社内での打ち合わせや取引先へのプレゼン、会食や飲み会など、働いているとさまざまな人の前で話す機会が増えるもの。自分としては、相手に伝わるようにはっきり話しているつもりなのに、「え、今なんて言いました?」と聞き返された経験があるという人もいるのではないでしょうか。


筆者も仕事柄、人と話す機会が多いのですが、必ず聞き返されると言っても過言ではないくらい声がこもりがちなのがコンプレックス……。発声って改善できるんでしょうか。


今回は、そんな悩みを解決すべく、青山ヴォイス・メイクアップアカデミーのヴォイス・ティーチャーの白石謙二先生にお話を伺ってきました。

取材協力・監修



白石謙二 先生


青山ヴォイス・メイクアップアカデミー代表。「話すため専門のヴォイストレーニング&ティーチングを行う」ヴォイス・ティーチャーとして活動する。これまでに、政治家や医師、弁護士、俳優から経営者、一般ビジネスマンまで、多種多様な業界で活躍する人々を指導。


▼青山ヴォイス・メイクアップアカデミー

https://www.a-vma.com


▼VOICE PRESS

https://ameblo.jp/shiraishi-kenji/

■声が通らない原因は○○にあった!?


――声がこもってしまう・声が通らない原因って何なのでしょうか?


白石先生

「簡単に言うと、お腹から声が出ていないことですね。口先だけでしゃべっている状態だと声が通りません」


――そういえば、小学校のときに「お腹から声を出しなさい」と言われました。そもそもお腹から声を出すってどういうことなんですか?


白石先生

「腹筋、背筋で支えて発声することです。これらの筋肉は声を出す起点になるんですよ。逆に肩や顔など、別の場所に力が入ってしまうと、余計な筋肉がこわばって発声を邪魔してしまいます。


重要なのは、腹式呼吸ができているかどうか。ずっと息を吐き続けると、お腹はぎゅーっと締まっていって、それを緩めると空気がスッと入ってくる。これが腹式呼吸です。


声が通らない人は、胸式呼吸をしているケースが多いんです。呼吸が浅いので、発声の起点も浅くなる。それだと、口先だけで発声していて、声がか細くなってしまうんですよ」


――胸式呼吸になってしまうのはなぜでしょうか? 生活習慣やメンタルの問題なども影響がありますか?



白石先生

「自信がなかったり、緊張状態にあったりすることは原因になりうるかもしれませんね。精神的な緊張自体は悪くないと思うんです。でも肉体まで緊張してしまうと、呼吸が浅くなり、思ったように発声できない。それによって、さらに精神的緊張を増幅させてしまうんです。


だから、大事なプレゼンなどでしっかり声を出したいときは、事前に肉体的緊張をほぐす運動をしましょう」

■毎日続けよう! 今日から始められる発声トレーニング

――声を出すにも準備運動が必要なんですね! どんなことをすれば良いのでしょうか?


白石先生

「まずは腹式呼吸のトレーニングですね。実際にやってみましょうか。その場で普通に呼吸をしてみてください。


吸って、吐いて、吸って、吐いて……。自分の体の動きで、何か感じましたか?



――息を吸ったり吐いたりするときに胸が上下していました。


白石先生

「そう、胸が上がるのは胸式呼吸の特徴です。もちろん生活上は何にも問題はないんですが、息の量が少なくて、短い呼吸なので、発声には適していないんですよ。腹式呼吸の練習をすることで、吸い方と吐き方がかなりよくなります。


では、息を吐く練習をしてみましょう。『フーーー』だと吐きづらいので、『スーーー』と吐いてみてください。息を吐くことでお腹が引き締まります。吐き切ったら、一旦止める。で、締まったお腹を緩めてみてください。そのときに、息を吸おうと意識しすぎてしまうと、胸や肩が上がってしまうので、フッと力を抜くように緩めればOKです」



――きついです! これ、汗かきますね……。


白石先生

「そうなんですよ。疲れるでしょ。腹式呼吸は、お腹を動かすことが大事なんです。


まずは、1日10回を3セットくらいから始めてみるといいと思います。息を強く吐く=声をしっかり出せるということなので、普段からやっておくことをオススメしますよ。


『スーーー』と吐くのに慣れたら、次は『ンーーー』と声に出してみてください。音程はよく通るといわれている音階、キーボードのド#に合わせましょう。鼻腔を共鳴させて、声の通りをよくすることを意識して」



白石先生

「次に、『アーーー』という発声を伸ばす『ロングトーン』にチャレンジしましょう。声が自分の頭上を超えていくような感じで遠くに飛ばします。これをやると腹筋を使っているかどうかがわかります。出だしの1〜2秒はわからないかもしれませんが、発声の最後の方では、腹筋がどんどん締まってきて、息がなくなっていく状態になるので、お腹から声が出てきていることがわかるんです」



――汗をかいてきました……! でも声がだんだん出しやすくなってきた気がします。発声することで気分もスッキリしますね。


白石先生

「夏場はクーラーをかけてやる方がいいですね(笑)。少しキツイかもしれませんが、朝の習慣にすると、頭に酸素が回って活性化しますよ」

■「声が悪い」という人は存在しない


――声が通らないという悩みで、受講される方は増えていますか?


白石先生

「かなり多いですよ。男女比は半々で、ビジネスパーソンの方が多くいらっしゃいますね。仕事帰りに通う方が多いです」


――トレーニングしても、改善が見込めない声質の人はいるのでしょうか?


白石先生

「それはいないですね。声質は、あくまで個性です。生まれつき持っているもので、成長してもほとんど変わりません。俳優や声優の仕事をしている場合は個性が必要になってきますが、それ以外の方の場合は、声質よりも出し方が重要ですね。声の出し方がよくなれば、その人の声質が生かされてきます」


『もともと自分の声が嫌いだったけど、トレーニングをして声を好きになった』というケースはたくさんありますよ。初対面の人と会話して『いい声ですね』と第三者に褒められるようになるなど、トレーニングをすると、その人の声の質が輝き始めます」

■声が通るようになると、仕事もうまくいく!


――発声の仕方によって、第三者からの印象には大きく影響がありそうですね。


白石先生

「アメリカの心理学者が提唱した『メラビアンの法則』では、人は、話の内容に影響を受けるのは約7%で、残りの93%は見た目と声と話し方と言われています。もちろん見た目の割合が55%と大きいのですが、残りの38%は声と話し方を含む聴覚情報なんです。全く同じ内容を2人の人間が話した場合に、このポイントを押さえているかいないかで、好印象を与えられるか、他人を動かせるか動かせないかが決まります。


――話の内容ももちろんですが、それをどのように伝えるかも大事ということですね。


白石先生

「特にリーダーとしてチームを引っ張るような人は絶対に持っていないといけないスキルですね。自分のプラン通りに、成果を出していこうとした時に、人を動かすことは必要になってくるもの。説得力ある伝え方をするためには、発声についても研究することはとても大事なのです」



ハキハキとした聞き取りやすい発声は、相手からの印象がよくなるのはもちろん、自信に繋がって仕事やプライベートの充実に繋がりますよ、と白石先生。今回教えていただいたトレーニングを習慣にして、「聞き返されない声」を手に入れましょう!


(阿部綾奈/ノオト)