生理が重くて痛みがひどく、生理前後はほとんど一日何もできない……、なんて人もいるのでは?毎月のことですから、大変困りますね。しかし、痛みが段々ひどくなってきた、痛み止めの量が増えている、といった場合には「病気」を疑ってみる必要があります。考えられる病気とは、どのようなものでしょうか?
記事監修
加藤智子先生
産婦人科医。浜松医科大学医学部医学科卒業、社会医療法人財団新和会八千代病院、三河安城クリニック勤務。日本産科婦人科学会(専門医)、日本医師会(認定産業医)、日本抗加齢医学会(専門医)、NPO法人女性と加齢のヘルスケア学会(更年期カウンセラー)、日本産婦人科内視鏡学会、日本女性心身医学会、検診マンモグラフィ読影認定医、日本気象予報士会東海支部(気象予報士)。女医+(じょいぷらす)所属。
▼詳細プロフィール
■「機能性月経困難症」とは?
子宮の内腔に面した「子宮内膜」は、月経周期によってその層が厚くなったり剥がれ落ちたりします。厚くなるのは、受精卵をここに着床させるため、つまり妊娠のための準備です。しかし、実際に受精卵が着床しない場合には、この厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、月経血となって体外に排出されます。これが月経のメカニズムです。ホルモンバランスや環境などに影響され、個人差もありますが、月経はおよそ28日の周期で起こります。
月経のある女性には、重い軽いの程度差はあるにせよ普通は生理痛があります。ただ、この生理痛があまりにもひどく、1日中寝ていなくてはならない、また学校・会社に行けないほど痛む、といった特に重い場合には「月経困難症」です。
月経困難症には「機能性(原発性)月経困難症」「器質性(続発性)月経困難症」があります。このうち「機能性月経困難症」は特に病気ではありません。生理痛は重いですが、誰にでも起こり得るものとされます。
・内診
・尿検査
・血液検査
・エコー検査
・MRI検査
・CT検査
・クラミジア検査
などを行って特に異常が見つからなければ機能性月経困難症と診断されるでしょう。この機能性月経困難症は10代の終わりぐらいから見られますが、20-25歳ぐらいがピークとされます。また妊娠・分べんを経験すると症状が緩和されることが多いといわれます。
検査を行って「器質性月経困難症」と診断された場合には、原因と治療方法が異なります。
■「器質性月経困難症」の原因
器質性月経困難症は、器質性という名のとおり、何か身体的な原因によって起こる月経困難症です。器質性月経困難症の原因となるのは、
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子宮筋腫
子宮の筋肉の中に腫瘍ができます。多くは良性のものですが、それでも月経時に筋肉の収縮が起こると痛みを感じることがあります。
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子宮腺筋症
子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉層にできる病気です。月経のたびにこの組織が増殖・剥離(はくり)を起こし、痛みを感じることがあります。
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子宮内膜症
子宮内膜に似た組織が何らかの原因で子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。月経のたびに増殖・剥離を起こし、痛みを感じることがあります。
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ミュラー管奇形
子宮や膣に狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)があるケース。この狭窄・閉塞によって月経血が貯留し、内圧が上昇するために痛みを感じます。
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子宮頸管(けいかん)の狭窄
月経血の産生量に対して頸管が狭いと痛みを感じます。
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骨盤内感染症
クラミジアなどによる骨盤内感染症を治療した後の癒着に伴う痛みや、また慢性炎症が続いている場合に痛みがあります。
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子宮内避妊具
子宮内に入れた避妊具が痛みを感じさせることがあります。
と、いったものです。
これらはそれぞれ治療法も異なっているので、病院でしっかりした検査を受け、その結果を基に医師より治療法を説明してもらいましょう。
上記のとおり、機能性月経困難症の場合には、身体的な原因がなくて起こるものですが、器質性月経困難症の場合には、その原因を治療しなければなりません。放置しておくと、不妊、がん化するといった深刻な事態を引き起こす可能性もあります。生理痛があまりにも重いという場合には、やはり一度専門医の診察を受けるようにしましょう。
(高橋モータース@dcp)