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満月の日は体調が悪い、事件が多い…?月がヒトに与える影響って?

2017.07.26

満月の日は体調が悪い、事件が多い…?月がヒトに与える影響って?


月の満ち欠けと人間の生活リズム・活動に何らかの関係があるのではないか、という研究は昔からたくさんあります。「満月の日には殺人が多い」なんてことがまことしやかにいわれたりしますね。月の満ち欠けと人間の行為に関係はあるのでしょうか? 「日本最強のデバンカー」(オカルト・超常現象などを懐疑的、科学的に検証する人のこと)といわれる皆神龍太郎先生にお話を伺いました。

取材協力・監修


皆神龍太郎氏


疑似科学ウォッチャー。『と学会』運営委員。ASIOS会員。しばしば日本最強のデバンカーといわれる存在。『UFO学入門 伝説と真相』(楽工社)、『あなたの知らない都市伝説の真実:だまされるな! あのウワサの真相はこれだ! 』(学研パブリッシング)など著書多数。


⇒Twitter

https://twitter.com/debunkerjp


⇒皆神龍太郎先生の最新刊『UFO事件クロニクル』(彩図社)

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■生体リズムは自然のリズムと関係している?

――「月の満ち欠け」と「人間の生活リズムや活動」には関係がある、なんて話がありますが、これは本当のことなのでしょうか?


皆神先生 これは本当に昔からいろいろいわれています。かつてはやった「バイオリズム」もその一種ですね。バイオリズムの場合は、月の満ち欠けだけでなく、太陽の動き、潮の満ち引きといった自然のリズムと共振しながら生きている、という考え方でしたが。


――そういえばバイオリズムもあまり聞かなくなりましたね。


皆神先生 バイオリズムの場合は、1890年代にウィルヘルム・フリース(外科医)によって「発見された」とされています。フリースが発見したのは「男性周期(23日周期)」「女性周期(28日周期)」というふたつのリズムでした。


その後、アルフレッド・テルチャー(エンジニア)という人が、33日周期のリズムを「発見」して、これを知能リズムと名付けました。ついでにフリースの発見した男性周期を肉体リズム、女性周期を感情リズムと名称変更しました。


この肉体・感情・知能のリズムは誕生してからそれぞれの周期でカーブを描きながら上下するというのがバイオリズム理論です。これを利用して、たとえば「試験を受けるのなら知能リズムがピークに達するときに受けましょう」なんて言うわけですよ。


――バイオリズムは本当に有効なのですか?


皆神先生 いいえ(笑)。科学的に否定されています。こういう「生体リズム」についての話はたくさんあって、しかもどれもウソばっかりという(笑)。


たとえば「ハムスターの代謝活動が、月と同じ周期で変化していることを発見した」というフランク・A・ブラウン博士の研究(1954年)も、その後、別の研究者が実験結果を統計的検証にかけてみると、全然そんな事実はなかった、という結末でしたし。


――なんだかガッカリですね。


皆神先生 そういうものですよ(笑)。

■満月のときには殺人が多く発生する?

――満月の日に殺人が多い、といわれたりしますが?


皆神先生 その「話」の元になったのは、『月の魔力』という本を書いたA・L・リーバー博士の研究でしょう。


1956年から1970年にかけて、フロリダ州デイド郡(現在のマイマミ・デイド郡)で発生した殺人事件について15年分のデータを集めて月齢との関係を調べてみた、というものです。その結果、満月のときに殺人事件の発生件数がピークに達していた、と。


また、オハイオ州カヤホガ郡でも同様のデータを調べてみると(ただし期間は1958-1970年)、緯度のずれに合わせて、満月から3日のずれで殺人事件の発生件数がピークに達していた、というのです。


――スゴイじゃないですか!


皆神先生 まあ、これだけだとスゴイかもしれませんが、「本当に?」と天文学者のニック・サンダリークらが同じ地域で1971-1981年の殺人事件のデータを調べてみたのです。この追試では、リーバーとは全く異なり「月齢と殺人事件の発生件数には関係はない」という結果となりました。


つまり、リーバーの研究は「偶然うまく当てはまった時期を取り上げただけ」だったのです。実際、その後リーバー自身が(デイド郡について)追試を行っているのですが、やはり殺人事件の発生件数が満月のときにピークになるという結果は確認できていません。


『月の魔力』の増補版では(カホガヤ郡の追試について)「データは事実上、使いものにならなかった」とさじを投げています。解析を諦めたわけです。


「月齢と殺人事件の関係」についての研究はこれだけではなく、世界中で多くの論文があるのです。その結果は、おおむね「関係なし」というわけですから、満月の日に殺人事件が多い、というのは信じないほうがいいでしょう。


こういったことがそもそも言われ出したのは、英語圏には「月は人を狂わせる」という信仰があり、月(ルナ)から派生した「ルナティック」という言葉が「狂った」といった意味を持つことなどから来ているのでしょう。


あと夜が真っ暗だった昔は、明るい満月の夜くらいしか人は外を出歩けませんでした。夜中に多くの人が徘徊すれば、その分、犯罪も増えるといった「当たり前」の因果関係をちゃんとみておく必要があります。月光の成分には人を狂わせる何かがあるのだ、などと疑う前に考慮すべきことがあるわけです。


――世界中でこういうことを真面目に検証する科学者がいらっしゃるんですね。


皆神先生 そうなんですよ。とんでもない理論、理論というよりデマみたいなものですけど、そういうものが一般に広まってしまうと、それを科学的に検証しなければなりませんからね。科学者は大変ですよ(笑)。


しかも「科学的には証明不可能で、それはウソです」という論文を書いても、それがなかなか一般に認知されません。デマのほうが魅力的だからでしょうね。今回説明した「満月の日に殺人が増える」なんて話も、いまだに一部で信じられているのではないでしょうか。こういったトンデモな話は、やはりしっかり調べるという姿勢が大事だと思います。


――ありがとうございました。



「さすが日本最強のデバンカー・皆神先生」というお話でしたが、いかがだったでしょうか? 月の満ち欠けと人間の生活リズム・行動には関係はないようですね。似たような話はけっこうありますので、そのような話を聞くときは眉に唾(つば)をつけるのが良いでしょう。


(高橋モータース@dcp)