初対面の人への自己紹介、大事な会議での発表など、人前で話すのは誰もが少なからず緊張するもの。周囲の視線が自分に向けられている、またそんなシーンで言い間違えたり、どもったりしてしまうと、恥ずかしさのあまり、かぁ~っと顔が熱くなってしまうことってありますよね。いわゆる赤面症です。


今回は、一般社団法人あがり症克服協会・代表理事の鳥谷朝代さんに、人前で緊張を緩和するコツについて、お話を伺いました。

取材協力・監修


社)あがり症克服協会 代表理事  (株)スピーチ塾 代表取締役  心理カウンセラー

鳥谷朝代さん


名古屋市職員を経て、2004年「あがり症・話しベタさんのためのスピーチ塾®」を開校。2014年「一般社団法人あがり症克服協会」を発足、理事長に就任。全国のカルチャースクール、学校、団体で年間200回以上の講演を行い、克服へ導いた受講生は65,000人を超える。「あさイチ」「ZIP!」「まる得マガジン」「ごごナマ」などテレビ出演多数。オードリー若林さんの人見知り克服、カラテカ矢部さんのあがり症克服指導も行う。著書には、「1分のスピーチでも30分のプレゼンでも、人前であがらずに話せる方法」(大和書房)など。


【HP】

(社)あがり症克服協会 

http://agarishow.or.jp/

■日本人の8割は緊張しやすい性格!?

対人場面での恐怖・不安が強く、日常生活に支障をきたす場合は、「社交不安障害(SAD=Social Anxiety Disorder)」と診断されることもありますが、必要以上に周囲の視線を意識してしまい、不安や焦りをといった心理的な現象が身体的な変化を引き起こすことが、一般的には緊張しやすい人、いわゆる「あがり症」といわれています。


――緊張しやすい人の特徴を教えてください。


「ずばり、『自意識過剰』と『いいかっこしい』が2大原因です。完璧主義で真面目な人ほど、悩んでいる気がしますね。しっかり準備したからこそ、人前に立つときにうまくやりたいという欲求、失敗できないというプレッシャーが生まれてしまうんです。でもそう思ってしまうこと自体は、性格的に問題があるということではありません。日本人の8割は『自分はあがり症である』という自覚があるといわれています。まずは、緊張しちゃいけない、失敗しちゃいけないという思いから解放されましょう」


――緊張すると、どうして身体的な症状が表れてしまうのでしょうか?


「人は緊張を感じると、神経伝達物質『ノルアドレナリン』が血液中に多量に分泌されます。これにより、自律神経のうちの交感神経が活性化されるため。心拍数や体温、血圧が急上昇し、赤面や動悸、発汗、震えなどの症状が起こります。しかし、ノルアドレナリンの分泌自体は決して悪いことではなく、集中力・身体能力を高めるとも言われているので、うまくコントロールしてパフォーマンス向上へとつなげればよいのです」

■改善できる症状とそうでない症状がある!?

――緊張状態になったとき、どんな自覚症状で悩んでいる人が多いですか?


「赤面症はよくある悩みです。反対に蒼白になってしまう人もいますよ。そのほか、声の震えや、うわずり、手足の震えもわかりしすい自覚症状ですね。こういった症状は、知らず知らずのうちに呼吸が浅くなってしまい、上半身の筋肉が硬直してしまうために起こります」


――それぞれの症状は、コントロールすることができるんでしょうか?


「正直、赤面症はこうすれば治る! という明確な方法はありません。たとえば、緊張によって汗をかきやすくなる人がいらっしゃいますが、意識して汗を止めることはできないですよね。心拍数、体温、消化機能系への直接的なアプローチはむずかしいんです。


ただ、呼吸を整えることは、すべての症状に対して有効的であると考えています。先ほどお話しした、ノルアドレナリンの分泌を抑え、緊張状態を緩和する役割を果たすのは神経伝達物質『セロトニン』。鼻から吸って、口から吐く腹式呼吸は、息を整えるだけでなく、セロトニン促進も期待でき、声が震えにくくなるので一石二鳥。本番中も、いつでもどこでもできるからおすすめです。


ちなみに、声の震えや、うわずりなどは首をゆっくり回しての筋肉を緩めてあげると、より改善されますよ。手足の震えも同様ですね」

(腹式呼吸法)

1.おへその少し下(丹田)に意識を集中し、お腹をへこませながら、口からゆっくり息を吐き切る。

2.お腹を膨らませるように、ゆっくり鼻から息を吸い込む。

3.吐く方を意識しながら、1~2を繰り返す。

■緊張をコントロールできれば、大きな自信になる

――人前で話すときには、どんな気持ちが大切ですか?


「まずあなたが話すことの目的がなにかを考えましょう。


たとえば、自己紹介で大切なのは『自分の名前をしっかり相手に伝えること』です。緊張しがちな人に限って「まさか自己紹介があるとは思わず……」「私のような者がご指名いただき……」などの余分な説明や前置きをしがち。自己紹介は、なるべく短く簡潔にすることで、本来の目的を達成することができます。


また、意外に緊張してしまうのは社内のプレゼン。知っている人だからこそ、失敗を知られたくない心理がより働いてしまいます。うまく見せようとしない、実力を出し切る100点満点ではなく70点くらいを目標にしてみましょう。


マイカラット読者世代だと、結婚式のスピーチなどをお願いされることもあるかもしれません。普段から使い慣れていない言いまわしや例文のような表現は、完全にマネする必要はありません。学生時代の友人なら、若い頃のエピソード、同僚なら仕事ぶりと、おのずと話すエピソードは決まってきますよね。なによりも、新郎新婦にお祝いの気持ちを伝えることが大切なんです。


どんなシチュエーションでも、自分の役割を十分に理解することが大事ですよ。もし可能であれば、イメージトレーニングだけでなく、実際に動画で自身の振る舞いを確認し客観的にクセなどを認識することもしてみましょう。ひとりで克服というよりは、第三者の力を借りるべきだと思いますね」


――緊張してしまいそうな時ほど、冷静な判断や素の自分らしさが必要なんですね。


「緊張状態を緩和するために必要なのは、はっきり言ってスキルです。薬剤やカウンセリングによる療法もありますが、自分の思考グセを克服する行動認知法が、もっとも根本的な改善につながると考えています。苦手意識を持ち続け、人前に出ることをイヤイヤこなすのではなく、やり遂げる達成感や喜びを感じることができれば、自分にとって大きな自信になるはずです」


人前で話すチャンスを与えられるということは、あなたがそれだけ周囲に求められているからこそ。自分の評価ではなく、その場全体の人にとってどんな時間であるべきかを考えれば、気持ちが楽になるかも知れません。ピンチをチャンスに! 自信や経験を積み重ねていきたいものですね。


(取材・文 関紋加/ノオト)