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ずっと寝ないとどうなるの?不眠と断眠が体にもたらす影響

2018.10.30

ずっと寝ないとどうなるの?不眠と断眠が体にもたらす影響


日本人は他国の人に比べて睡眠時間が短いというデータがあります。「働き方改革」が叫ばれていながらも、睡眠時間を削って働く人たちが多いという実態が、今現在も社会問題となっています。


今回は、慢性的な睡眠不足がもたらす問題について解説します。ならびにトリビアとして、強制的に一睡もできない状況……すなわち「断眠」状態に身を置いた人間はどうなるのか?という疑問にもお答えしていきます。

睡眠不足に悩む人は、これを機に仕事や生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

睡眠不足がもたらす問題:①疾患リスク


まずこちらは想像に難しくないことですが、慢性的な睡眠不足はさまざまな疾患に罹患するリスクを上昇させます。具体的には、肥満や高脂血症、糖尿病などのいわゆる生活習慣病から、うつ病などの精神疾患まで幅広いです。精神疾患と関連し、睡眠不足は自殺率を高めるとも考えられています。


死亡リスクにおいても、睡眠不足の人は睡眠の足りている人に比べ10%ほど高いという研究があります。健康面においては、睡眠不足は百害あって一利なしといえるでしょう。

睡眠不足がもたらす問題:②判断力の低下

こちらについてもすでに知られていることですが、睡眠が不足すると正常な判断ができなくなります。眠気に襲われて仕事でミスをしたなどの経験は誰しもあると思いますが、歴史的に見てもスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故や、スリーマイル島の原発事故などの世界を揺るがす大事故においても、かかわっていた人の睡眠不足が一因にあると考えられています。


睡眠不足は判断力の低下をもたらす、という事実を当たり前のこととして見過ごしてしまうのは危険です。例えばある種の宗教的儀式では、信者の睡眠時間を奪い判断力を鈍らせることなども行われるようです。これと同様、いわゆるブラック企業などに勤め睡眠不足に悩む人は、正常な判断ができないがゆえに、転職を考えるなどの視野を奪われている状況にあることも考えられます。

①で上述したような、自殺と睡眠不足の関係は、人が正常な判断ができなくなったがゆえのたどり着く最悪の結末、ともいえるでしょう。


もしこの記事を読んでいて、自分、あるいは知人にあてはまると感じた方は、いますぐご自身、その知人の方の仕事や生活習慣を見直すべきです。

万が一「断眠」した場合どうなる?


睡眠不足の恐ろしさをより理解していただくために、ここからは少々非現実的な話をします。強制的に睡眠が奪われる「断眠」状況に陥った生物はどうなるのか?について見ていきましょう。


まずは動物実験の例を紹介します。1980年代、シカゴ大学の研究グループは特殊な装置を用いてラットを強制的に眠らせない状況下で飼育し、体に何が起きるのかを調査しました。するとそれらのラットは、断眠2週間を過ぎたあたりから体毛が抜けたり体温調節機能が障害されたりなどの異常を見せ始め、3~4週間がたつと免疫機能の低下が原因とみられる感染症で死んでいきました。睡眠を奪うことは、免疫にまで影響をもたらすのです。


ヒトでも、自らの意志で数日間連続で断眠することに挑戦し、貴重なデータを残した方々がいます。例えば1964年には当時高校生のランディ・ガードナーが11日間の断眠に、1959年にはラジオDJのピーター・トリップが8日間の断眠にそれぞれ挑戦しています。


両者に共通するのは、断眠が進むにつれ幻覚や妄想が激しくなっていった、つまりは精神に異常をきたしていったという点です。上述の「睡眠不足がもたらす問題②」で、睡眠不足により正常な判断ができなくなると書きましたが、それはこうした精神異常の入り口であるといえるかもしれません。


断眠の恐ろしさはわかっていただけたかと思いますが、これらは強制的に長期間眠らせないという特殊な状況下で初めて起こることです。さらにラットでもヒトでも、断眠後に睡眠をとるとその後に回復し、後遺症は見られなかったといいます。つまり、少しでも眠ることができれば、重篤な病気になることはないと考えられるのです。

まとめ

睡眠不足は、行き過ぎると死に至ることもあり、慢性的な睡眠不足でも精神的・肉体的な健康を妨げるということがわかりました。そして最も強調したいのが、睡眠不足は正常な判断を鈍らせるということです。「思い詰める」という状態は、睡眠が足りていて正常な判断さえできれば起こらないかもしれません。


睡眠は、生物が長い時間をかけて進化した果てですらも取り去ることのできなかった、究極の体の要請といえます。仕事のことなどを考える前に、何よりもまず体からの正直な声に耳を傾けることが望ましいでしょう。

参考:

櫻井武 睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 講談社 2017

宮崎総一郎・林光緒 睡眠と健康 放送大学教育振興会 2017

(執筆・監修 ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)