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女性の性欲はアラフォーでピークになるって本当?

2018.11.04

女性の性欲はアラフォーでピークになるって本当?


男性と女性で性欲のピーク年齢は違う、という話を聞いたことはありませんか? 男性は思春期に性欲のピークを迎えますが、女性の場合は35歳ぐらいでピークになるといった説です。これには科学的根拠があるのでしょうか?

記事監修



森 智恵子先生


日本産婦人科学会専門医、精神科指定医、麻酔科標榜医、日本医師会認定産業医

世界レーザー医学会認定医、サーマクール認定医


女性婦人科と美容皮膚科で併せて25年、女性と向き合い続けてきた経験から女性の心身を熟知。

現在は天神レディースクリニック、院長として活躍。

■「女性の性欲がアラフォーでピークになる」のネタ元は?

ネットでは「女性の性欲はアラフォーでピークになる」という話がまことしやかに語られていたりします。しかし、この話の科学的根拠になるデータは分かっていません。


ひとつには、


「(前略)年齢的な面でいえば、女性の性欲のピークは35歳頃で、その後10年ほど続くという。これは、性欲を覚えさせる男性ホルモン・テストステロンの分泌がもっとも多くなる時期であるためで、男性の場合は、そのピークが19歳頃だといわれている。つまり、男女の性欲の絶頂期は、なんと15年から20年近くもずれている計算になるのだ。」

⇒引用元:日本博学倶楽部『「人体の謎」未解決ファイル』(PHP研究所)2009年8月19日第1版第1刷,p159

という説があるためだと考えられます。

■「テストステロン」は性衝動を高めますが……


一般に男性ホルモン「テストステロン」は性衝動を高める生理的作用があるとされています。テストステロンが女性の体内でも分泌されているのは事実で、また女性の性欲とテストステロンが関係しているのは確かだとは考えられます。


低活動性性欲異常症(HSDD)※1の女性にテストステロンの投与を行って、「テストステロンのピーク到達3-4時間後に、性的感覚および性欲の上昇が報告された」という研究があるのです※2。


女性でも、副腎や卵巣でテストステロンが分泌されています。しかし、その分泌量は非常に少なく男性の1/10から1/20ほど。また、年を取るごとにその分泌量は低下していくことが知られています。


20-80歳までの女性の血中テストステロン濃度を調査した研究(2011年のRobin Haring博士らの研究※3)によれば、「20-29歳で1.03nmol/liter」「30-39歳で0.91nmol/liter」「40-49歳で0.70nmol/liter」と総テストステロン量は明らかに減少しているのです。


ですので、女性が「35歳ごろにテストステロンの分泌量は最高になる」というのは明らかに間違っています。

■女性の性欲はオルガズムの経験が関係している?

テストステロンは確かに性衝動をもたらすかもしれませんが、女性の性欲の増進をテストステロンの分泌だけで説明するのは無理があるようです。


もし「女性の性欲が35歳頃に最も高まる」というのが確かなのであれば、その背後にあるのはもっと心理的なものなのかもしれません。


女性の性欲はオルガズムを経験して深まっていくものなので、ある程度年齢を重ねないと「性欲が高まらない」と考えることもできるのです。女性のオルガズムについて『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』では、


女性のオルガズムの初体験は、思春期前の時期から成人期に達した後までどの時期にも起こりうる。オルガズム初体験の年齢は男性より女性のほうがよりばらつきが大きい。また女性のオルガズム経験の報告は年齢とともに増加する。多くの女性はさまざまな性的刺激を経験し、自身の体についての知識を深めるにつれて、オルガズムを経験することを学習する。女性の一貫してオルガズムがある("通常またはいつも"オルガズムを得ることと定義される)割合は、相手との性交中より自慰行為中において高い。

⇒引用元:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』株式会社医学書院,2016年2月1日第1版第5刷発行,p423


と説明しています。射精すれば快感を得られる男性と違って、女性のオルガズムは経験・知識とともに得られ、深まるものです。そういった観点からみると、「女性の性欲が高まるのはある程度年齢を経てからのことになる」とは考えられるのではないでしょうか?



※1 HSDDは、WHO(世界保健機関)が診断基準を示す『ICD-10』によると「性欲欠如あるいは性欲喪失」(Lack or loss of sexual desire:F52.0に分類)に当たります。


※2⇒論文:「Transdermal testosterone gel prn application for hypoactive sexual desire disorder in premenopausal women: a controlled pilot study of the effects on the arizona sexual experiences scale for females and sexual function questionnaire.」

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17233786?dopt=AbstractPlus


下は上記の論文について紹介した『大東製薬工業』のBLOGです。


⇒参考文献・データ引用元:『大東製薬工業公式BLOG』「テストステロン・ゲルの単回投与で女性の性活動を改善できる」

http://www.daito-p.co.jp/blog/2007/02/post-22.html


※3⇒論文:「Age-Specific Reference Ranges for Serum Testosterone and Androstenedione Concentrations in Women Measured by Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry」

https://www.researchgate.net/publication/51871990_Age-Specific_Reference_Ranges_for_Serum_Testosterone_and_Androstenedione_Concentrations_in_Women_Measured_by_Liquid_Chromatography-Tandem_Mass_Spectrometry

(高橋モータース@dcp)