検索
「座りっぱなし」に注意!疲労の医学博士が教える、立ち上がるだけで疲労は軽減する

2018.12.15

「座りっぱなし」に注意!疲労の医学博士が教える、立ち上がるだけで疲労は軽減する


デスクワーク中、また車やバス、飛行機で長距離の移動中に、頭がぼーっとして腰や肩こりがつらくなる人は多いでしょう。


ベストセラー『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)シリーズの著者で、大阪市立大学医学部大学院特任教授の梶本修身(かじもと・おさみ)医師によると、「座りっぱなしは、実は疲労を蓄積する行為です。運動や精神的ストレスによる疲れと同じように、休息をとらないと疲れは増していきます」とのことです。それはなぜなのか、どこがどう疲れているのか、また予防や改善法など、詳しく聞いてみました。

取材協力・監修



梶本修身氏


大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。医学博士。国家プロジェクトとしての疲労対策の研究を続ける。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/314

■どんな疲労でも正体は同じ。「脳」にある

――運動による作業に比べると、パソコンの操作など座って行う仕事は楽だろうと思っていました。ですが、毎日午後には頭がぼーっとしてきて、肩こりや腰痛もあります。座業(座りっぱなし)でも疲れるのでしょうか。


梶本医師:結論から言うと、座りっぱなしというのは、脳の細胞をさびさせて、疲労を蓄積する要因になります。デスクワーク中に、「集中が途切れた」、「眠い」、「飽きた」というときがあるでしょう。それは疲労のサインです。


体力がないからとデスクワークを選んだとしても、座りっぱなしで残業を続けていると、むしろ運動をするよりも疲れが蓄積することがあります。一般に、激しく動く仕事や運動による疲れを肉体疲労、思考作業による頭の疲労、気を遣ったときの精神的疲労などと、疲労を区別することが多いようですが、実は、どの疲労も原因はひとつで、「脳」にあります


頭でも手や足の筋肉でも、神経であっても、どの部位が「疲れた」と感じても、実際に疲れているのは脳であり、詳しく言うと「脳にある自律神経の中枢」になります。「すべての疲労は脳が原因」と言うのは、そういうわけです。


――すると、座って行う作業で頭がぼーっとする、肩がこるなどの症状は、自律神経が関係しているということでしょうか。


梶本医師:そうです。自律神経とは、興奮や緊張をしたときに優位に働く交感神経と、リラックス時に作用する副交感神経があり、相互にバランスを取り合っています。自分の意志ではコントロールすることができず、心拍、体温、血圧、唾液、発汗などを調節して体の機能を正常に安定させるように働きます。


デスクワークで作業に集中しているときは、緊張しているので交感神経が優位になっています。休憩をとらない、あるいは忙しくて睡眠不足のまま残業を続けているなどだと、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、脳の自律神経の中枢での処理が急増します。その結果、脳の細胞がさびて自律神経の機能が十分に果たせなくなり、疲労が生じます


この現象は、ランニングなど激しい運動をしているときや、人間関係にトラブルがあって精神的なストレスが強いときなども同様です。

■立ち上がるとそけい部の血流が促される

――デスクワークの方が体を使う仕事より、楽だとは言えないことがわかりました。では、デスクワーク中に脳の疲労を改善する方法はあるのでしょうか。


梶本医師:どこかで仮眠をとるのがもっとも良いのですが、仕事中ならそうもいかないでしょう。そんなときには、立ち上がるだけで脳疲労が回復することがわかっています。


座りっぱなしだと、脚の付け根の股関節や膝(ひざ)が直角に曲がった状態になるでしょう。長時間その姿勢でいると、そけい部や膝の裏を通る太い血管とリンパ液の流れが悪化します。そうすると、細胞のさびで生じた老廃物の疲労物質が滞り、疲労が蓄積されることになります。


立ち上がると血液やリンパ液の流れが促され、疲労物質の代謝が進むため、疲労は軽減するのです。疲労物質は尿とともに体外へ排出されるので、トイレに行くとさらによいでしょう。


足を伸ばすストレッチも行ってください。歩いてストレッチをすると、ふくらはぎの筋肉が収縮して、血液を心臓に戻す作業が活発になります。1時間に1度は必ずこれらを行いましょう。

■水分を補給する。机の下に青竹踏みを置く

――トイレに行くだけで頭痛が緩和されることがありますので、思い当たります。


梶本医師:トイレに行ったら必ず、水を飲みましょう。水分はできるだけ、のどの渇きを感じる前に補給してください。デスクワークだと、自覚がないまま脱水していることがあります。そうするとさらに自律神経を酷使することになり、疲労が溜まります。


デスクワーク中には、ときおり足首をまわす足を伸ばす、机の下に青竹踏みを置いて足の裏を刺激するなど、血流を促す動作をしてください。これは、長時間のフライトや運転中でも同じことが言えます。


いずれも、疲れを感じる前に行うことが疲労を溜めないコツと言えます。自分でできる疲労回避のための習慣として、身につけておくようにしましょう。


ただ、仕事に集中すると、つい立ち上がることを忘れることもあるでしょう。そうならないように、50~60分の作業ごとにタイマーをセットしておき、鳴ると5~10分は立ち上がってストレッチをする、歩く、トイレに行くなどしてこまめに動いてください。


――ありがとうございました。ちょっとした意識と実践で、脳疲労は軽減できる、また予防できるということです。これからはデスク上にタイマーを置いて、1時間に1度は立ち上がって動き、それを日ごろの習慣になるように実践したいと思います。



取材・文 藤井 空 / ユンブル