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発達障害カウンセラーに聞いた。部屋を片付けられない人の傾向と対策

2017.09.27

発達障害カウンセラーに聞いた。部屋を片付けられない人の傾向と対策


断捨離や物のない生活が話題になることが多い昨今。しかしきれいに片付けたくてもなかなか思うようにできなかったり、片付けてもすぐに元どおりになってしまったり……、なんて人もいるのでは? これは「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」などの発達障害が関係している可能性があるそう。詳しいお話を発達障害カウンセラーの吉濱ツトムさんに伺いました。

取材協力・監修



吉濱ツトムさん


幼いころより自閉症、アスペルガーの症状に悩まされる。

発達障害の知識の習得に取り組み、認知行動療法、分子整合栄養医学、自律訓練法など、あらゆる改善法を研究し、自らが試した結果、数年で典型的な症状が半減。 

26歳で社会復帰。やがて、同じ症状に悩む人たちが口コミで相談に訪れるようになり、個人セッションの他、教育、医療、企業、NPO、公的機関から相談を受けている。現在、新規カウンセリングは7ヵ月待ち。


公式ホームページ

http://yoshihama-tsutomu.com/

ブログ「未来への思考法」

http://blog.yoshihama-tsutomu.com

■基本的にみんな「片付けは苦手」!?

――お部屋の片付けが苦手な女子が一定数いますが、いったい何が問題なんですか?


「実は、基本的にはほとんどの人間が片付けは苦手で、得意じゃないんですよ。片付けや収納上手で名を売っている人は、空間把握能力が高いという才能を持っているんです。


とはいえ、精神的な病気でない人は、ある程度は片付けることができます。ところが、精神的な疾患がある人は片付け方がわからなくて停止してしまうんです。そして、いわゆる“汚部屋”になる。しかし、それでも生活ができてしまうのでそんな自分を改めなかったり、改めようとしても身体がついてこなかったり……という特徴があるためです」


―――気力がないとか、モノに依存して片付けられない、という意見を聞いたことがあります。


「そういった場合もありますが、それだけでは判断できません。ADHDやアスペルガー症候群などの発達障害が持つ特徴は、基本的には誰もが持っているものなんです。気力がないとかモノに依存するのは、誰にでもあることですよね。発達障害の人はそれの度が過ぎている場合が多いだけで、性格なのか精神的な病気なのか、明確な線引きは難しいですね」

■実際の汚部屋写真で見る、発達障害の可能性

――実は片付けられない3人の女性の汚部屋写真があるんです。この人たちが片付けられない理由はわかりますか? 


【クローゼットがうまく整とんできないAさん】




【家に帰って電気をつけて、いつもゲンナリするBさん】



「AさんもBさんも、この程度は誰にだってあることですよ。もちろん発達障害の可能性もあるのでこれだけでは判断できませんが。この写真で思ったのは、単純に片付けの技法や知識がなかったり、ものを捨てるためのルールや置く場所のルールがなかったりしているみたいですね」


――片付ける場所をきちんと決める、ものを増やしすぎない、床に置かないなどのルールが必要ですね。最後のCさんはすごいです。



【急な来客は絶対無理なCさん】



「この日だけ急に散らかったのではなく、Cさんは慢性的にこうなのでしょうか? 常にこの状態で片付けたくても片付けられない、あるいはこれをおかしいと思っていないのであれば、発達障害の傾向があると思います。そうでなくでも何か悩みや、過度のストレスで精神的余裕がない可能性があるかもしれません」

■ADHDの特徴とは?

――そもそも、「ADHDの人は片付けが苦手」と言われているのはどうしてなのでしょうか。


「ADHDの人が片付けられないのは、“ワーキングメモリーの破綻”という理由があります。短期記憶が弱いんですよね。たとえば、パソコンを片付けようと机に向かうと隣に本が散らばっている。先に本を本棚に片付けようとする。そこでもうパソコンのことを忘れてしまうんです。本を並べていると洋服が床に落ちているのに気づく。洋服を拾っていると本の片付けを忘れる……そういったことを延々と繰り返してしまうんです」


――なかなか掃除に集中できない……、ということでしょうか?


