に繰り返されます。夢の内容を思い出せるときというのは、レム睡眠の最中に覚醒したときだといわれています。裏を返せば、起きた時に「覚えている夢」と「覚えていない夢」を見ているということです。「昨日夢を見た記憶はあるけど内容は忘れてしまった」という経験のある方もいらっしゃるでしょう。


ではレム睡眠中に何が起きているのか?MRIなどを用いた脳の血流量測定技術により、レム睡眠時には


①脳の視覚野の血流が増大し

②前頭葉(総合的な判断を担う部位)への血流は低下し

③扁桃体(情動を担う)への血流は増大する


ということがわかってきました。この事実は、私たちには夢が映像として見え(①)、内容にとりとめがなく理不尽であり(②)、恐怖などの感情を揺さぶられるような(③)内容であることが多いことと整合性がとれています。

夢を見ることの意義

それでは、夢を見ることには何の意味があるのでしょうか。


夢はレム睡眠時に見るということを先述しました。実はこのレム睡眠時には、脳は覚醒中と同等あるいはそれを超えるほどの活動状態にあるそうなのです。そしてこれだけの活動状態にあるなかで、脳は記憶を整理し、強化していると考えられています。この働きは、勉強したあとに寝て、一晩明けた後に学習内容を思い出すことができたり、あるいは夢に何年も会っていなくてほぼ忘れていた知人が出てきた、といった出来事と関係しています。


夢は、こうしたレム睡眠時の記憶の整理時の「ノイズ」であると考えられています。つまり、特別な意味のある現象ではないのです。

夢には「発想をもたらす」という意義がある?


夢は生理的には意味のある現象ではないと先述しましたが、とくに人間にとっては、「画期的な発想のきっかけになる」という意義があるかもしれません。


たとえば、有機化学上で重要な構造「ベンゼン環」の発見者であるケクレという学者は、夢の中で蛇が輪になっている映像を見て、ベンゼン環を発想したといわれています。このほか多くの高名な芸術家や音楽家は、夢の中でインスピレーションを得て創作することが多くあったようです。


夢を見ているときのレム睡眠の状態では、前頭葉の活動が低下します。前頭葉は理論的な判断を担う部位であり、この部位が不活性化するということは、脳が理論的な思考から解放された、いわば「型にはまらない」活動をしているともいえます。それゆえ、夢の中では画期的な発想が生まれやすいと考えられます。創造的な活動を行う人間ならではの意義が、夢にはあるかもしれません。



夢は、脳の睡眠時の活動のノイズのようなものであり、生理的に意味はないということがわかりました。とはいえ先述の通り、人間の創作活動・研究に発想をもたらしてくれる可能性もあります。今日の夜に見る夢が、もしかしたら仕事に活きるアイデアになるかもしれません。


参考文献

櫻井武 睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 講談社 2017

宮崎総一郎・林光緒 睡眠と健康 放送大学教育振興会 2017

(執筆・監修 ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)