太った!、肥満かも、スリムねえ、ガリガリでは?日々こういう会話を耳にします。肥満に詳しく、糖尿病専門医として患者さんの体重コントロールの指導にあたる福田正博医師は、「体重を毎日測っては、太りすぎだと思い込んでいる人、少しでもやせたいと言う人はとても多いのですが、まず、『自分は太っている』というイメージに根拠があるかどうかを検証してみてださい」と言います。その方法など、詳しいお話を聞いてみました。

取材協力・監修

福田正博氏


医学博士。糖尿病専門医。大阪府内科医会会長。医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。著書に、『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)、『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』、『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』 (ともにアスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則 「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)など多数。名医として知られる存在で、わかいやすく面白い講演でも定評がある。


医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック http://dmclinic.jp/

■BMIが25以上だと肥満

福田医師は、『糖尿病食で健康ダイエット』(アスキー新書)、『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)など多くの著書で、肥満の診断基準について説明をされています。肥満の医学的な定義について、こう話します。


「肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。単に体重が多いからということではありません。ヒトは、生まれてから20歳前後までに、骨、筋肉、内臓、器官、皮膚など体の組成はできあがります。ですが、体重は加齢とともにどんどん増えていくでしょう。その増えた分が何かというと、体脂肪です」


何やら、思い当たります。肥満かどうかを診断する基準があるそうですね。


「日本肥満学会の定義では、次の公式で計算した数字をBMI(Body Mass Index)、つまり『体格指数』と呼び、これで肥満かどうかを診断しています。まず公式に自分の数字を当てはめて計算してください」と福田医師。


肥満かどうかを知る式

BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)


筆者は体重が55㎏で身長が160㎝ですから、BMIは55÷1.6÷1.6≒21.5になります。


福田医師は、BMIの数値と肥満かどうかについて、こう説明を続けます。


「BMIが22の人が、統計上で病気になりにくく死亡率が低いことが知られています。ですから、BMI=22のときの体重を『標準体重』としています。健康に良い理想的な体重という意味合いです。BMIによる肥満から低体重(やせ)の診断基準は次のとおりです」


BMIによる診断基準

  • 18.5未満は低体重(医学用語で「やせ」)

  • 18.5以上25未満は普通体重

  • 25以上30未満は肥満(1度)

  • 30以上35未満は肥満(2度)

  • 35以上40未満は肥満(3度)

  • 40以上は肥満(4度)


「つまり、肥満とは、BMIが25以上の場合を言います」と福田医師。

■身長から標準体重を計算する

筆者の場合、BMIは21.5なので、標準体重よりやや少ないことになります。二の腕やおなかの周りが気になり、太っていると思っていたので意外です。


「先ほど算出した、身長160㎝で体重55㎏の場合は『普通体重』になり、理想的です。肥満にはまだまだ遠いですね」と福田医師。


自分では、かなり太いほうだという認識でした。身長から110を引いた数字が理想の体重だと女性同士では言い合っていますが、その数字はどうなのでしょうか。福田医師は、こう教えます。


「美容の観点で、よくそういう医学的に根拠がないことが言われているようです。医学の観点では、見た目にスリムかを考えるのではなく、『健康な体重かどうか』が基準になります。


また、死亡率が高いのは、BMIが18.5未満の低体重(やせ)の人のほうです。『やせすぎは危険』と叫ばれる根拠のひとつになります」


10年ほど前から、欧米では女性ファッション誌のモデル採用でも、やせすぎはNGだと規定する国があります。「自分は太っている」と思っていても、「実はそんなことはないかも」ということは多いのでしょうか。


「その傾向にあると思います。医学的に実際にはどうかを、上記の式で計算して自分の状態を確認してみてください。


また、先ほどの式を逆算すると、身長から、自分にとって適性な『標準体重』を求めることができます」と福田医師。


標準体重を求める式

標準体重(kg)=身長(m)✕身長(m)✕22


筆者の例で身長が160cmの場合、1.6✕1.6✕22=56.32 になるので、だいたい56㎏が標準体重になります。

■肥満や低体重は病気のリスクが高くなる

筆者は太りすぎを気にしていましたが、計算をすると、標準体重にもまだ1㎏は余裕があるという結果でした。肥満や低体重の場合に健康に与える影響について、福田医師はこう説明を加えます。


「身長が160cmの場合、体重が64㎏以上になると肥満と診断します。


ただし、BMIが約23.5にあたる体重60㎏以上で糖尿病のリスクが上昇、BMIが約27の70kg以上ならそのリスクは3倍、高血圧や脂質異常の病気になるリスクも2倍近くに上昇します。


また、47.3㎏以下だと『低体重(やせ)』になります。やせは決して健康的ではなく、骨粗しょう症による骨折のリスクが1.5倍以上になり、さらに先ほど話した通り、怖いことに、死亡率が1.7倍に上がるという報告があります」


体脂肪による肥満判定の基準もあるそうですね。


「体格の指針として、『体脂肪が男性は25%以上、女性は30%以上であれば肥満』となります。BMIが23でも、体脂肪が33%であれば『かくれ肥満』と言って、健康を害する可能性が高くなるので注意しましょう。


普通体重の範囲で、体脂肪がこれらの数字ではないことが健康をキープするひとつの目安になります。糖尿病や高血圧などの生活習慣病になると、体重や体脂肪は病気に大きく影響します。ですから、治療ではこの範囲になるように生活習慣をコントロールするアドバイスをします」


同僚や友人にこの式を教えて皆で実際に計算をしてみると、太りすぎを心配していた人は、「あれ、標準体重より少ないぐらいだ」と、また、見た目はそう太くはなくてもおなかが出ている人は「あ、体脂肪が完全に肥満だ」と意外そうに言っていました。自分の体型をイメージや感覚でとらえず、標準体重を計算し、健康の指針について見つめ直してはいかがでしょうか。



(取材・文 海野愛子/ユンブル)

↑福田正博医師の最新刊『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)