検索
結局何時間寝るべきなの?「睡眠時間のノルマ」を問い直す

2018.11.16

結局何時間寝るべきなの?「睡眠時間のノルマ」を問い直す


「仕事や家事・育児のための時間を残しつつ、健康維持のためにできるだけ睡眠時間を確保したい。」

これは誰しもが考えることですよね。しかし、そうしたときに必ずと言っていいほど出てくるのが、「何時間寝れば、健康でいられるの?」という疑問です。ワークライフ・バランスの重要性が説かれる現在、この疑問にはしっかりと向き合うべきでしょう。


「〇時間寝るべき」という決まりは無い!

世間では適切な睡眠時間について様々な説が飛び交っていますが、果たしてどれが正しいのでしょうか。


まずは結論から言ってしまいますが、大前提として現段階では「ヒトは〇時間寝るべき」とはっきりと言い切った、信頼できる研究は存在しないということです。最適な睡眠時間に関しては、個人差によるところが大きいようです。


むしろ「〇時間寝なければならない」と考えてしまうことが、眠りにつこうとしたときにその義務感がむしろ脳を興奮させ、不眠の原因となることも考えられます。健康的な睡眠習慣を維持するためには、睡眠時間のノルマがあるとは考えない方が良いでしょう。

寝なさすぎは当然体に悪い


睡眠時間のノルマが存在しないことはおわかりいただけたと思いますが、当然のことながら睡眠時間が短い日が続くと健康面に影響が出ることは確実です。


2004年にコロンビア大学が「肥満になる確率と一日の平均睡眠時間の相関」について調査した結果によると、平均7時間睡眠の人を基準としたとき、平均6時間睡眠の人は23%、5時間睡眠の人は50%、4時間以下の睡眠時間の人は73%も、肥満になる確率が高いという結果が出ました。睡眠はヒトの代謝機能の調節に関与している可能性が高く、短い睡眠時間が続くと健康を害することが示唆されています。


ナポレオンやエジソンは毎日ほとんど寝ていなかった、という話を聞いたことがあるかもしれませんが、彼らも昼寝をするなど、トータルでは一日の睡眠時間をそれなりに確保していたと考えられています。当然のことですが、寝ることができるときには寝た方が良いのですね。

そうかといって寝すぎも良くない

睡眠不足が体に悪いのは当然のことですが、抑うつ傾向にある人は過眠となるというデータが存在するようです。寝すぎることでも、心身に不調をもたらす可能性があります。


しかし、日ごろ睡眠不足を感じており、しっかり眠れる時間がとれるのならば眠るべきです。そもそもヒトには、睡眠不足を負債のようにため込んで、後で眠ることで清算することのできるような、睡眠に関しての柔軟性が備わっています。忙しくてたまった睡眠不足による疲労を取り除くために、長時間の睡眠はむしろ必要なことなのです。


ヒトに必要な睡眠時間は、加齢により短くなる傾向にあると一般的に考えられています。さほど睡眠不足を感じていないのならば、「長く眠らなければいけない」と考えることは必ずしも正しいとは言えないことでしょう。

自分にとっての最適な睡眠時間を知ろう

先述の通り、最適な睡眠時間に関しては個人差が大きく、みなさん自身が「自分にとっての最適な睡眠時間」を知ることが大切になってきます。


とはいってもそれはさほど難しいことではなく、睡眠不足により体調がすぐれない、という意識がないようならば、それは十分睡眠が足りているという証拠であるそうです。逆に、日中に眠気がひどかったり、休日は平日に比べ長く眠らなければ体調がすぐれないならば、それは睡眠不足だといえるでしょう。


「働き方改革」について議論されている昨今、仕事のせいで寝る時間がない、という状況は一考すべきものでしょう。「〇時間睡眠が人間に適している」といった数値主義にとらわれていては、自分の健康状態を見誤る可能性もあるかもしれません。睡眠は足りているかどうか、体の正直な声を聞いてみましょう。

参考文献

櫻井武 睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 講談社 2017


宮崎総一郎・林光緒 睡眠と健康 放送大学教育振興会 2017

(執筆・監修 ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)