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安くて効く?「ヒルドイド」に美白効果がないことが判明

2018.11.20

安くて効く?「ヒルドイド」に美白効果がないことが判明


近年「ヒルドイド」という医薬品に「美白効果がある」と話題になりました。それを聞きつけ、処方箋を求めて医師にかかる女性も急増。あまりにたくさんの人がヒルドイドの処方を受けようと病院を訪れたため「ヒルドイドを処方薬から外そう」という意見が出るほどでした。

今回はこの「ヒルドイド」の効果についてご紹介します。

■「ヒルドイド」に美肌効果があるとして人気に……

「ヒルドイド」※1は「ヘパリン類似物質」が含まれた保湿剤で、通常はアトピー性皮膚炎や皮脂欠乏症の患者さんなどに処方されます。皮膚の乾燥を防ぎ、血行を促進するという薬効があります。剤形としては以下の4タイプがあります(説明はマルホ株式会社の公式サイトより引用:下記URL)。

  • ヒルドイドクリーム0.3%

    良好な展延性を有するクリーム剤(水中油型の乳剤性基剤)です。


  • ヒルドイドソフト軟膏0.3%

    良好な展延性及び被覆性を有するクリーム剤(油中水型の乳剤性基剤)です。


  • ヒルドイドローション0.3%

    展延性に優れ、広範な患部に使用しやすいローション剤(水中油型の乳剤性基剤)です。


  • ヒルドイドフォーム0.3%

    展延性に優れ、広範な患部に素早く塗布することができるフォーム剤です。

⇒『マルホ株式会社』「ヒルドイド」「製品情報」「保湿剤とは」

https://www.maruho.co.jp/medical/hirudoid/

このヒルドイドが、Webなどのメディアで「美白効果がある」と評判になってしまい、特に皮膚疾患のない人まで処方してもらうために医師にかかるという事態が起こりました。保険適用の処方薬ですので、処方されれば安価に入手できるという点も多くの人が殺到する理由となりました。「高価な美白クリームよりも効果があるし、安い」というわけです。しかも、ヒルドイドにはジェネリック医薬品が出ていますので、そちらを選択するとさらに安価に入手できます。



※1最近では一般にもよく知られるようになっていますが、もともと「ヒルドイド」はマルホ株式会社が先行開発、販売している薬品名です。同様の薬効成分を持つジェネリック医薬品では名称が異なります。


※2「水中油型(O/W型)」は「Oil in Water」で、油性成分が水分の中に存在する状態。「油中水型(W/O型)」は逆に「Water in Oil」で、油性成分の中に水分が存在する状態を指します(イメージは上記のマルホ株式会社の「ヒルドイド」公式サイトを参照してください)。

■「ヒルドイド」の保険適用をやめようという意見も

医師の処方箋を必要とする医薬品は「医療」のためにあります。公的な保険は、国民が等しく、より安価に医療の恩恵を受けられるようにという理念の下に設けられた制度です。この医療には「美容」は含まれていません。基本的に審美医療(健康ではなく、見た目を良くする医療行為)には公的な保険は適用されないのです。


ですから、特に皮膚疾患でもないのに「美肌目的」で処方を受けようとする行為は公的な保険制度の理念に反しています。また、このような美容目的で処方薬を入手する人が増えれば、ただでさえ予算に窮している公的な保険制度をさらに圧迫することになります。


ヒルドイドのような「ヘパリン類似物質」を含む保湿剤を美容目的に使う人が増加している事態を重く見た『健康保険組合連合会』は、2017年(平成29年)9月発表の「政策提言書」の中で、

・外来診療において、皮膚乾燥症に対して保湿剤(ヘパリン類似物質または白色ワセリン)が他の外皮用薬または抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合には、当該保湿剤を保険適用から除外する。

としています。また同書の中では、これが実現された場合には「年間約93億円の薬剤費が削減できる」と推計。つまり、年間約93億円分も保湿剤が美容目的で処方されていると推測しているわけです。



さらに以下の提言も行っています。

・中長期的には、海外の保険収載の状況や一般用医薬品の流通の状況等を踏まえ、保湿剤の処方そのものを保険適用外とすることも検討すべきである。

この場合には「年間約1,200億円の薬剤費が削減できる」と見込んでいます。

⇒データ引用元:『健康保険組合連合会』「医療保障総合政策調査・研究基金事業 政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究III」

https://www.kenporen.com/include/outline/pdf/chosa29_01.pdf

「ヒルドイド」は、日本では保険適用となる処方薬ですが、イギリス・ドイツ・フランス・アメリカでは保険適用でない(保険適用が確認できない)薬品です。


このような健康保険組合連合会の提言に対して、医師からは「早計に失する」「本当に処方が必要な患者さんのためにならない」という反論も出ました。これらを受けて、厚生労働省は2018年の「平成30年度診療報酬改定関係資料」内で、ヒルドイドなどヘパリン類似物質を含む保湿剤への規制を見送るという判断を示しました。ただし、

・美容目的などの疾病の治療以外を目的としたものについては、保険給付の対象外である旨を明確化する


・審査支払機関において適切な対応がなされるよう周知する

明記されています。

⇒データ出典:『厚生労働省』「平成30年度診療報酬改定関係資料」P.491

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196430.pdf

■実際に「美白効果」はあるの?

そもそも「ヒルドイド」に「美白効果」はあるのでしょうか?ヒルドイドの薬効成分である「ヘパリン類似物質※3」は高い保水機能を持つとして配合されていますが、美白効果があるというエビデンスはありません。そのほかに入っているのは油性成分がほとんど。これらにも美白効果があるというエビデンスはありません。


ですから、美白効果を求めてヒルドイドを使っても期待するような効果はないと考えられます。保湿剤ですので、肌の潤いを保つ機能(保水機能)はありますが、それなら市販のワセリンなどを使っても同じでしょう。そのほうがより安く済みますし、医師の処方を受ける必要もありません。


データから推測するに、年間約93億円分も美肌効果のために処方箋を受ける人がいるというのは驚きですよね。これらは国民の納める保険代で補填(ほてん)されます。ヒルドイドには美白効果はありません。本来の治療を受けるべき人たちのためにも、美白効果を目的に受診し、処方箋をもらうのはやめたほうがいいでしょう。



※3「ヘパリン類似物質」は「ムコ多糖類」と呼ばれるものの一つです。ムコ多糖類は細胞や組織を覆って保護する働きをします。美容に関してよく聞くグルコサミン、コンドロイチン、などもムコ多糖類の仲間です。ちなみに「ムコ」は「粘液性」という意味です。


(柏ケミカル@dcp)