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動物からうつる病気ってある?感染を避けるにはどうしたらいい?

2017.08.01

動物からうつる病気ってある?感染を避けるにはどうしたらいい?


住環境のせいもありますが、昔と違って室内でペットを飼っている人が多いですよね。家族の一員としてかわいがることは大切ですが、気を付けなければいけないのが動物から人間にうつる病気です。今回は、イヌ、ネコからヒトにうつる病気について、『西日暮里ペットクリニック』院長の福田卓也・獣医師に取材しました。

取材協力・監修


福田卓也先生


獣医師。2004年、麻布大学獣医学部獣医学科卒。2004年~2011年、都内の動物病院勤務。勤務のかたわら2007年~2013年、『麻布大学附属動物病院』にて腎泌尿器気科、外科専科研修医として学ぶ。2011年『西日暮里ペットクリニック』開院。現・同院長。


⇒『西日暮里ペットクリニック』公式サイト

http://www.nippori-pet.com/

■イヌの場合はダニやノミに注意!

まずイヌを飼っている人が注意しておくべき病気について福田先生に伺いました。


――イヌからヒトにうつる病気はあるのでしょうか?


福田先生 はい。イヌの場合は、イヌにつくダニ・ノミを媒介源としてヒトに発症する感染症に注意しましょう。最近特に注目されているのが「重症熱性血小板減少症候群」(略称SFTS)です。これは(フタトゲチマダニなどの)「マダニ」が媒介するSFTSウイルスによる感染症です。


SFTSウイルスに感染すると、6日-2週間程度の潜伏期間の後に発熱、消化器症状(食欲の低下・吐き気・嘔吐(おうと)・下痢・腹痛)が起こり、そのほかに頭痛・筋肉痛・意識障害や失語などの神経症状が伴うこともあります。そしてリンパ節腫脹、皮下出血や下血といった出血症状が見られます。


――これは新しい病気なのでしょうか?


福田先生 2011年に中国の研究者によって発表されたダニ媒介性感染症です。たとえばイヌを散歩に連れていって、草むらなどでウイルスを持ったダニをつけて家に戻り、そのダニによってヒトがウイルスに感染する、といった経路が考えられます。


このSFTSはヒトが発症すると血小板が減少するのが特徴で、症状がひどくなると死に至ることもあります。発症件数のデータを見てみますと、これまでに53人が亡くなっています。

●SFTS発症件数


生存例:209

死亡例:57

報告件数計:266


※2017年6月28日現在

――気を付けないといけませんね。


福田先生 ただし発症報告は圧倒的に西日本(21府県)に偏っています。これは、ウイルスを持ったダニが生息しやすい温暖な環境であることが理由だと考えられます。

●SFTS症例の届け出地域


石川県:2件

三重県:5件

京都府:3件

兵庫県:2件

和歌山県:9件

島根県:8件

岡山県:5件

広島県:21件

山口県:23件

徳島県:21件

香川県:3件

愛媛県:23件

高知県:26件

福岡県:11件

佐賀県:3件

長崎県:15件

熊本県:7件

大分県:9件

宮崎県:43件

鹿児島県:26件

沖縄県:1件


※2017年6月28日現在

東京都心では散歩に行っても草むらに入ることはほとんどないでしょうから、ダニやノミがつくことは少ないかもしれません。しかし、油断なく予防を行っておくことが大事な家族の一員であるワンコの健康のためでもあります。


――予防はどのようにすれば良いでしょうか?


福田先生 ダニ・ノミの駆除薬を投与してあげると良いでしょう。またシャンプーやブラッシングを行うなどしてダニ・ノミをしっかり落とし、そこで駆除するようにしましょう。

■ネコの場合は「トキソプラズマ症」に注意!

――ネコを飼っている場合ですが、ネコからヒトにうつる病気はありますか?


福田先生 あります。ネコの場合は、これは昔からいわれているのですが、特に注意しなければならないのは「トキソプラズマ症」です。これは原虫(寄生性原生生物)によって引き起こされる感染症です。


ネコがトキソプラズマに感染すると糞便(ふんべん)の中にトキソプラズマの虫体が排出されます。これが何らかの経路で人間の体の中に入ると(経口感染が多い)、ヒトがトキソプラズマに感染することになります。


――トキソプラズマにヒトが感染するとどうなるのでしょうか?


福田先生 ヒトもネコも、普通は重篤な症状を来すことはありません。まれに感染した人で、リンパ節の腫れ・発熱・筋肉痛などの症状が出ることもありますが、やがて回復します。ただし、免疫抑制剤を使用していたり、またHIV(エイズ:後天性免疫不全症候群)の患者さんで免疫機能が落ちていたりすると、重篤な事態になることがあります。


問題なのは、妊娠した女性が感染した場合です。原虫が胎盤に移行して、そこから胎児に伝染する可能性があるのです。最悪の場合、赤ちゃんの発達を邪魔したり、流産になったりという影響があります。


――予防はどのようにすればいいのでしょうか?


福田先生 トキソプラズマに感染している猫と接触しないことが一番なので、飼っている猫がトキソプラズマに感染していないかを確認することが重要です。トキソプラズマ感染しているまたは過去にしていた可能性があることは血液検査で分かりますので、心配な方は血液検査をしておくと良いでしょう。

■イヌ・ネコと一緒に暮らしている人にアドバイス!

――室内飼いでイヌ・ネコと一緒に暮らしている人に獣医としてアドバイスをお願いいたします。


福田先生 獣医の医療も進歩していますので、知識があれば予防できる病気はたくさんあります。今予防できる病気にどのようなものがあるか、どんな薬を使えば病気を予防できるか、また薬や医療のメリット・デメリットを飼い主さんがよく理解するようにしていただければ、と思います。


そうすれば、その子が病気にかかってから「ああしておけば良かった、こうしておけば良かった」と後悔することのないようにできます。人が飼育するイヌやネコの寿命はどんどん伸びています。医療の進歩もありますけれども、やはり飼い主さんが家族の一員として大事にされている結果です。


大事に思う気持ちを、知識を増やす方向にも向けていただいて、予防などやれることはやって、できるだけ長く一緒に暮らしていただきたいと思います。


――ありがとうございました。



予防医療は動物医療の世界でも大事なようです。「ペットは家族の一員」とはよくいわれるところですが、その家族が注射1本を怠ったおかげで不慮の死を遂げるなんてことがないようにしたいものです。


福田先生のお話によれば「その時々で流行する病気もある」とのことで、ペットの飼い主さんは「病気のトレンド」にも敏感になっておいた方が良いのではないでしょうか。

⇒データ出典:『国立感染症研究所』公式サイト「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」

http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html

(高橋モータース@dcp)