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【第2回】彼女の「嫌い」なところ:「お前、笑うとブスだな」

2017.03.12

【第2回】彼女の「嫌い」なところ:「お前、笑うとブスだな」


【コンプレックスお便り1】


「わたしのコンプレックスは、目です。一重で、腫れぼったくて、本当に嫌です。くりくりの大きい目の人を見ると、羨ましいなって思ってしまいます。アイプチが上手にできる日はいいのですが、上手くいかない日は人と目を合わせるのさえ嫌です。」


TwitterのDMに届いたコンプレックスは、「見た目」に関するものが圧倒的に多かった。だいたいは、高校生から大学生くらいの男女からのメッセージだ。


わたしにも見た目のコンプレックスはたくさんあって、中学・高校くらいのときは本気で悩んだものだった。前髪を長めにして決して額を出さず、「鼻が嫌だ」「目がもっとこうなら」と鏡の前に何十分も居続け、ネットでかわいくなれる術をいろいろと探しては、怪しげなものまで実践した。


コンプレックスは、生き方を制限する。思いっきり笑えなかったり、人前に出るのを避けたり、写真を撮られるのが嫌だったり、ヒールを履けなかったり、好きな服が着られなかったり。


でも、思っている以上に人は自分に興味がないのもまた事実。当時のわたしにもこのDMをくれた子にも言いたい。


呪いをかけてるのは自分自身だぞ、と。



「お前、笑うとブスだな」


小学生の頃、好きだった男の子とふたりで下校している日に、なにかが面白くて大笑いしているときに言われた一言がこれだった。学校からそう遠くない横断歩道の前だった。気にしていない風を装って「ひどーい」とかなんとか言って目を逸らしたとき、彼の後ろにあった汚れたシャッターがやけに印象に残った。


彼のそのたった一言で、それから数年は、笑うときには下を向いて両手で口元を隠すようになった。


彼の真意はわからない。「好きだからこそのいじわるだったりして?」なんてなぐさめるように友人から憶測コメントをもらった程度では思春期の心は修復できず、ただ「わたしって笑った顔がブスなんだな」と思った。


きっと彼以外の人たち(きっと両親や近所の人たち)には「笑顔がかわいいねぇ」なんて言ってもらったこともあったと思うのだけれど、わたしにとっては家族が言う「かわいい」と彼の言う「ブス」は戦わせるまでもなく、彼の言葉の方が真実、圧勝、そしてなによりも正しかった。


今思えば、あのときわたしは自分に呪いをかけたのだと思う。「笑った顔がブスだ」という呪い。


これがもう15年も前の話だ。


今では、人よりも多めに笑う大人になった。大学になってから写真を撮られる機会が増え始めたころ、“非常に馬鹿らしいけれど大事なこと”に気付いたのだ。


堂々と振る舞っていれば、だいたいの場合やり過ごせるということだ。隠したいものは「隠そう」とするのではなく堂々とさらけ出しているほうが隠せる、という具合に。さらにはその「堂々としている姿」に好意さえ持ってくれる人も現れる。



「笑顔ブスなんて言われたけど気にしてません」という感じで堂々と潔く笑っていればいい。誰もわざわざ「ブスですねぇ」なんて言わないし、むしろ堂々としているせいで「笑顔が好き」と言ってくれる人にも出会える。


目が細い人が堂々と潔くしていれば「個性的な目」として愛され、背が高すぎる女性も堂々としていれば「凛としていて格好良い」と捉えられる。


(ちょっと話は逸れるが「そんなに絶世の美女でもないのになぜか周りにかわいいと言われている子」が、あなたの周りにもいないだろうか。わたしはあれを「自分はかわいいと思い込んだもの勝ち」だと思っている。「自分はかわいい」と自分にプラスの呪いをかけることで、かわいさは生まれてくる。堂々と振る舞えることは、時に人の目を錯覚させ、そのうち本当に“かわいい”を連れてくるのだ)


こうやってわたしはだんだんと「隠す」ことをやめているうちに、コンプレックスだったことすら忘れるほどになった。


コンプレックスなんて所詮自分の中だけで生まれ自分の中だけで死んでいくもの。


あれだけ悩んでいたのにこの記事を書くまできっと誰一人わたしの「笑顔ブス」の話は知らないと思う。言った本人でさえも覚えていないだろう。



これはわたしの例に過ぎないので、DMに届いたみんなの見た目コンプレックスの消し方は、わたしにはわからない。あのとき、彼の言葉が(わたしにとって)絶対に正しかったように、誰の言葉も呪いを解いてくれない。


たとえ誰かに何かを言われても、それ自身は呪いにはならない。呪いをかけているのは自分自身で、そして自分でかけた呪いは自分で解くしかないのだ。


わたしは「堂々としてみれば意外とやり過ごせるって」とやけに軽いアドバイスだけを贈る。そしてそれが真理だとも思っている。



(ライター/さえり 編集/サカイエヒタ)


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