「そう。ADHDもアスペルガーも注意機能が低い傾向が見られます。さらにADHDは抑制機能が弱く新奇性追求が強すぎるので、あちこちに気が向いてしまうんです。片付けていてもおもしろそうなものを見つけたら手を止めて、そっちに行く。ただし持続性がないので、また別のおもしろそうなものが見つかったらそれに手を出す。注意機能が異常に分散しているんですよね」


――ADHDの特徴をまとめると……。

  • ひとつで完結できず、あちこちに気が向いてしまう

  • 別のものに興味を持つと、片付けを完全に忘れてそれに手を出す

  • しかしそれにもすぐに飽きるなど継続性はない

――掃除だけでなく、勉強や仕事に集中できない場合も発達障害の可能性はありますか?


「あまりにも回避傾向が強い人は発達障害の傾向がありますね。でももちろん全員がそうじゃないですよ。みんな勉強より遊びたい気持ちを持っていますから。ただ、あまりにも病的に後回しにしてしまう人は、発達障害の傾向があるかもしれないですね」


――そうした傾向がある人が上手に片付けをするコツはありますか?


「必ず第三者を入れるか、片付けないと損をする環境を作ることが必須です。片付けられないのは空間把握能力が低くて片付け方がわからないということもそうですが、片付けなくても困らないという環境的な理由もあります。


そこで、ひとつめは片付けコンサルに入ってもらうこと。モノの住所を決めてもらい、片付けのマニュアルを用意してもらえば自分でも片付け方がわかります。ただし生活していくうちに増えたものの置き場がわからなかったり、なまけたりもするので、時々来てもらうのがいいですね。見張りにもなります。


ふたつめの片付けないと困る環境を作るということですが、第三者を活用しましょう。例えば家にペットの監視や防犯用に用いるようなカメラを置き、第三者に遠隔から見られる状態を作ります。この時間には覗いてもいいという時間を伝え、散らかっていた場合は決めておいた罰則を受ける。


またはSNSに定期的にお部屋の写真をアップするとか、彼氏にしたい男性を家に呼ぶとか。片付けないと社会的評価を落としかねない仕組みを作るんです


人は即何かを失う環境に立たされると、なんとかしようとしますから。ただし、あまりにも急にビッグステップを求めないようにしましょう」

■“捨てる” 能力を獲得して、少しずつ汚部屋を脱出しよう

――片付けのとっかかりとして、何かアドバイスはないでしょうか。


「片付けの作業を“掃除”“整理整とん”“捨てる”の3つに細分化してみてはいかがでしょうか。掃除は苦手だけど捨てるのは得意とか、同じ“片付け”でも得意不得意が見つかると思います。苦手なものはアウトソーシングしてもいいし、マニュアル化してもいいですね。


基本的に人は“整理整とん”が苦手だから、ものを徹底的に減らして整理整とんしなくていい環境を作るのがオススメです。そのために、“捨てる”能力を獲得する。こちらのほうが圧倒的に簡単だし、最も重要な作業なんですよ」


――片付けられず劣等感を抱いている女子たちが、今後どうやって自分と向き合い、気持ちを切り替えていけばいいか教えてください。


「まずは発達障害の可能性に気づいてその視点から改善すること。女子のADHDって改善しやすいんですよ。個人差はありますが男の脳は同時並行が苦手なことが多く、女性の脳はそれができることが多いと言います。すなわち他の部位で代替ができているんです。ADHDは前頭葉の活動の低下が挙げられますが、それをその付近や全く別の場所で補うことができる可能性があるんですよね。相当時間はかかるかと思いますが、期待はできます」


発達障害も、程度は軽いものから重いものまであるそうです。しかし最初にも言われたように、その線引きは難しいもの。傾向があると感じるようなら、片付けが苦手なのは「短期記憶が弱い」など脳の機能障害が原因になっているかもしれません。自分を責めすぎず、少し力を抜いてみてはいかがでしょうか。片付けの突破口が見つかるかもしれませんよ。


(取材・文:西田タニシ 編集:ノオト)


↑吉濱先生の著作『片付けられないのはアスペルガー症候群のせいでした。』(宝島社)

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